個人事業者の車両を業務用に転用した場合


今回は、個人事業者の車両を業務用に転用した場合を確認してみましょう。

転用した場合

業務に使用していなかった車両を
業務用に転用した場合は、経費を計上することができます。

転用した場合は、購入した場合と異なり、
転用前に使用していた期間に応じて、
価値が下がった部分(減価)を先に計算する必要があります。

計算項目は、次の4つです。
1、転用前の耐用年数
2、価値が下がった部分(減価)
3、現在残っている部分(帳簿価額)
4、経費となる部分(減価償却費)

それぞれ確認してみましょう。

耐用年数の計算

経費となる部分を計算するためには、使用できる年数(耐用年数)を確認する必要があります。

参考リンク、減価償却資産の耐用年数等に関する省令
https://laws.e-gov.go.jp/law/340M50000040015

上記の表は、業務用の資産に関するものです。
(例、パソコンや一般的な小型車の耐用年数は4年)

今回は、仕事に使用していなかった期間の耐用年数を計算します。
具体的には、決められている耐用年数を1.5倍しますので、
耐用年数が4年の場合、耐用年数は4年×1.5=6年となります。
(1年未満の端数は切り捨て)

価値が下がった部分(減価)の計算

仕事に使用していなかったとしても、資産の価値は下がっているため、
価値が下がった部分(減価)を計算する必要があります。

必要な情報は、次の4つです。
1、取得費(資産を買ったときに支払った金額)
2、残存価額(資産の最終的な価値として残す金額)
3、償却率(1年間で価値が下がる割合)
4、仕事に使用していなかった期間

小型車を取得した場合で確認してみましょう。

小型車を買った金額が2,000,000円の場合、
残存価額は2,000,000円×10%=200,000円となります。

償却率は、旧定額法の表を確認してみましょう。

別表第七 平成十九年三月三十一日以前に取得をされた減価償却資産の償却率表
https://laws.e-gov.go.jp/law/340M50000040015#Mpat_7

耐用年数6年の旧定額法の償却率は、0.166です。

仕事に使用していなかった期間は、暦で計算して、
・6月未満の端数は切り捨てて0年
・6月以上の端数は切り上げて1年
として計算します。

仕事に使用していなかった期間が8カ月の場合、
6月以上の端数を切り上げるため、1年となります。

4つの情報が揃いましたので、実際に計算してみましょう。

取得費2,000,000円から残存価額200,000円をマイナスします。
2,000,000円-200,000円=1,800,000円

1,800,000円に旧定額法の償却率0.166をかけます。
1,800,000円×0.166=298,800円

最後に仕事に使用していなかった期間1年をかけます。
298,800円×1年=298,800円

価値が下がった部分(減価)の金額は、298,800円となります。

現在残っている部分の計算

1、買ったときの金額 2,000,000円
2、価値が下がった部分の金額 298,800円

1から2をマイナスして、残っている部分の金額を計算します。
2,000,000円-298,800円=1,701,200円となります。

経費となる部分の計算

経費となる部分(減価償却費といいます)を計算してみましょう。

必要な情報は、次の4つです。
1、取得費(資産を買ったときに支払った金額)
2、残存価額(資産の最終的な価値として残す金額)
3、償却率(1年間で価値が下がる割合)
4、仕事に使用した期間

取得費は2,000,000円です。
残存価額は、資産を買ったときの時期によって異なります。
平成19年4月1日以後に資産を買った場合、残存価額は0円となります。

償却率は、償却率表を確認してみましょう。

別表第八 平成十九年四月一日以後に取得をされた減価償却資産の定額法の償却率表
https://laws.e-gov.go.jp/law/340M50000040015#Mpat_8

平成19年4月1日以後に資産を買った場合、耐用年数4年の償却率は0.250となります。

仕事に使用した期間は、暦で数えて、1月未満の端数を1月として数えます。
例えば、10カ月と14日の場合、11カ月となります。

4つの情報が揃いましたので、実際に計算してみましょう。

取得費2,000,000円から残存価額0円をマイナスします。
2,000,000円-0円=2,000,000円

2,000,000円に定額法の償却率0.250をかけます。
2,000,000円×0.250=500,000円

1年間で経費になる金額は500,000円となりますが、
実際に仕事に使用した期間は11カ月ですので、月数で按分します。

500,000円×11カ月÷12カ月=458,333.3円
1円未満の端数を切り上げますので、
458,334円が経費となる金額(減価償却費)となります。

年末の帳簿価額は、1,701,200円-458,334円=1,242,866円となります。


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