個別貸倒引当金繰入限度額の計算


今回は、個別貸倒引当金繰入限度額の計算を
確認してみましょう。

内容

貸倒引当金については、
会社が費用処理した金額(損金経理額)のうち
損金算入の上限(繰入限度額)まで損金算入ができます。

繰入限度額の計算は、次の2つに分かれます。
1、個別貸倒引当金繰入限度額
2、一括貸倒引当金繰入限度額

今回は、1の個別貸倒引当金繰入限度額の計算方法を
確認してみましょう。

別表の確認

貸倒引当金の損金算入は、
確定申告書に別表の添付が必要です。

使用する別表を確認してみましょう。
別表11(1)個別評価金銭債権に係る貸倒引当金の損金算入に関する明細書https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/shinkoku/itiran2023/pdf/11(01).pdf

1欄、2欄に債務者の情報を記載します。
個別評価金銭債権の計算は、債務者毎です。

3欄に適用する条文を記載します。
計算方法(適用条文)は、4つあります。

4欄、個別評価できる発生時期
5欄、法人が損金経理した金額
を記載します。

規定の確認

今回確認する規定はこちら↓

第九十六条 法第五十二条第一項(貸倒引当金)に規定する政令で定める事実は、次の各号に掲げる事実とし、同項に規定する政令で定めるところにより計算した金額は、当該各号に掲げる事実の区分に応じ当該各号に定める金額とする。
以下省略

法人税法施行令第96条第1項、施行日令和5年10月1日

規定をまとめたものを確認してみましょう。


法第52条第1項(貸倒引当金)に規定する
政令で定める事実は、次の各号に掲げる事実とし、

同項(第1項)に規定する政令で定めるところにより計算した金額は、
当該各号に掲げる事実の区分に応じ当該各号に定める金額とする。


個別評価は、一括評価と異なり、
法令で定める事実が生じている必要があります。

その事実に応じて、
個別評価する計算方法(4つ)が規定されています。

それぞれ確認してみましょう。

更生計画認可の決定等が発生した場合(第1号)

規定をまとめたものを確認してみましょう。


1号、法第52条第1項の内国法人が
その事業年度終了の時において有する
金銭債権(注1)に係る債務者について生じた
次に掲げる事由に基づいて
その弁済を猶予され、又は賦払により弁済されること

その金銭債権の額のうち
その事由が生じた日の属する事業年度終了の日の翌日から
5年を経過する日までに弁済されることとなつている金額
以外の金額(注2)

次に掲げる事由
イ 更生計画認可の決定
ロ 再生計画認可の決定
ハ 特別清算に係る協定の認可の決定
ニ 第24条の2第1項(再生計画認可の決定に準ずる事実等)に規定する事実が生じたこと。
ホ イからハまでに掲げる事由に準ずるものとして財務省令で定める事由

注1、同項に規定する金銭債権をいう。以下第六項までにおいて同じ。

注2、担保権の実行その他により
その取立て又は弁済(注2-1)の
見込みがあると認められる部分の金額を除く。

注2-1、以下この項において「取立て等」という。


別表を確認してみましょう。

6欄、個別評価金銭債権の額を記載します。
(貸倒れの可能性が高い金銭債権)

個別評価金銭債権から
回収できる見込みがあるものをマイナスしていきます。

7欄、その事由が生じた日の属する事業年度終了の日の翌日から
5年を経過する日までに弁済されることとなつている金額
(5年以内弁済金額)を記載します。

8欄+9欄+10欄=11欄
取立て等の見込みがある金額を記載します。

12欄、実質的に債権とみられない部分の金額
具体的には、買掛金や預り保証金のことです。

法人税基本通達11-2-9を確認してみましょう。
実質的に債権とみられない部分
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/11/11_02_02.htm

13欄(=6欄-7欄-11欄-12欄)で
個別評価できる金額を計算します。

14欄、13欄の金額を転記します。
更生計画認可の決定等が発生した場合は、
全額繰入限度額となります。

18欄、繰入限度超過額
5欄(損金経理額)-14欄(損金算入限度額)を記載します。

例えば、
損金経理額(2,000)
損金算入限度額(1,500)の場合は、
繰入限度超過額(500)が発生します。
別表調整が必要ですので注意しましょう。

19欄以後は、一括評価金銭債権の貸倒引当金の
貸倒実績率の計算に使用します。

債務超過の状態が相当期間継続した場合など(第2号)

規定をまとめたものを確認してみましょう。


2号、その内国法人が
その事業年度終了の時において有する金銭債権に係る債務者につき、
債務超過の状態が相当期間継続し、かつ、
その営む事業に好転の見通しがないこと、
災害、経済事情の急変等により多大な損害が生じたこと
その他の事由により、その金銭債権の一部の金額につき
その取立て等の見込みがないと認められること(注3) 

注3、当該金銭債権につき前号に掲げる事実が生じている場合を除く。

その一部の金額に相当する金額


・債務超過の状態が相当期間継続
・その営む事業に好転の見通しがないこと等
により、売掛金や貸付金の一部につき
取立て等の見込がない場合に、個別評価の計算が可能です。

別表の記載方法
15欄、13欄の金額を転記します。
債務超過の状態が相当期間継続した場合などは、
全額繰入限度額となります。

更生手続開始の申立て等が発生した場合(第3号)

規定をまとめたものを確認してみましょう。


3号、その内国法人がその事業年度終了の時において有する
金銭債権に係る債務者につき次に掲げる事由が生じていること(注4)

