今回は、仮装経理の法人税が法人税から控除できる場合を確認してみましょう。
内容
粉飾決算など(仮装経理)により余分に法人税を支払った場合は、原則として他の要件を満たすまで還付されません。
還付されませんが、法人税の支払いがある場合は、余分に支払った法人税を法人税の支払いに充当することができます。
規定を確認してみましょう。
(後半に載せています。)
カッコ書きが複雑なので省略してみましょう。
内国法人の各事業年度開始の日前に開始した事業年度(注1)の所得に対する法人税につき税務署長が更正をした場合において、当該更正につき第135条第1項(仮装経理に基づく過大申告の場合の更正に伴う法人税額の還付の特例)の規定の適用があつたときは、当該更正に係る同項に規定する仮装経理法人税額(注2)は、当該各事業年度(注3)の所得に対する法人税の額から控除する。
前期以前に更正があった場合に、その更正について粉飾決算などにより法人税が還付されない特例の適用があったときは、仮装経理で余分に支払った法人税は、法人税からマイナスできます。
カッコ書きの内容
1つ目のカッコ書きを確認してみましょう。
当該各事業年度終了の日以前に行われた当該内国法人を合併法人とする適格合併に係る被合併法人の当該適格合併の日前に開始した事業年度(以下この条において「被合併法人事業年度」という。)を含む。
適格合併があった場合は、被合併法人の事業年度が含まれます。「被合併法人事業年度」といいます。適格合併でない合併の事業年度は含まれません。
2つ目のカッコ書きを確認してみましょう。
既に同条第二項、第三項又は第七項の規定により還付されるべきこととなつた金額及びこの条の規定により控除された金額を除く。
同条は、法人税法第135条(法人税が還付されない)のことです。
・第2項、確定法人税額に達するまでの金額は還付されます。
・第3項、最終申告期限が到来した場合は還付されます。
・第7項、還付請求書の提出があった場合は、書面により通知されます。
余分に支払った法人税が既に還付されている場合は除外されます。この条(法人税の控除)によりマイナスされた金額も除外されます。
そのため、余分に支払った法人税が2重に還付・控除されることはありません。
3つ目のカッコ書きを確認してみましょう。
(当該更正の日(当該更正が被合併法人事業年度の所得に対する法人税につき当該適格合併の日前にしたものである場合には、当該適格合併の日)以後に終了する事業年度に限る。)
法人税からマイナスできるのは、更正の日以後に「終了」する事業年度に限定されます。
被合併法人に更正があった場合は、適格合併の日以後に「終了」する事業年度に限定されます。
参考規定
粉飾決算などにより余分に支払った法人税は、支払う法人税があれば法人税から控除されます。
第七十条 内国法人の各事業年度開始の日前に開始した事業年度(当該各事業年度終了の日以前に行われた当該内国法人を合併法人とする適格合併に係る被合併法人の当該適格合併の日前に開始した事業年度(以下この条において「被合併法人事業年度」という。)を含む。)の所得に対する法人税につき税務署長が更正をした場合において、当該更正につき第百三十五条第一項(仮装経理に基づく過大申告の場合の更正に伴う法人税額の還付の特例)の規定の適用があつたときは、当該更正に係る同項に規定する仮装経理法人税額(既に同条第二項、第三項又は第七項の規定により還付されるべきこととなつた金額及びこの条の規定により控除された金額を除く。)は、当該各事業年度(当該更正の日(当該更正が被合併法人事業年度の所得に対する法人税につき当該適格合併の日前にしたものである場合には、当該適格合併の日)以後に終了する事業年度に限る。)の所得に対する法人税の額から控除する。
法人税法第70条第1項、令和7年4月1日施行
記載欄は、法人税申告書の別表1、11「仮装経理に基づく過大申告の更正に伴う控除法人税額」です。