会計上の利益と損益通算との関係など


今回は、会計上の利益と損益通算との関係を確認します。
今回のネタは、ポカミスや考え方の整理です。

会計上の利益と損益通算との関係

会計上の利益と損益通算って、そもそも関係あるのでしょうか?
結論は関係ありません。

損益通算の対象となる所得金額(通算前所得金額)と
欠損金額(通算前欠損金額)は、それぞれ定義されており、
会計上の利益でも税務上の課税所得(別表4の最終値)でもありません。

別表7の3(損益通算の別表)を確認してみると
通算前所得金額は別表四「39の①」+「40の①」、
通算前欠損金額は(別表四「39の①」+「40の①」)が0を下回る場合のその下回る額とあり、会計上の利益でも税務上の課税所得(別表4の最終値)でもないことが確認できます。

未払通算税効果額の記載欄

未払法人税等と未収入金が計上される場合があるのか考えてみます。

別表5(1)の未払通算税効果額の記載欄について、
△印がないことを前提とする場合、下記となります。

法人税等 1000 / 未払法人税等 1000
未収入金(通算税効果額) 200 / 法人税等 200
(別表5(1)の未納法人税が△1000、未払通算税効果額が+200)

上記前提の場合、下記前提
損益通算前の法人税 1,000
損益通算 △200 → 法人税が200減る=貸方、法人税200が計上される。
損益通算後の法人税 800

ではなく、

下記の前提
損益通算前の法人税 1,200
損益通算 △200 → 法人税が200減る=貸方、法人税200が計上される。
損益通算後の法人税 1,000

になります。

法人税等勘定が△になる場合(収益計上)と、
損益通算の損金算入という意味での△が間違えやすいと思います。

未払法人税等と未収入金が計上される場合はある?

最初の前提があるのか考えてみます。
法人税等 1000 / 未払法人税等 1000
未収入金(通算税効果額) 200 / 法人税等 200

損益通算に限定するとないのでしょう。
未払法人税等を計上しているということは、
課税所得がある(黒字)ということになります。

課税所得がある(黒字)ということは、
他社から赤字を受け取る立場(得をする立場)になります。

次に、未払法人税等を計上している場合(課税所得がある場合、黒字の場合)に、未収入金(通算税効果額)が計上されることがあるのかと考えてみると、
損益通算に限定するとないと考えますが、
欠損金の通算やその他の特例(試験研究費など)により
生じる可能性がありそうです。

例えば、

1、損益通算上、当期は黒字で他社から赤字を受け取った。
 損金算入額が増加→課税所得が減少→法人税が減った分を、
 他の法人に支払う。
 法人税等 ×××円 / 未払金(通算後税効果額) ×××円

 仮に所得が0になると欠損金額は使用できなくなります。

2、欠損金の通算上、過去の欠損金額を他社に渡した。
 欠損金額が減った部分の法人税相当額を他の法人から受け取る。
 未収入金(通算後税効果額) ×××円 / 法人税等 ×××円

1(未払金)と2(未収入金)を相殺して、
2(未収入金)の方が大きい場合です。

参考規定など

別表7の3
通算対象欠損金額又は通算対象所得金額の計算及び通算対象外欠損金額の計算に関する明細書
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/shinkoku/itiran2022/pdf/07-03.pdf

通算対象欠損金額の損金算入

(損益通算)
第六十四条の五 通算法人の所得事業年度(通算前所得金額(第五十七条第一項(欠損金の繰越し)、第五十九条第三項及び第四項(会社更生等による債務免除等があつた場合の欠損金の損金算入)、第六十二条の五第五項(現物分配による資産の譲渡)、この条並びに第六十四条の七第六項(欠損金の通算)の規定を適用しないものとして計算した場合における所得の金額をいう。以下この条において同じ。)の生ずる事業年度(当該通算法人に係る通算親法人の事業年度終了の日に終了するものに限る。)をいう。以下この条において同じ。)終了の日(以下この項及び次項において「基準日」という。)において当該通算法人との間に通算完全支配関係がある他の通算法人の基準日に終了する事業年度において通算前欠損金額(第五十九条第三項及び第四項、第六十二条の五第五項、この条並びに第六十四条の七第六項の規定を適用しないものとして計算した場合における欠損金額をいう。以下この条において同じ。)が生ずる場合には、当該通算法人の当該所得事業年度の通算対象欠損金額は、当該所得事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する。

法人税法64条の5

通算対象欠損金額の定義

2 前項に規定する通算対象欠損金額とは、第一号に掲げる金額に第二号に掲げる金額が第三号に掲げる金額のうちに占める割合を乗じて計算した金額をいう。
一 前項に規定する他の通算法人の基準日に終了する事業年度において生ずる通算前欠損金額の合計額(当該合計額が第三号に掲げる金額を超える場合には、その超える部分の金額を控除した金額)
二 前項の通算法人の所得事業年度の通算前所得金額
三 前項の通算法人の所得事業年度及び同項に規定する他の通算法人の基準日に終了する事業年度の通算前所得金額の合計額

法人税法64条の5
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