共同相続の消費税の納税義務


今回は、共同相続の消費税の納税義務を確認してみましょう。

基本通達の確認

先に基本通達を確認してみましょう。

(共同相続の場合の納税義務)
1-5-5 法第10条第1項又は第2項《相続があった場合の納税義務の免除の特例》の規定を適用する場合において、2以上の相続人があるときには、相続財産の分割が実行されるまでの間は被相続人の事業を承継する相続人は確定しないことから、各相続人が共同して被相続人の事業を承継したものとして取り扱う。この場合において、各相続人のその課税期間に係る基準期間における課税売上高は、当該被相続人の基準期間における課税売上高に各相続人の民法第900条各号《法定相続分》(同法第901条《代襲相続人の相続分》から第903条《特別受益者の相続分》までの規定の適用を受ける場合には、これらの各条)に規定する相続分に応じた割合を乗じた金額とする。(平17課消1-22により改正)

消費税法基本通達

相続により亡くなった個人事業者の事業を承継した場合、
亡くなった個人事業者の売上を考慮して、
消費税の納税義務を判定する特例があります。
(相続があつた場合の納税義務の免除の特例といいます。)

この特例に関する基本通達です。

基本通達には、

相続人が2人以上いる場合、
誰が事業を承継するか確定しないため、
亡くなった個人事業者の売上を
民法の法定相続分の割合で按分計算する。

ということが書かれています。

例えば、亡くなった個人事業者Aの売上が3000万円の場合、

法定相続分は、
・配偶者B 1/2
・子C 1/4
・子D 1/4
となりますので、納税義務の判定に使用する売上は、

配偶者B
3,000万円×1/2=1,500万円

子Cと子D
3,000万円×1/4=750万円

となります。

事業を承継する人

質疑応答事例に「事業」の解説がありますので確認してみましょう。

国税庁、質疑応答事例、消費税における「事業」の定義
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shohi/22/01.htm

回答要旨の中で、

この場合の「事業」とは、
「同種の行為を反復、継続かつ独立して遂行すること」をいいます。

とあります。

亡くなった個人事業者の
事業(同種の行為を反復、継続かつ独立して遂行すること)を
承継した場合に、消費税の納税義務の特例が登場します。

同種の行為を反復、継続かつ独立して遂行しない場合は、
消費税の納税義務の特例の対象外となります。
事業を承継していないからです。

そのため、法定相続分の按分計算の前に、
・事業を承継している人は誰か
・誰が事業を承継できるのか等
を確認する必要があります。

インボイスの取扱い

「同種の行為を反復、継続かつ独立して遂行すること」が
できない場合は、消費税法の事業を承継しない(できない)ため、
みなし登録期間の取扱いもないと考えられます。
(みなし登録期間の取扱いは、個人「事業者」であることが前提)

細かいことですが、「同種の行為を反復、継続かつ独立して遂行すること=事業」を承継すれば、仮に相続財産の承継がなかったとしても、納税義務の特例やインボイスの特例の対象となるのでしょう。

財産の承継ではなく、事業の承継が判断基準なのでしょう。

参考通達

(共同相続があった場合の登録の効力)
1-7-5 相続があった場合において、2以上の相続人があるときには、相続財産の分割が実行されるまでの間は適格請求書発行事業者である被相続人の事業を承継する相続人は確定しないことから、これらの相続人(適格請求書発行事業者を除く。以下1-7-5において同じ。)は法第57条の3第3項《適格請求書発行事業者が死亡した場合における手続等》に規定する「相続により適格請求書発行事業者の事業を承継した相続人」に該当するものとして取り扱う。
 なお、みなし登録期間の末日までに相続財産の分割が実行された場合において、適格請求書発行事業者である被相続人の事業を承継しないこととなった相続人は、相続財産の分割が実行された日以後同項の規定が適用されないため、同日以後適格請求書発行事業者とみなされないことに留意する。

消費税法基本通達
参考規定等

相続があつた場合の納税義務の免除の特例

第十条 その年において相続があつた場合において、その年の基準期間における課税売上高が千万円以下である相続人(第九条第四項の規定による届出書の提出により、又は前条第一項の規定により消費税を納める義務が免除されない相続人を除く。以下この項及び次項において同じ。)が、当該基準期間における課税売上高が千万円を超える被相続人の事業を承継したときは、当該相続人の当該相続のあつた日の翌日からその年十二月三十一日までの間における課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れについては、第九条第一項本文の規定は、適用しない。
2 その年の前年又は前々年において相続により被相続人の事業を承継した相続人のその年の基準期間における課税売上高が千万円以下である場合において、当該相続人の当該基準期間における課税売上高と当該相続に係る被相続人の当該基準期間における課税売上高との合計額が千万円を超えるときは、当該相続人のその年における課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れについては、第九条第一項本文の規定は、適用しない。
3 相続により、二以上の事業場を有する被相続人の事業を二以上の相続人が当該二以上の事業場を事業場ごとに分割して承継した場合の被相続人の基準期間における課税売上高の計算その他前二項の規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。

消費税法

事業としての意義

5-1-1 法第2条第1項第8号《資産の譲渡等の意義》に規定する「事業として」とは、対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供が反復、継続、独立して行われることをいう。(平23課消1-35により改正)
(注)
1 個人事業者が生活の用に供している資産を譲渡する場合の当該譲渡は、「事業として」には該当しない。
2 法人が行う資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供は、その全てが、「事業として」に該当する。

消費税法基本通達


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