今回は、借地権の評価に関する基本通達を確認してみましょう。
借地権の評価
今回確認する基本通達は、こちらです。
第2節 宅地及び宅地の上に存する権利
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka_new/02/06.htm#a-27
27 借地権の価額は、その借地権の目的となっている宅地の自用地としての価額に、当該価額に対する借地権の売買実例価額、精通者意見価格、地代の額等を基として評定した借地権の価額の割合(以下「借地権割合」という。)がおおむね同一と認められる地域ごとに国税局長の定める割合を乗じて計算した金額によって評価する。ただし、借地権の設定に際しその設定の対価として通常権利金その他の一時金を支払うなど借地権の取引慣行があると認められる地域以外の地域にある借地権の価額は評価しない。原則、借地権の取引慣行があると認められる地域
借地権の価額=自用地としての価額×借地権割合
計算例
自用地としての価額(5,000万円)
×借地権割合(60%)=借地権の価額(3,000万円)
例外、原則以外の地域
借地権の価額は、評価されません。
貸家建付借地権等の評価
貸家の敷地の用に使用されている宅地を「貸家建付地」といいます。この基本通達が26番にあり、借地権の場合の計算方法が次の28番に規定されています。
28 貸家の敷地の用に供されている借地権の価額又は定期借地権等の価額は、次の算式により計算した価額によって評価する。
27≪借地権の評価≫若しくは前項の定めにより評価したその借地権の価額又は27-2≪定期借地権等の評価≫若しくは前項の定めにより評価したその定期借地権等の価額(A)-A×94≪借家権の評価≫に定める借家権割合×26≪貸家建付地の評価≫の(2)の定めによるその家屋に係る賃貸割合一部省略します。
貸家の敷地の用に使用されている借地権の価額=
借地権の価額(A)-借地権の価額(A)×借家権割合×賃貸割合
計算例
貸家の敷地の用に使用されている借地権の価額(2,100万円)=
借地権の価額(3,000万円)-
借地権の価額(3,000万円)×借家権割合(30%)×賃貸割合(100%)
借りている人の権利の価額をマイナスしています。
転貸借地権の評価
借地権を貸している場合の評価について確認してみましょう。
29 転貸されている借地権の価額は、27≪借地権の評価≫又は27-6≪土地の上に存する権利が競合する場合の借地権等の評価≫の定めにより評価したその借地権の価額から次項の定めにより評価したその借地権に係る転借権の価額を控除した価額によって評価する。一部省略します。
転貸されている借地権の価額=
借地権の価額(3,000万円)-次項(第30項)の転借権の価額
借りている人の権利(転借権)の価額をマイナスしています。
転借権の評価
借地権を借りている人の権利の評価について確認してみましょう。
30 借地権の目的となっている宅地の転借権(以下「転借権」という。)の価額は、次の算式1により計算した価額によって評価する。
(算式1) 27≪借地権の評価≫又は27-6≪土地の上に存する権利が競合する場合の借地権等の評価≫の定めにより評価したその借地権の価額×左の借地権の評価の基として借地権割合
ただし、その転借権が貸家の敷地の用に供されている場合の転借権の価額は、次の算式2により計算した価額によって評価する。
(算式2) 上記算式1により計算した転借権の価額(A)-A×94≪借家権の評価≫に定める借家権割合×26≪貸家建付地の評価≫の(2)の定めによるその家屋に係る賃貸割合一部省略します。
算式1
借地権の価額×借地権割合=転借権の価額(A)
例外(ただし書き)
貸家の敷地の用に使用されている場合の転借権の価額は、算式1の金額から一定の金額をマイナスします。
控除前の転借権の価額(A)-
控除前の転借権の価額(A)×借家権割合×賃貸割合
=転借権の価額
計算例
算式1
借地権の価額(3,000万円)×借地権割合(60%)=転借権の価額(1,800万円)
算式2
控除前の転借権の価額(1,800万円)-
控除前の転借権の価額(1,800万円)×借家権割合(30%)×賃貸割合(100%)
=控除後の転借権の価額
1,800万円-540万円=1,260万円
借家人の有する宅地等に対する権利の評価
建物を借りている人(借家人)が、借家の土地に対して持っている権利の評価を確認してみましょう。
31 借家人がその借家の敷地である宅地等に対して有する権利の価額は、原則として、次に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ次に掲げる算式により計算した価額によって評価する。ただし、これらの権利が権利金等の名称をもって取引される慣行のない地域にあるものについては、評価しない。
(1) その権利が借家の敷地である宅地又はその宅地に係る借地権に対するものである場合
