個別評価金銭債権の貸倒引当金の設定


今回は、個別評価金銭債権の貸倒引当金の設定を確認してみましょう。

内容

原則として、貸倒損失の見込み計上(貸倒引当金の設定)は、
費用(損金)処理できません。

ただし、要件を満たすものについては、
一定金額の費用(損金)処理が可能です。

貸倒引当金の設定方法は、次の2つです。
1、個別評価金銭債権の貸倒引当金の設定
2、一括評価金銭債権の貸倒引当金の設定

個別評価金銭債権は、貸倒れの可能性が高いもので、
金銭債権を個別に評価して、貸倒引当金を設定します。

一括評価金銭債権は、貸倒れの可能性が低いもので、
金銭債権を個別に評価せずに、一括して貸倒引当金を設定します。

今回は、1の個別評価金銭債権の貸倒引当金を
確認してみましょう。

貸倒引当金が設定できる法人

貸倒引当金が設定できる法人は、限定されています。

1、資本金の額が1億円以下の普通法人など
(資本金の額が1億円以下であっても設定できない法人があります。)
2、公益法人等又は協同組合等
3、人格のない社団等
4、銀行、保険会社
5、その他の法人

個別評価金銭債権

貸倒れの可能性が高い金銭債権(貸付金、売掛金など)を
個別評価金銭債権といいます。

貸倒れの可能性が高い事由については、
・更生計画認可の決定や申立て
・再生計画認可の決定や申立てなど
細かく規定されています。

貸付金の相手先につき、
更生手続開始の申立てが発生している場合、
貸付金だけではなく、他の金銭債権(例、売掛金)も
個別評価金銭債権に該当します。

損金経理が必要

貸倒損失の見込み計上(貸倒引当金の設定)は、
損金経理が必要です。

損金経理とは、
・確定した決算において
・費用又は損失として経理すること
をいいます。

貸倒損失の見込み計上を、
仕訳で意思表示することです。

会計上の仕訳例
貸倒引当金繰入(費用)100万円 / 貸倒引当金 100万円

損金経理していない場合は、
貸倒引当金の設定ができません。

損金算入額の計算

貸倒引当金の設定要件を満たした場合、
一定金額の費用(損金)処理が可能です。

損金算入額は、
1、費用処理した金額
2、個別貸倒引当金繰入限度額(損金算入額の上限)
のいずれか少ない金額となります。

例えば、費用処理した金額、100万円
個別貸倒引当金繰入限度額(上限)、80万円の場合

100万円>80万円
少ない金額80万円が損金算入額となります。

上記の場合、上限を超えた超過額20万円を
別表4で加算・留保の調整をする必要があります。

手続き

貸倒引当金の設定は、
確定申告書に計算資料(別表)を
添付する必要があります。

別表11(1)、個別評価金銭債権に係る貸倒引当金の損金算入に関する明細書
を使用します。
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/shinkoku/itiran2023/pdf/11(01).pdf

