借手がリース資産を購入した場合


今回は、借手がリース資産を購入した場合を確認してみましょう。

基本通達が少し変わった。

借手がリース資産を購入した場合の基本通達の一部が変更されていますので、確認してみましょう。

(リース期間終了の時に賃借人がリース資産を購入した場合の取得価額等)
7-6の2-10 賃借人がリース期間終了の時にそのリース取引の目的物であった資産を購入した場合(そのリース取引が令第48条の2第5項第5号イ(減価償却資産の償却の方法)に掲げるもの若しくは同号ロの権利が当該資産を著しく有利な価額で買い取るものである場合における同号ロに掲げるもの又はこれらに準ずるものに該当する場合を除く。)には、その購入の直前における当該資産の取得価額にその購入代価の額を加算した金額を取得価額とし、当該資産に係るその後の償却限度額は、次に掲げる区分に応じ、それぞれ次により計算する。

借り手がリース期間の終了時にリース資産を買った場合には、購入直前の取得価額(例、200万円)に購入代価(例、引取り費用などの付随費用20万円)をプラスした金額が取得価額(合計220万円)となります。

カッコ書きの内容が一部変更されています。
変更された内容を確認してみましょう。

そのリース取引が

  1. 令第48条の2第5項第5号イ(減価償却資産の償却の方法)に掲げるもの
  2. 同号ロの権利が当該資産を著しく有利な価額で買い取るものである場合における同号ロに掲げるもの
  3. これらに準ずるもの

に該当する場合を除く。

変更されたのは2番です。

新しい取扱い

同号ロの権利は、法人税法施行令第48条の2第5項第5号ロを指しています。

ロの要件を満たす場合は、
・所有権が移転するリース取引
と判定されることになります。

ロの要件を確認してみましょう。

ロ 当該リース取引に係る賃借人に対しリース期間終了の時又はリース期間の中途において目的資産を買い取る権利が与えられており、かつ、当該権利が目的資産を著しく有利な価額で買い取るものであることその他の事情により当該権利が行使されることが確実であると見込まれるものであること。

・リース期間の終了時
・リース期間の中途
において、リース資産を買い取る権利が与えられていることが1つ目の要件です。

2つ目の要件が、事情により買い取る権利の行使が確実と予想されるものです。

例示として、「目的資産を著しく有利な価額で買い取る権利であること」が規定されています。

もう一度基本通達を確認してみましょう。

同号ロの権利が当該資産を著しく有利な価額で買い取るものである場合における同号ロに掲げるもの

著しく有利な価額で買い取る権利の場合は、基本通達の取扱いから除外されます。反対に、著しく有利な価額で買い取る権利でないものについては、基本通達の取扱いから除外されません。

同号ロの権利の内容によって、取扱いが分かれます。

著しく有利な価額で買い取る場合は、リース資産の取得価額と実際に買い取る金額に差が生じるため、著しく有利な取得価額+付随費用で計算することができないと意味です。

例えば、次の場合
・直前のリース資産の取得価額 100万円
・著しく有利な価額 25万円
・付随費用 10万円

固定資産(25万円)+付随費用(10万円)=取得価額(35万円)ではなく、リース資産の取得価額(100万円)+付随費用(10万円)=取得価額(110万円)となるのでしょう。

・リース資産の取得価額 100万円
・著しく有利な価額 25万円
2つの差額は、収益(益金)75万円として処理する必要があると考えますが、基本通達7-5-2(申告調整による償却費の損金算入)を適用することも可能だと考えます。

税金計算上の仕訳
固定資産 100万円 / 現預金 25万円
         / 収益 75万円

基本通達の取扱い
固定資産 25万円 / 現預金 25万円

減価償却費 75万円 / 収益 75万円
の仕訳を省略して、別表上で申告調整する。

前の取扱い

改正さえる前の規定を確認してみましょう。

ロ 当該リース取引に係る賃借人に対し、リース期間終了の時又はリース期間の中途において目的資産を著しく有利な価額で買い取る権利が与えられているものであること。

・リース期間の終了時
・リース期間の中途
において、「リース資産を著しく有利な価額で買い取る権利が与えられていること」が所有権が移転するリース取引の要件と規定されていました。

改正前では、権利行使が確実と見込まれるかどうかの要件がありません。

まとめ

改正前
・著しく有利な価額で買い取る権利が与えられている。→ 基本通達×
・上記以外 → 基本通達〇
〇が対象、×が対象外

改正後
1、買い取る権利が与えられている。
2、事情により権利が行使されることが確実であると見込まれるもの。
2-1、例、目的資産を著しく有利な価額で買い取る権利 → 基本通達×
2-2、その他 → 基本通達〇(取得価額+付随費用)

今回確認した基本通達についても、税金計算上のリース取引(ファイナンスリース)に限定されています。オペレーティングリース取引は含まれません。

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