その金銭債権の額(注5)の50%に相当する金額

次に掲げる事由
イ 更生手続開始の申立て
ロ 再生手続開始の申立て
ハ 破産手続開始の申立て
ニ 特別清算開始の申立て
ホ イからニまでに掲げる事由に準ずるものとして財務省令で定める事由

注4、その金銭債権につき、
第1号に掲げる事実が生じている場合及び
前号(第2号)に掲げる事実が生じていることにより
法第52条第1項の規定の適用を受けた場合
を除く。

注5、その金銭債権の額のうち、
その債務者から受け入れた金額があるため
実質的に債権とみられない部分の金額及び
担保権の実行、金融機関又は保証機関による保証債務の履行
その他により取立て等の見込みがあると認められる部分の金額を除く。


更生手続開始の申立て等が発生している場合、
繰入限度額は、個別評価金銭債権×50%となります。

別表の記載方法
16欄、13欄の金額×50%の金額を記載します。

外国の政府等から金銭債権の回収が著しく困難である場合(第4号)

規定をまとめたものを確認してみましょう。


4号、その内国法人がその事業年度終了の時において有する
金銭債権に係る債務者である
外国の政府、中央銀行又は地方公共団体の
長期にわたる債務の履行遅滞により
その金銭債権の経済的な価値が著しく減少し、かつ、
その弁済を受けることが著しく困難であると認められること

その金銭債権の額(注6)の50%に相当する金額

注6、その金銭債権の額のうち、
これらの者から受け入れた金額があるため
実質的に債権とみられない部分の金額及び
保証債務の履行その他により取立て等の見込みがあると
認められる部分の金額を除く。


外国の政府等から金銭債権の回収が著しく困難である場合、
繰入限度額は、個別評価金銭債権×50%となります。

別表の記載方法
17欄、13欄の金額×50%の金額を記載します。

書類の保存が必要

個別評価の計算については、
それぞれの事実が生じていることを証する書類を
保存する必要があります。

参考規定

個別貸倒引当金繰入限度額の計算

一 法第五十二条第一項の内国法人が当該事業年度終了の時において有する金銭債権(同項に規定する金銭債権をいう。以下第六項までにおいて同じ。)に係る債務者について生じた次に掲げる事由に基づいてその弁済を猶予され、又は賦払により弁済されること 当該金銭債権の額のうち当該事由が生じた日の属する事業年度終了の日の翌日から五年を経過する日までに弁済されることとなつている金額以外の金額(担保権の実行その他によりその取立て又は弁済(以下この項において「取立て等」という。)の見込みがあると認められる部分の金額を除く。)
イ 更生計画認可の決定
ロ 再生計画認可の決定
ハ 特別清算に係る協定の認可の決定
ニ 第二十四条の二第一項(再生計画認可の決定に準ずる事実等)に規定する事実が生じたこと。
ホ イからハまでに掲げる事由に準ずるものとして財務省令で定める事由

二 当該内国法人が当該事業年度終了の時において有する金銭債権に係る債務者につき、債務超過の状態が相当期間継続し、かつ、その営む事業に好転の見通しがないこと、災害、経済事情の急変等により多大な損害が生じたことその他の事由により、当該金銭債権の一部の金額につきその取立て等の見込みがないと認められること(当該金銭債権につき前号に掲げる事実が生じている場合を除く。) 当該一部の金額に相当する金額

三 当該内国法人が当該事業年度終了の時において有する金銭債権に係る債務者につき次に掲げる事由が生じていること(当該金銭債権につき、第一号に掲げる事実が生じている場合及び前号に掲げる事実が生じていることにより法第五十二条第一項の規定の適用を受けた場合を除く。) 当該金銭債権の額(当該金銭債権の額のうち、当該債務者から受け入れた金額があるため実質的に債権とみられない部分の金額及び担保権の実行、金融機関又は保証機関による保証債務の履行その他により取立て等の見込みがあると認められる部分の金額を除く。)の百分の五十に相当する金額
イ 更生手続開始の申立て
ロ 再生手続開始の申立て
ハ 破産手続開始の申立て
ニ 特別清算開始の申立て
ホ イからニまでに掲げる事由に準ずるものとして財務省令で定める事由

四 当該内国法人が当該事業年度終了の時において有する金銭債権に係る債務者である外国の政府、中央銀行又は地方公共団体の長期にわたる債務の履行遅滞によりその金銭債権の経済的な価値が著しく減少し、かつ、その弁済を受けることが著しく困難であると認められること 当該金銭債権の額(当該金銭債権の額のうち、これらの者から受け入れた金額があるため実質的に債権とみられない部分の金額及び保証債務の履行その他により取立て等の見込みがあると認められる部分の金額を除く。)の百分の五十に相当する金額

法人税法施行令第96条第1項第1号、施行日令和5年10月1日

書類の保存等

2 内国法人の有する金銭債権について前項各号に掲げる事実が生じている場合においても、当該事実が生じていることを証する書類その他の財務省令で定める書類の保存がされていないときは、当該金銭債権に係る同項の規定の適用については、当該事実は、生じていないものとみなす。
3 税務署長は、前項の書類の保存がない場合においても、その書類の保存がなかつたことについてやむを得ない事情があると認めるときは、その書類の保存がなかつた金銭債権に係る金額につき同項の規定を適用しないことができる。

法人税法施行令第96条第2項、第3項、施行日令和5年10月1日
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