個人事業者が事業用車両を売却した場合の仕訳と消費税


今回は、個人事業者が事業用車両を売却した場合の仕訳と消費税を確認します。

消費税の取扱い

個人事業者が事業に使用していた車両を売却した場合、
消費税がかかるのでしょうか?

結論は、消費税がかかります。

ただし、消費税を納める必要がない事業者(免税事業者)については、
事業に使用していた車両の売却で受け取った消費税を
納める必要がありません。

消費税を納める必要がある事業者(課税事業者)については、
売却時に受け取った消費税を納める必要がありますので注意しましょう。

受け取った消費税の計算方法

例えば、購入時の車両の金額が550万円、
売却時の帳簿価額(減価償却した後の金額)が100万円、
車両の売却代金が110万円の場合

受け取った消費税は、110万円÷1.1×10%=10万円となります。

車両の購入金額や帳簿価額は一切関係なく、
売った金額(税込金額)を1.1で割って、10%をかけて計算します。

簡易課税を選択した場合

車両の売却は第4種事業となりますので、
売った金額の60%の経費がかかったものとして
仕入消費税が計算できます。

計算例

1、売上消費税
 110万円÷1.1×10%=10万円

2、仕入消費税
 10万円×60%(第4種)=6万円

3、納付消費税
 1-2=4万円

2割特例を選択した場合

2割特例(インボイス制度の特例)を選択した場合は、
売った金額の80%の経費がかかったものとして
仕入消費税が計算できます。

計算例

1、売上消費税
 110万円÷1.1×10%=10万円

2、仕入消費税
 10万円×80%=8万円

3、納付消費税
 1-2=2万円

2割特例が使える期間は、
令和5年10月1日から令和5年12月31日までの3か月間と
令和6年、令和7年、令和8年に限定されていますので注意が必要です。

税込経理の場合

経理方法は、税込経理と税抜経理の2つです。
先に、簡単な税込経理を確認します。

税込経理の場合、仮受消費税を使用せず、
受け取った現金を借方に、車両の帳簿価額を貸方に記入します。
差額が車両売却益となります。

税込経理の場合

借方貸方
現金 1,100,000円車両 1,000,000円
車両売却益 100,000円
(差額計算)
税込経理

(貸方)車両売却益は、所得税の計算上、事業所得や不動産所得ではなく、
譲渡所得として計算する必要がありますので注意しましょう。

会計ソフトなどを利用している場合は、
(貸方)事業主借や資産売却益等を使用することもあります。
(会計ソフトによって処理方法が異なります。)

税抜経理の場合

税抜経理の場合、仮受消費税を使用します。

受け取った現金を借方に、車両の帳簿価額を貸方に記入します。
受け取った消費税は、110万円÷1.1×10%=10万円ですので、
(貸方)仮受消費税10万円を記入します。
貸借差額が車両売却益となります。

税抜経理の場合

借方貸方
現金 1,100,000円車両 1,000,000円
仮受消費税 100,000円
車両売却益 0円
税込経理

※ 0円については仕訳不要ですが、説明のために記載しています。

消費税の清算仕訳

税抜経理の場合、決算で仮払消費税と仮受消費税を清算する必要があります。

消費税の清算仕訳

借方貸方
仮受消費税 100,000円仮払消費税 0円
未払消費税 100,000円
(申告書から転記)
消費税の清算仕訳

消費税の清算仕訳により、仮受消費税と仮払消費税の残高は0円になります。
(貸方)未払消費税は、貸借差額ではなく消費税の申告書の金額を転記します。
貸借差額が生じた場合は、雑損失や雑収入で処理します。

インボイスの発行は必要?

個人事業者の事業用車両の売却についても、消費税がかかります。
令和5年10月1日以後に車両や建物を売却した場合は、
インボイスの発行が必要ですので注意しましょう。

インボイスの記載内容は次の6つです。

  1. インボイスを発行する事業者の名前・名称(誰が?)と
    インボイス登録番号
  2. 課税資産の譲渡等を行った年月日(いつ?)
  3. 課税資産の譲渡等の資産・サービスの内容(何を?)
  4. 課税資産の譲渡等の税抜き金額か税込み金額(いくら?)と
    適用される税率(何%?)
  5. 消費税額(地方消費税含む)(いくら?)
  6. インボイスを受け取る事業者の名前・名称(誰に?)
参考規定など

(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

八 資産の譲渡等 事業として対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供(代物弁済による資産の譲渡その他対価を得て行われる資産の譲渡若しくは貸付け又は役務の提供に類する行為として政令で定めるものを含む。)をいう。

消費税法

事業に付随する取引についても消費税がかかる。

(資産の譲渡等の範囲)
第二条 法第二条第一項第八号に規定する対価を得て行われる資産の譲渡若しくは貸付け又は役務の提供に類する行為として政令で定めるものは、次に掲げるものとする。
3 資産の譲渡等には、その性質上事業に付随して対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供を含むものとする。

消費税法施行令
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