27≪借地権の評価≫又は27-6≪土地の上に存する権利が競合する場合の借地権等の評価≫の定めにより評価したその借家の敷地である宅地に係る借地権の価額×94≪借家権の評価≫の定めによるその借家に係る借家権割合×94≪借家権の評価≫の(2)の定めによるその家屋に係る賃借割合
(2) その権利がその借家の敷地である宅地に係る転借権に対するものである場合
前項の定めにより評価したその借家の敷地である宅地に係る転借権の価額×94≪借家権の評価≫の定めによるその借家に係る借家権割合×94≪借家権の評価≫の(2)の定めによるその家屋に係る賃借割合原則
(1)や(2)の算式により評価されます。
例外
借家人が宅地等に対して持っている権利が、権利金などの名称により取引される慣行のない地域にあるものは、評価されません。
一部省略します。
算式1、借家人の権利が土地や土地の借地権に対するものの場合
借地権の価額×借家権割合×賃借割合
算式2、借家人の権利が転借権に対するものの場合
転借権の価額×借家権割合×賃借割合
計算例
算式1、借家人の権利が土地や土地の借地権に対するものの場合
借地権の価額(3,000万円)×借家権割合(30%)×賃借割合(100%)
=借家人の権利の価額(900万円)
算式2、借家人の権利が転借権に対するものの場合
転借権の価額(1,800万円)×借家権割合(30%)×賃借割合(100%)
=借家人の権利の価額(540万円)
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次の通達は、省略しています。
27-2、定期借地権等の評価
27-3、定期借地権等の設定の時における借地権者に帰属する経済的利益の総額の計算
27-4、区分地上権の評価
27-5、区分地上権に準ずる地役権の評価
27-6、土地の上に存する権利が競合する場合の借地権等の評価
メモ
27番、借地権の評価
自用地としての価額×借地権割合=借地権(27番)
土地を借りている人
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28番、貸家建付借地権等の評価
借地権(27番)-借地権(27番)×借家権割合(30%)×賃貸割合
土地を借りて建物を建てて賃貸している人
借手の権利の価額が差し引かれます。
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29番、転貸借地権の評価
借地権(27番)-転借権(30番)
借地権を貸している人
借地権を借りている人の権利の価額が差し引かれます。
借地権を借りている人の貸家がない場合が30番(1)
借地権を借りている人の貸家がある場合が30番(2)
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30番、転借権の評価
(1)、借地権(27番)×借地権割合=転借権(A)
↓
(2)、転借権(A)-転借権(A)×借家権割合(30%)×賃貸割合
借地権を借りている人
(1)は貸家がない場合
(2)は貸家がある場合、(1)の評価額(転借権)を使用します。
借りている人の権利の価額が差し引かれます。
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31番、借家人の有する宅地等に対する権利の評価
(1)、借地権(27番)×借家権割合(30%)×賃借割合
(2)、転借権(A)×借家権割合(30%)×賃借割合
建物を借りている人
(1)は土地を借りている人の権利の価額×30%×借りている割合
(2)は借地権を借りている人の権利の価額×30%×借りている割合
土地の価額を1として
・土地を貸している人
・土地を借りている人(借地権を持っている人)
で土地の価額を按分した後、
借地権の価額を1として
・借地権を貸している人(借地権を持っている人)
・借地権を借りて建物を建てた人(転借権を持っている人)
・建物を借りている人(借家人の権利を持っている人)
で按分する仕組みです。
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パターン1、借家人がいない場合
土地の所有者 A
土地を借りている人 B → 借地権を持っている人
建物を建てた人 Bが使用する
パターン2、借家人がいる場合
土地の所有者 A
土地を借りている人 B → 借地権を持っている人
建物を建てた人 Bが賃貸する
建物を借りた人 D → 借地権の一部を持っている人
パターン3、借地権を貸した場合、借家人がいない場合
土地の所有者 A
土地を借りている人 B → 借地権を持っている人
借地権を借りている人 C → 転借権を持っている人
建物を建てた人 Cが使用する
パターン4、借地権を貸した場合、借家人がいる場合
土地の所有者 A
土地を借りている人 B → 借地権を持っている人
借地権を借りている人 C → 転借権を持っている人
建物を建てた人 Cが賃貸する
建物を借りた人 D → 転借権の一部を持っている人
