今回は、倒産防止共済掛金に関する改正を確認してみましょう。
何が変わったのか
倒産防止共済制度の解約と
再加入を利用した利益調整(課税所得の調整)ができなくなります。
改正後の規定を確認してみましょう。
2 前項(第二号に係る部分に限る。)の規定は、法人の締結していた同号に規定する共済契約につき解除があつた後同号に規定する共済契約を締結した当該法人がその解除の日から同日以後二年を経過する日までの間に当該共済契約について支出する同号に掲げる掛金については、適用しない。
新租税特別措置法第66条の11第2項
共済契約の解除日から2年経過日の間に
再契約して共済掛金を支払った部分については、
倒産防止共済掛金の特例が適用できなくなります。
倒産防止共済掛金の特例を確認してみましょう。
(特定の基金に対する負担金等の損金算入の特例)
租税特別措置法第66条の11第1項、施行日令和6年1月1日
第六十六条の十一 法人が、各事業年度において、長期間にわたつて使用され、又は運用される基金又は信託財産に係る負担金又は掛金で次に掲げるものを支出した場合には、その支出した金額は、当該事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する。
一 省略
二 独立行政法人中小企業基盤整備機構が行う中小企業倒産防止共済法の規定による中小企業倒産防止共済事業に係る基金に充てるための同法第二条第二項に規定する共済契約に係る掛金
2024/7/9、一部削除特例を適用すると倒産防止共済の掛金については、
支払った金額に応じて経費(損金算入)となります。
改正された場合であっても、
支払った金額を経費とする特例(現金基準)が適用できなくなるだけで、
損金算入は可能だと思います。
支払った金額を基準とする現金基準から
債務の確定とする基準(債務確定基準)
戻るだけなのでしょう。
倒産防止共済については、契約条件を満たしている場合、
再加入について制限を設けていませんので、再加入は可能です。再加入時の損金算入方法(現金基準の特例)について制限がかかるだけです。
2024/5/30、追記
現時点で具体的に損金算入する方法が明確にされていません。租税回避を防止するための改正ですが、取扱いを明確にして欲しいと思います。
中小企業倒産防止共済法の取扱い
中小企業倒産防止共済法を確認してみましょう。
(掛金の納付)
中小企業倒産防止共済法、施行日令和2年4月1日
第十四条 共済契約者は、第三項から第六項までに規定する場合を除き、共済契約が効力を生じた日の属する月から共済契約が解除された日の属する月までの各月につき、その月の末日(共済契約が解除された日の属する月にあつてはその解除の日)における掛金月額により、その月の末日(共済契約が効力を生じた日の属する月分及びその翌月分の掛金にあつては、共済契約が効力を生じた日の属する月の翌々月末日)までに掛金を納付しなければならない。
原則として月末の掛金月額に応じて、
月末までに掛金を納付する必要があります。
倒産防止共済については、
掛金の前払い制度(前納)があります。
(前納)
中小企業倒産防止共済法、施行日令和2年4月1日
第十五条 機構は、共済契約者が、その納付すべき月の前月末日以前にする掛金の納付(以下「掛金前納」という。)をしたときは、経済産業省令で定めるところにより、その掛金の額を減額することができる。
2 掛金前納がされた掛金については、その納付すべき各月の初日が到来した時に、それぞれその月の掛金が納付されたものとみなす。
前払いした掛金については、
各月の初日にその月の掛金が納付されたものとして
取り扱われます。
税金の取扱いが改正された場合、
掛金の前払い、未払いに関係なく、
原則として月ごとに損金算入することになるのでしょう。
税制メリットがなくなるだけですので、
中小企業倒産防止共済法のメリットがあるのであれば、
再加入時の前納も選択肢の1つです。
税制改正の解説
2024/7/9、追加しました。
財務省、令和6年度税制改正の解説が公表されています。
https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2024/explanation/index.html
租税特別措置法等(法人税関係)の改正、577ページでは、
(注 2 ) 本特例が適用されない期間内に支出された掛金は、資産計上することとなり、解約返戻金を受け取った場合に取り崩すこととなるほか、解約返戻金を受け取ることができないことが確定した場合に損金算入されます。
租税特別措置法等(法人税関係)の改正、577ページ
とあり、制限期間内の掛金については、資産計上する必要があります。
発生主義(債務確定主義)による損金算入ができないことになります。
所得税についても法人税と同様の取扱いとなりますが、
なぜか上記の注2と同様の内容は記載されていません。
所得税の取扱い
所得税についても同様の改正が予定されています。
参考規定はこちら↓
2 前項(第二号に係る部分に限る。)の規定は、個人の締結していた同号に規定する共済契約につき解除があつた後同号に規定する共済契約を締結した当該個人がその解除の日から同日以後二年を経過する日までの間に当該共済契約について支出する同号に掲げる掛金については、適用しない。
新租税特別措置法第28条第2項
所得税については別表調整がありませんので、
前払費用などの勘定科目で残高を管理しておきましょう。
2024/7/9、削除
発生主義(債務確定主義)による別表調整の内容を削除。
当期の税務調整
法人税の別表調整を確認してみましょう。
前提
・再加入時に共済掛金240万円を支払い、全額費用処理する。
・倒産防止共済掛金の特例が適用できず、1月分のみ損金算入する。
会計上の仕訳
借方 | 貸方 |
---|---|
共済掛金(保険料など)240万円 | 現預金 240万円 |
税務上の仕訳
借方 | 貸方 |
---|---|
共済掛金(保険料など)20万円 | 現預金 240万円 |
前払共済掛金 220万円 | - |
調整仕訳
借方 | 貸方 |
---|---|
前払共済掛金 220万円 | 共済掛金(保険料など) 220万円 |
別表4、課税所得
倒産防止共済掛金否認 220万円、加算留保
別表5-1、利益積立金額
区分 | 期首 | 減算 | 加算 | 期末 |
---|---|---|---|---|
前払共済掛金 | +220万円 | +220万円 | ||
繰越損益金 | △240万円 | △240万円 | ||
合計 | △20万円 | △20万円 |
翌期の税務調整
前提
・11月分の掛金が支払われたものとします。
会計上の仕訳
借方 | 貸方 |
---|---|
仕訳なし |
税務上の仕訳
借方 | 貸方 |
---|---|
共済掛金(保険料など)220万円 | 前払共済掛金 220万円 |
調整仕訳
借方 | 貸方 |
---|---|
共済掛金(保険料など) 220万円 | 前払共済掛金 220万円 |
別表4、課税所得
倒産防止共済掛金認容 220万円、減算留保
別表5-1、利益積立金額
区分 | 期首 | 減算 | 加算 | 期末 |
---|---|---|---|---|
前払共済掛金 | +220万円 | +220万円 | ||
繰越損益金 | △240万円 | △240万円 | ||
合計 | △20万円 | △20万円 |