公益法人の暫定残存剰余額と残存欠損額


今回は、公益法人の
・暫定残存剰余額
・残存欠損額
の2つを確認してみましょう。

暫定残存剰余額

公益法人は、5年間(中期均衡期間)で収支のバランス(中期的収支均衡)を図る必要があるため、当期の黒字や赤字だけではなく、過去の黒字や赤字を計算して管理する必要があります。

単年度で生じた黒字を「年度剰余額」といいます。

年度剰余額は、原則として公益目的事業の
・収入額(経常収益)-費用額(経常費用)
で計算します。

参考リンク
公益法人の年度剰余額等の算定

年度剰余額(当期の黒字)がある場合の暫定残存剰余額は、3つの区分に応じて、計算します。

1、過年度残存剰余額の合計額≧0円の場合は、年度剰余額。

過去の黒字が残っている場合、当期の黒字がそのまま黒字として残ります。
2と3にあてはまる場合(過去の赤字が残っている場合)、1の計算は不要です。

2、過年度残存欠損額の合計額≧年度剰余額の場合は、0円。

過去の赤字≧当期の黒字の場合、過去の赤字と当期の黒字を通算します。過去の赤字の方が多いため、当期の黒字は0円となります。

法人税の欠損金の繰越控除と似たような制度です。赤字の集計期間は、過去4年です。

3、過年度残存欠損額の合計額>0円の場合は、年度剰余額-過年度残存欠損額の合計額。

過去の赤字<当期の黒字の場合、過去の赤字と当期の黒字を通算します。当期の黒字の方が多いため、当期の黒字から過去の赤字をマイナスした金額となります。

残存欠損額

単年度で生じた赤字を「年度欠損額」といいます。

年度欠損額は、原則として公益目的事業の
・費用額(経常費用)-収入額(経常収益)
で計算します。

年度欠損額(当期の赤字)がある場合の残存欠損額は、3つの区分に応じて計算します。

1、過年度残存欠損額の合計額≧0円の場合は、年度欠損額。

過去の赤字がある場合、当期の赤字がそのまま赤字として残ります。
2と3にあてはまる場合(過去の黒字が残っている場合)、1の計算は不要です。

2、過年度残存剰余額の合計額≧年度欠損額の場合は、0円。

過去の黒字≧当期の赤字の場合、過去の黒字と当期の赤字を通算します。過去の黒字の方が多いため、当期の赤字は0円となります。

3、過年度残存剰余額の合計額>0円の場合は、年度欠損額-過年度残存剰余額の合計額。

過去の黒字<当期の赤字の場合、過去の赤字と当期の黒字を通算します。当期の赤字の方が多いため、当期の赤字から過去の黒字をマイナスした金額が当期の赤字として残ります。

参考規定

暫定残存剰余額の計算

3 当該事業年度において年度剰余額が生じた場合、当該事業年度に係る暫定残存剰余額は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める額とする。
一 過年度残存剰余額(当該事業年度の前事業年度における当該前事業年度以前の各事業年度(第十九条第一項の規定により特例残存欠損額を算定した事業年度を除く。)に係る残存剰余額をいう。以下同じ。)の合計額が零以上の場合(次号及び第三号に掲げる場合を除く。) 当該年度剰余額
二 過年度残存欠損額(当該事業年度の前事業年度における当該前事業年度以前の各事業年度(当該事業年度の開始の日前四年以内に開始した事業年度に限るものとし、第十九条第一項の規定により特例残存欠損額を算定した事業年度を除く。)に係る残存欠損額をいう。以下同じ。)の合計額が当該年度剰余額以上の場合 零
三 前号に掲げる場合のほか、過年度残存欠損額の合計額が零を超える場合 当該年度剰余額から当該合計額を控除した額

公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律施行規則第16条第3項、施行日令和7年1月1日

残存欠損額の計算

4 当該事業年度において年度欠損額が生じた場合、当該事業年度に係る残存欠損額は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める額とする。
一 過年度残存欠損額の合計額が零以上の場合(次号及び第三号に掲げる場合を除く。) 当該年度欠損額
二 過年度残存剰余額の合計額が当該年度欠損額以上の場合 零
三 前号に掲げる場合のほか、過年度残存剰余額の合計額が零を超える場合 当該年度欠損額から当該合計額を控除した額

公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律施行規則第16条第4項、施行日令和7年1月1日

おまけ

今回確認しました
・暫定残存剰余額の計算(第3項)
・残存欠損額の計算(第4項)
の2つは原則計算です。

特例算定方法(特例計算)を選択した年度については、赤字の金額を特例で計算できるため、上記の計算年度から外れます。

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