個人が有価証券を譲渡した場合の譲渡費用等の計算


今回は、「個人が有価証券を譲渡した場合の譲渡費用等の計算」について確認します。

内容

個人が有価証券を譲渡した場合の収入は、
収入の性質によって、事業所得、譲渡所得、雑所得となります。

基本は譲渡所得です。継続的に売買しているような場合は雑所得となり、
事業的規模で継続的に売買しているような場合は事業所得となります。

同じ株式でも所得区分によって、売却したときの費用の計算が異なります。

事業所得の場合は、総平均法(法定評価方法)か移動平均法
雑所得、譲渡所得の場合は、総平均法に準ずる方法となります。

よくある譲渡所得の場合の計算方法は、
国税庁のタックスアンサーをご覧ください。

No.1466 同一銘柄の株式等を2回以上にわたって購入している場合の取得費https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1466.htm

総平均法に準ずる方法と移動平均法

総平均法に準ずる方法は、売却の都度、売却単価を計算します。例えば、次の取引があった場合、売却単価を計算するタイミングは3と6です。

1、最初の取得
2、取得
3、売却 → 売却単価の計算
4、取得
5、取得
6、売却 → 売却単価の計算

上記の例で、移動平均法の場合、単価計算のタイミングが異なります。

1、最初の取得
2、取得 → 平均単価の計算
3、売却
4、取得 → 平均単価の計算
5、取得 → 平均単価の計算
6、売却

取得の都度とあるので、上記のタイミングです。

上場株式等の譲渡で登場する「特定口座」については、証券会社などが所得計算を行うため、自分で計算する必要はありませんが、「特定口座」を選択していない場合、自分で所得計算をする必要がありますので注意しましょう。

総平均法

事業所得の場合は、総平均法です。
総平均法は最後にまとめて計算するもので、計算は楽です。

1、最初の取得
2、取得

3、売却
4、取得
5、取得

6、売却
7、12月31日 → 単価計算

実務で見たことがないのですが、年末を基準に総平均法で単価を求めて、通常の棚卸資産のように、期首残高+当期仕入れ▲期末残高=売却原価を求めるのでしょうね。

総平均法は年末にまとめて計算、総平均法に準ずる方法は売却の都度まとめて計算という意味で総平均法に準ずる方法という名前なのでしょう。

まとめ
所得区分計算方法計算のタイミング
事業所得総平均法(法定)
移動平均法(選択)
年末
取得の都度
譲渡所得総平均法に準ずる方法売却の都度
雑所得総平均法に準ずる方法売却の都度
有価証券の譲渡費用のまとめ
端数処理

原則として、円未満を切り上げます。所得計算上、有利になります。
(所得が少なく計算されます。)

参考規定

所得税法

(有価証券の譲渡原価等の計算及びその評価の方法)
第四十八条 居住者の有価証券につき第三十七条第一項(必要経費)の規定によりその者の事業所得の金額の計算上必要経費に算入する金額を算定する場合におけるその算定の基礎となるその年十二月三十一日において有する有価証券の価額は、その者が有価証券について選定した評価の方法により評価した金額(評価の方法を選定しなかつた場合又は選定した評価の方法により評価しなかつた場合には、評価の方法のうち政令で定める方法により評価した金額)とする。

 前項の選定をすることができる評価の方法の種類、その選定の手続その他有価証券の評価に関し必要な事項は、政令で定める。

 居住者が二回以上にわたつて取得した同一銘柄の有価証券につき第三十七条第一項の規定によりその者の雑所得の金額の計算上必要経費に算入する金額又は第三十八条第一項(譲渡所得の金額の計算上控除する取得費)の規定によりその者の譲渡所得の金額の計算上取得費に算入する金額は、政令で定めるところにより、それぞれの取得に要した金額を基礎として第一項の規定に準じて評価した金額とする。

所得税法

所得税法施行令

(有価証券の評価の方法)
第百五条 法第四十八条第一項(有価証券の譲渡原価等の計算及びその評価の方法)の規定によるその年十二月三十一日(同項の居住者が年の中途において死亡し又は出国をした場合には、その死亡又は出国の時。以下この条において同じ。)において有する有価証券(以下この項において「期末有価証券」という。)の評価額の計算上選定をすることができる評価の方法は、期末有価証券につき次に掲げる方法のうちいずれかの方法によつてその取得価額を算出し、その算出した取得価額をもつて当該期末有価証券の評価額とする方法とする。

 総平均法(有価証券をその種類及び銘柄(以下この項において「種類等」という。)の異なるごとに区別し、その種類等の同じものについて、その年一月一日において有していた種類等を同じくする有価証券の取得価額の総額その年中に取得した種類等を同じくする有価証券の取得価額の総額との合計額をこれらの有価証券の総数で除して計算した価額をその一単位当たりの取得価額とする方法をいう。)

 移動平均法(有価証券をその種類等の異なるごとに区別し、その種類等の同じものについて、当初の一単位当たりの取得価額が、種類等を同じくする有価証券を再び取得した場合にはその取得の時において有する当該有価証券とその取得した有価証券との数及び取得価額を基礎として算出した平均単価によつて改定されたものとみなし、以後種類等を同じくする有価証券を取得する都度同様の方法により一単位当たりの取得価額が改定されたものとみなし、その年十二月三十一日から最も近い日において改定されたものとみなされた一単位当たりの取得価額その一単位当たりの取得価額とする方法をいう。)

所得税法施行令

(有価証券の法定評価方法)
第百八条 法第四十八条第一項(有価証券の譲渡原価等の計算及びその評価の方法)に規定する政令で定める方法は、第百五条第一項第一号(総平均法)に掲げる総平均法により算出した取得価額による評価の方法とする。

所得税法施行令

所得税法施行令、雑所得又は譲渡所得となる場合

(譲渡所得の基因となる有価証券の取得費等)
第百十八条 居住者が法第四十八条第三項(譲渡所得の基因となる有価証券の取得費等の計算)に規定する二回以上にわたつて取得した同一銘柄の有価証券で雑所得又は譲渡所得の基因となるものを譲渡した場合には、その譲渡につき法第三十七条第一項(必要経費)の規定によりその者のその譲渡の日の属する年分の雑所得の金額の計算上必要経費に算入する金額又は法第三十八条第一項(譲渡所得の金額の計算上控除する取得費)の規定によりその者の当該年分の譲渡所得の金額の計算上取得費に算入する金額は、当該有価証券を最初に取得した時(その後既に当該有価証券の譲渡をしている場合には、直前の譲渡の時。以下この項において同じ。)から当該譲渡の時までの期間を基礎として、当該最初に取得した時において有していた当該有価証券及び当該期間内に取得した当該有価証券につき第百五条第一項第一号(総平均法)に掲げる総平均法に準ずる方法によつて算出した一単位当たりの金額により計算した金額とする。

 第百九条から前条までの規定は、前項に規定する所得の基因となる有価証券について準用する。

所得税法施行令

措置法通達

(1単位当たりの取得価額の端数処理)
37の10・37の11共-14 所得税法令第105条第1項の規定により計算された1単位当たりの取得価額又は所得税法令第118条第1項《譲渡所得の基因となる有価証券の取得費等》の規定により計算された1単位当たりの金額に1円未満の端数(公社債は額面100円当たりの価額とした場合の小数点以下2位未満の端数)があるときは、原則として、その端数を切り上げるものとする。(平27課資3-4、課個2-19、課法10-5、課審7-13追加)

租税特別措置法通達

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