翌期に戻入れが必要

貸倒引当金の損金算入額については、
翌期に戻入れ(益金算入)が必要です。

会計上の仕訳例
貸倒引当金 100万円 / 貸倒引当金戻入(収益) 100万円

税務上の仕訳
貸倒引当金 80万円 / 貸倒引当金戻入(益金算入) 80万円

上記の場合、
収益処理した金額100万円-益金算入額80万円
=超過額20万円を別表4で減算・留保の調整をします。

参考規定など

個別評価金銭債権の貸倒引当金の損金算入

第五十二条 次に掲げる内国法人が、その有する金銭債権(債券に表示されるべきものを除く。以下この項及び次項において同じ。)のうち、更生計画認可の決定に基づいて弁済を猶予され、又は賦払により弁済されることその他の政令で定める事実が生じていることによりその一部につき貸倒れその他これに類する事由による損失が見込まれるもの(当該金銭債権に係る債務者に対する他の金銭債権がある場合には、当該他の金銭債権を含む。以下この条において「個別評価金銭債権」という。)のその損失の見込額として、各事業年度(被合併法人の適格合併に該当しない合併の日の前日の属する事業年度及び残余財産の確定(その残余財産の分配が適格現物分配に該当しないものに限る。次項において同じ。)の日の属する事業年度を除く。)において損金経理により貸倒引当金勘定に繰り入れた金額については、当該繰り入れた金額のうち、当該事業年度終了の時において当該個別評価金銭債権の取立て又は弁済の見込みがないと認められる部分の金額を基礎として政令で定めるところにより計算した金額(第五項において「個別貸倒引当金繰入限度額」という。)に達するまでの金額は、当該事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する。
一 当該事業年度終了の時において次に掲げる法人に該当する内国法人
イ 普通法人(投資法人及び特定目的会社を除く。)のうち、資本金の額若しくは出資金の額が一億円以下であるもの(第六十六条第五項第二号又は第三号(各事業年度の所得に対する法人税の税率)に掲げる法人に該当するもの及び同条第六項に規定する大通算法人を除く。)又は資本若しくは出資を有しないもの(同項に規定する大通算法人を除く。)
ロ 公益法人等又は協同組合等
ハ 人格のない社団等
二 次に掲げる内国法人
イ 銀行法(昭和五十六年法律第五十九号)第二条第一項(定義等)に規定する銀行
ロ 保険業法(平成七年法律第百五号)第二条第二項(定義)に規定する保険会社
ハ イ又はロに掲げるものに準ずるものとして政令で定める内国法人
三 第六十四条の二第一項(リース取引に係る所得の金額の計算)の規定により売買があつたものとされる同項に規定するリース資産の対価の額に係る金銭債権を有する内国法人その他の金融に関する取引に係る金銭債権を有する内国法人として政令で定める内国法人(前二号に掲げる内国法人を除く。)

法人税法第52条第1項、施行日令和5年6月7日

規定をまとめたもの


次に掲げる内国法人が、その有する金銭債権(注1)のうち、
更生計画認可の決定に基づいて弁済を猶予され、又は
賦払により弁済されること
その他の政令で定める事実が生じていることにより
その一部につき貸倒れその他これに類する事由による
損失が見込まれるもの(注2)のその損失の見込額として、
各事業年度(注3)において損金経理により
貸倒引当金勘定に繰り入れた金額については、

当該繰り入れた金額のうち、
当該事業年度終了の時において
当該個別評価金銭債権の取立て又は弁済の見込みがないと
認められる部分の金額を基礎として
政令で定めるところにより計算した金額(注4)に達するまでの金額は、
当該事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する。

注1、債券に表示されるべきものを除く。以下この項及び次項において同じ。

注2、当該金銭債権に係る債務者に対する他の金銭債権がある場合には、当該他の金銭債権を含む。以下この条において「個別評価金銭債権」という。

注3、被合併法人の適格合併に該当しない合併の日の前日の属する事業年度及び残余財産の確定(注3-1)の日の属する事業年度を除く。

注3-1、その残余財産の分配が適格現物分配に該当しないものに限る。次項において同じ。

注4、第五項において「個別貸倒引当金繰入限度額」という。


一 当該事業年度終了の時において次に掲げる法人に該当する内国法人
イ 普通法人(注1)のうち、資本金の額若しくは出資金の額が一億円以下であるもの(注2)又は資本若しくは出資を有しないもの(注3)

注1、投資法人及び特定目的会社を除く。

注2、第六十六条第五項第二号又は第三号(各事業年度の所得に対する法人税の税率)に掲げる法人に該当するもの及び同条第六項に規定する大通算法人を除く。

注3、同項に規定する大通算法人を除く。

ロ 公益法人等又は協同組合等
ハ 人格のない社団等


二 次に掲げる内国法人
イ 銀行法(昭和五十六年法律第五十九号)第二条第一項(定義等)に規定する銀行
ロ 保険業法(平成七年法律第百五号)第二条第二項(定義)に規定する保険会社
ハ イ又はロに掲げるものに準ずるものとして政令で定める内国法人


三 第六十四条の二第一項(リース取引に係る所得の金額の計算)の規定により売買があつたものとされる同項に規定するリース資産の対価の額に係る金銭債権を有する内国法人その他の金融に関する取引に係る金銭債権を有する内国法人として政令で定める内国法人(注4)
注4、前二号に掲げる内国法人を除く。


手続き等

3 前二項の規定は、確定申告書にこれらの規定に規定する貸倒引当金勘定に繰り入れた金額の損金算入に関する明細の記載がある場合に限り、適用する。
4 税務署長は、前項の記載がない確定申告書の提出があつた場合においても、その記載がなかつたことについてやむを得ない事情があると認めるときは、第一項及び第二項の規定を適用することができる。

法人税法第52条第3項と第4項、施行日令和5年6月7日

貸倒引当金のタイトル
1、個別貸倒引当金繰入限度額
2、一括貸倒引当金繰入限度額
3、手続き
4、やむを得ない事情があるとき
5-9、その他
10、貸倒引当金の戻入れ
11-13、その他

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