今回は、公益目的事業継続予備財産の要件を確認してみましょう。
使途不特定財産と公益目的事業継続予備財産
公益法人は、
・現に使用されず、
・今後も使用されることが見込まれない
財産(現行の遊休財産)について、上限額を超えて保有できません。
新しい制度で「使途不特定財産」に変わりますが、要件を満たす財産については、使途不特定財産から除外できます。「公益目的事業継続予備財産」といいます。
公益目的事業継続予備財産の要件は、次の3つです。
1、公益目的事業を継続的に行うための資金を保有する必要性がある。
2、必要な資金の限度額が算定されている。
3、限度額などを超えていない。
限度額などの計算
3の限度額などについては、上限がもう1つありますので規定を確認してみましょう。
三 その合計額が、前号に規定する限度額又は当該事業年度の公益目的事業に係る経理における資産の額から当該経理に係る次条第二項第一号及び第二号に掲げる額の合計額を控除して得た額(当該公益法人が法第十九条第一項ただし書の規定の適用を受けるときは、当該事業年度の資産の額から次条第二項第一号及び第二号に掲げる額の合計額を控除して得た額)のいずれか小さい方の額を超えないものであること。
公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律施行規則第35条第3号、施行日令和7年4月1日
公益目的事業継続予備財産の合計額が
A、必要な資金の限度額
B、一定の方法で計算した金額
のいずれか少ない方の金額を超えないことが要件です。
必要な資金の限度額が1000万円であっても、Bの金額が200万円であれば、200万円が上限となります。
一定の方法で計算した金額を確認してみましょう。
「当該事業年度の公益目的事業に係る経理における資産の額」から「当該経理に係る次条第二項第一号及び第二号に掲げる額の合計額」を控除して得た額
算式
公益目的事業の資産の額-(公益目的事業の次条第2項第1号の金額+第2号の金額)
次条(第36条)第2項は、使途不特定財産額の計算規定です。
第1号、負債と基金の額
第2号、控除対象財産の帳簿価額の合計額-対応する負債の額
第3号、公益目的事業継続予備財産の額
限度額の計算では「当該経理に係る」とありますので、公益目的事業に係る負債などの金額となります。
カッコ書きを確認してみましょう。
「当該公益法人が法第十九条第一項ただし書の規定の適用を受けるときは、当該事業年度の資産の額から次条第二項第一号及び第二号に掲げる額の合計額を控除して得た額」
第19条第1項のただし書きを確認してみましょう。
「ただし、収益事業等を行わない公益法人であって、その行う公益目的事業の内容その他の事項に関し内閣府令で定める要件に該当するものについては、この限りでない。」
公益法人は原則として区分経理が必要ですが、ただし書きに該当する場合は区分経理が不要です。
区分経理が不要となる場合は、
「当該事業年度の資産の額」から「次条第二項第一号及び第二号に掲げる額の合計額」を控除して得た額
と規定されています。
算式、1-(2+3)
1、資産の額
2、負債と基金の額
3、控除対象財産の帳簿価額の合計額-対応する負債の額
参考規定
公益目的事業継続予備財産の要件
第三十五条 法第十六条第二項に規定する内閣府令で定める要件は、次に掲げるものとする。
公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律施行規則第35条、施行日令和7年4月1日
一 当該公益法人の事業内容、資産及び収支の状況、災害その他の予見し難い事由の発生により想定される公益目的事業の継続が困難となる事態、当該事由が発生した場合においても公益目的事業を継続的に行うための平時の取組の状況その他の事情に鑑み、当該事由が発生した場合においても公益目的事業を継続的に行うための資金を保有する必要性があること。
二 前号に規定する必要性に基づき、同号に規定する事由が発生した場合においても公益目的事業を継続的に行うために必要な同号に規定する資金の限度額が算定されていること。
三 省略
使途不特定財産額
2 公益法人の各事業年度の使途不特定財産額は、当該事業年度の資産の額から次に掲げる額の合計額を控除して得た額とする。
公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律施行規則第36条第2項、施行日令和7年4月1日
一 負債(基金(一般社団・財団法人法第百三十一条に規定する基金をいう。以下同じ。)を含む。以下この条において同じ。)の額
二 控除対象財産の帳簿価額の合計額から対応負債の額を控除して得た額
三 公益目的事業継続予備財産の額
区分経理
第十九条 公益法人は、内閣府令で定めるところにより、公益目的事業に係る経理、収益事業等に係る経理及び法人の運営に係る経理(収益事業等を行わない公益法人にあっては、公益目的事業に係る経理及び法人の運営に係る経理)をそれぞれ区分して整理しなければならない。ただし、収益事業等を行わない公益法人であって、その行う公益目的事業の内容その他の事項に関し内閣府令で定める要件に該当するものについては、この限りでない。
公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律第19条第1項、施行日令和7年4月1日