今回は、公益法人の残存剰余額等の算定を確認してみましょう。
過去の残存剰余額
公益法人は、5年間(中期均衡期間)で収支のバランス(中期的収支均衡)を図る必要があるため、当期の黒字や赤字だけではなく、過去の黒字や赤字を計算して管理する必要があります。
今回は、過去の黒字や赤字の計算方法の規定を確認してみましょう。
過去の残存剰余額(黒字)は、過年度残存剰余額となります。
過年度残存剰余額については、残存剰余額の解消額がある場合は、解消額をマイナスする必要があります。
残存剰余額の解消とは、次の3つをいいます。
・公益目的保有財産の取得など
・一定の借入金の返済
・必要不可欠な費用や支出
参考リンク
・公益法人の残存剰余額の解消
当期の残存剰余額
当期の残存剰余額(黒字)は、当期の暫定残存剰余額となります。
暫定残存剰余額についても、残存剰余額の解消額がある場合は、解消額をマイナスする必要があります。
残存剰余額の解消額は、過年度残存剰余額(過去の黒字)から先にマイナスして、残った部分を暫定残存剰余額(当期の黒字)からマイナスします。
数字で確認してみましょう。
・2期前の過年度残存剰余額 150
・1期前の過年度残存剰余額 200
・暫定残存剰余額 120
公益目的保有財産の取得(解消額)が400ある場合、
2期前の過年度残存剰余額 150-150=0
1期前の過年度残存剰余額 200-200=0
暫定残存剰余額 120-(400-350)=当期の残存剰余額 70
過去の残存欠損額
過去の残存欠損額(赤字)は、過年度残存欠損額となります。
当期の年度剰余額(黒字)が生じた場合は、過去の赤字と通算した残額です。過去の赤字は古いものから順番に通算します。考え方は、法人税の欠損金の計算と同じです。
参考規定
過去の残存剰余額(黒字)の計算
(残存剰余額等の算定)
公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律施行規則第18条第1項、施行日令和7年4月1日
第十八条 当該事業年度における当該事業年度前の各事業年度に係る残存剰余額は、過年度残存剰余額(前条の規定(第二十条第一項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)による解消額がある場合には、当該解消額を過年度残存剰余額のうち最も古い事業年度に係るものからその額を限度として順次控除したときに、当該過年度残存剰余額から控除することとなる額を除く。)とする。
当期の残存剰余額(黒字)の計算
2 当該事業年度に係る残存剰余額は、当該事業年度の暫定残存剰余額(前条の規定による解消額がある場合には、当該暫定残存剰余額から当該解消額(前項の規定により過年度残存剰余額から控除した額がある場合には、当該解消額から当該控除した額の合計額を除いた額)を控除した額)とする。
公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律施行規則第18条第2項、施行日令和7年4月1日
過去の残存欠損額(赤字)の計算
3 当該事業年度における当該事業年度前の各事業年度に係る残存欠損額は、過年度残存欠損額(当該事業年度において年度剰余額が生じた場合には、当該年度剰余額を過年度残存欠損額のうち最も古い事業年度に係るものからその額を限度として順次控除したときに、当該過年度残存欠損額から控除することとなる額を除く。)とする。
公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律施行規則第18条第3項、施行日令和7年4月1日
メモ
第16条第2項、年度剰余額と年度欠損額
→ 当期の黒字と赤字の計算
第16条第3項、当期の年度剰余額がある場合の暫定残存剰余額の計算
・過年度残存剰余額がある場合、当期の黒字がそのまま残る。
・過年度残存欠損額≧年度剰余額の場合、過去の赤字が残る。
・過年度残存欠損額<年度剰余額の場合、当期の黒字が残る。
当期の黒字と過去の赤字を通算した後に、暫定残存剰余額が決まります。
第16条第4項、当期の年度欠損額がある場合の残存欠損額の計算
・過年度残存欠損額がある場合、当期の赤字がそのまま残る。
・過年度残存剰余額≧年度欠損額の場合、過去の黒字が残る。
・過年度残存剰余額<年度欠損額の場合、当期の赤字が残る。
当期の赤字と過去の黒字を通算した後に、残存欠損額が決まります。
第17条、残存剰余額の解消
・暫定残存剰余額
・過年度残存剰余額
の2つ(残存剰余額)は、公益目的保有財産の取得などでも解消できます。
「暫定」の意味は、解消額を考慮する前という意味だと思います。
計算の流れ
1、当期が黒字 → 年度剰余額
2、過去の赤字と通算 → 暫定残存剰余額
3、黒字が残る場合 → 黒字の解消が必要
4、黒字を解消しきれない場合 → 残存剰余額(過年度残存剰余額)
第18条第1項、過去の残存剰余額 ← 過年度残存剰余額
・当期の計算をする前に、過去の金額を計算します。
・残存剰余額の解消額がある場合は、解消額をマイナスします。
第18条第2項、当期の残存剰余額 ← 暫定残存剰余額
・残存剰余額の解消額がある場合は、解消額をマイナスします。
第18条第3項、過去の残存欠損額 ← 過年度残存欠損額
・当期の計算をする前に、過去の金額を計算します。
・過去の赤字は古いものから順次、当期の黒字と通算します。