低未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の100万円の特別控除(措法35条の3)


今回は、「低未利用土地等を譲渡した場合の100万円の特別控除」を確認します。

100万円の特別控除(措法35条の3)

個人が低未利用土地等で所有期間が5年を超えるものを、令和2年7月1日から令和4年12月31日までに譲渡した場合には、譲渡所得から100万円を控除できます。

計算イメージ

長期譲渡所得の所得税
=(長期譲渡所得の金額-100万円の特別控除)×15%

例えば、譲渡収入400万円、取得費不明の場合

1、譲渡収入
 400万円
2、取得費
 400万円×5%(取得した金額が不明の場合)=20万円
3、長期譲渡所得
 1-2=380万円-100万円=280万円
4、長期譲渡所得の所得税
 3×15%=42万円
 (住民税を含めると約20万円の節税)

譲渡に含まれるもの、譲渡に含まれないもの

土地等の譲渡には、
「譲渡所得となる不動産等の貸付け」が含まれます。

通常、不動産等の貸付けは不動産所得となりますが、
一定の貸付けについては、不動産所得ではなく譲渡所得となります。

この譲渡所得となる不動産等の貸付けについては、
100万円の特別控除が使用できます。

反対に土地等の譲渡であっても
固定資産の交換の場合の譲渡所得の特例(所法58)などの
譲渡については、土地等の譲渡に含まれません。

土地等を交換した場合、譲渡所得の計算を行いますが、
100万円の特別控除は使用できません。

ここまでは、「平成21年、平成22年に取得した一定の土地等の譲渡所得」と同じ取扱いです。

異なる点
低未利用土地等の譲渡については、
譲渡収入が500万円を超えると、100万円の特別控除が使用できません。

1年前、2年前に特別控除を使用した場合は、使用不可。

1筆の土地を分筆してから
1年前、2年前に土地等を譲渡して100万円の特別控除を使用した場合は、
100万円の特別控除が使用できません。

分筆して2回譲渡すると短期間に
2回特別控除が使用できてしまうからです。

手続き

100万円の特別控除を使用する場合には、
次の2つの要件を満たす必要があります。

  1. 確定申告書に特別控除を使用する旨を記載する。
  2. 確定申告書に特別控除が使用できる証明書類を添付する。
    (市町村長などの確認書類、売買契約書の写しなど)
参考規定

(低未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の特別控除)
第三十五条の三 個人が、都市計画法第四条第二項に規定する都市計画区域内にある土地基本法(平成元年法律第八十四号)第十三条第四項に規定する低未利用土地(以下この項及び次項第二号において「低未利用土地」という。)又は当該低未利用土地の上に存する権利(以下第四項までにおいて「低未利用土地等」と総称する。)で、その年一月一日において第三十一条第二項に規定する所有期間が五年を超えるものの譲渡を令和二年七月一日から令和四年十二月三十一日までの間にした場合(当該譲渡の後に当該低未利用土地等の利用がされる場合に限る。)には、その者がその年中にその譲渡をした低未利用土地等の全部又は一部につき第三十三条から第三十三条の三まで、第三十六条の二、第三十六条の五、第三十七条、第三十七条の四又は第三十七条の八の規定の適用を受ける場合を除き、これらの全部の低未利用土地等の譲渡に対する第三十一条の規定の適用については、同条第一項中「長期譲渡所得の金額(」とあるのは、「長期譲渡所得の金額から百万円(長期譲渡所得の金額のうち第三十五条の三第一項の規定に該当する同項に規定する低未利用土地等の譲渡に係る部分の金額が百万円に満たない場合には、当該低未利用土地等の譲渡に係る部分の金額)を控除した金額(」とする。

2 前項の低未利用土地等の譲渡には、譲渡所得の基因となる不動産等の貸付けを含むものとし、次に掲げる譲渡を含まないものとする。
一 当該個人の配偶者その他の当該個人と政令で定める特別の関係がある者に対してする譲渡
二 その譲渡の対価(当該低未利用土地等の譲渡とともにした当該低未利用土地の上にある資産の譲渡の対価を含む。)の額が五百万円を超えるもの
三 所得税法第五十八条の規定又は第三十三条の四若しくは第三十四条から前条までの規定の適用を受ける譲渡

3 第一項の規定は、同項の規定の適用を受けようとする低未利用土地等と一筆であつた土地からその年の前年又は前々年に分筆された土地又は当該土地の上に存する権利の譲渡(譲渡所得の基因となる不動産等の貸付けを含む。)を当該前年又は前々年中にした場合において、その者が当該譲渡につき同項の規定の適用を受けているときは、適用しない。

4 第一項の規定は、同項の規定の適用を受けようとする年分の確定申告書に、同項の規定の適用を受ける旨の記載があり、かつ、同項の規定の適用を受けようとする低未利用土地等の譲渡の後の利用に関する書類その他の財務省令で定める書類の添付がある場合に限り、適用する。

5 税務署長は、確定申告書の提出がなかつた場合又は前項の記載若しくは添付がない確定申告書の提出があつた場合においても、その提出又は記載若しくは添付がなかつたことについてやむを得ない事情があると認めるときは、当該記載をした書類及び同項の財務省令で定める書類の提出があつた場合に限り、第一項の規定を適用することができる。

租税特別措置法35条の3、低未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の特別控除

特別控除を使用するための書類

(低未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の特別控除)
第十八条の三の二 法第三十五条の三第四項に規定する財務省令で定める書類は、次に掲げる書類とする。

一 譲渡をした土地又は当該土地の上に存する権利(以下この号において「土地等」という。)の所在地の市町村長又は特別区の区長のイからニまでに掲げる事項を確認した旨並びにホ及びヘに掲げる事項を記載した書類
イ 当該土地等が都市計画法第四条第二項に規定する都市計画区域内にあること。
ロ 当該土地等が、当該譲渡の時において、法第三十五条の三第一項に規定する低未利用土地等(次号において「低未利用土地等」という。)に該当するものであること。
ハ 当該土地等が、当該譲渡の後に利用されていること又は利用される見込みであること。
ニ 当該土地等の法第三十五条の三第一項に規定する所有期間が五年を超えるものであること。
ホ 当該土地等と一筆であつた土地からその年の前年又は前々年に分筆された土地等の有無
ヘ ホに規定する分筆された土地等がある場合には、当該土地等につきこの号に掲げる書類の当該譲渡をした者への交付の有無

二 譲渡をした低未利用土地等に係る売買契約書の写しその他の書類で、当該低未利用土地等の法第三十五条の三第二項第二号に規定する譲渡の対価の額が五百万円以下であることを明らかにするもの

租税特別措置法施行規則18条の3の2
土地基本法

4 国及び地方公共団体は、第一項の措置を講ずるに当たっては、低未利用土地(居住の用、業務の用その他の用途に供されておらず、又はその利用の程度がその周辺の地域における同一の用途若しくはこれに類する用途に供されている土地の利用の程度に比し著しく劣っていると認められる土地をいう。以下この項において同じ。)に係る情報の提供、低未利用土地の取得の支援等低未利用土地の適正な利用及び管理の促進に努めるものとする。

土地基本法13条
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