今回は、分割があった場合の賃上げ促進税制の移転教育訓練費を確認してみましょう。
移転教育訓練費
分割があった場合、事業の一部が承継されるため、従業員なども異動します。そのため、従業員に対する教育訓練費の負担も変動します。
この教育訓練費の変動を合理的に計算したものを
「移転教育訓練費の額」といいます。
規定を確認してみましょう。
16 前二項に規定する移転教育訓練費の額とは、その分割等に係る分割法人等の当該分割等の日前に開始した各事業年度に係る教育訓練費の額(分割等事業年度にあつては、当該分割等の日の前日を当該分割等事業年度終了の日とした場合に損金の額に算入される教育訓練費の額)に当該分割等の直後の当該分割等に係る分割承継法人等の国内雇用者(当該分割等の直前において当該分割法人等の国内雇用者であつた者に限る。)の数を乗じてこれを当該分割等の直前の当該分割法人等の国内雇用者の数で除して計算した金額をいう。
租税特別措置法施行令第27条の12の5第16項、施行日令和6年6月1日
カッコ書きを省略して算式にしてみますと
A×B÷C
A、その分割等に係る分割法人等の当該分割等の日前に開始した各事業年度に係る教育訓練費の額(注1)
B、当該分割等の直後の当該分割等に係る分割承継法人等の国内雇用者(注2)の数
C、当該分割等の直前の当該分割法人等の国内雇用者の数
となります。
Aは、分割法人の分割する前までの教育訓練費
Bは、分割した後の分割承継法人の従業員数
Cは、分割する前の分割法人の従業員数
となります。
計算例
分割法人
・分割前の従業員数40人(C)、教育訓練費40万円(A)
・分割後の従業員数30人
↓ 10人異動
分割承継法人
・分割前の従業員数10人
・分割後の従業員数20人、うち承継した従業員10人(B)
移転教育訓練費の額は、
40万円(A)×10人(B)÷40人(C)=10万円となります。
分割法人の教育訓練費が1人あたり1万円、
分割承継法人の承継した従業員数が10人なので、
10万円という計算となります。
2024/9/26、計算内容を訂正
カッコ書きの内容
1つ目のカッコ書きを確認してみましょう。
・分割等事業年度にあつては、当該分割等の日の前日を当該分割等事業年度終了の日とした場合に損金の額に算入される教育訓練費の額
当期に分割した場合は、分割した日の前日までの教育訓練費を事業年度が終了する前に集計する必要があります。
2つ目のカッコ書きを確認してみましょう。
・当該分割等の直前において当該分割法人等の国内雇用者であつた者に限る。
分割法人等から分割承継法人等に異動した
従業員に限定されています。
分割法人等と分割承継法人等との間で変動する教育訓練費を
合理的に計算する必要があるからです。