分割型分割があった場合の資本金等の額、純資産価額


今回は、分割型分割があった場合の資本金等の額 のうち、純資産価額を確認してみましょう。

分割型分割があった場合の資本金等の額

分割型分割があった場合の資本金等の額は、法人税法施行令を確認する必要があります。

参考リンク
分割型分割があった場合の資本金等の額

資本金等の額の加算額を算式で記載します。

1、純資産価額 1,000
2、増加資本金額等 600
3、分割法人の株式の分割純資産対応帳簿価額 100
4、資本金等の額の加算額 1-(2+3)=300

仕訳イメージ

資産 1,200 / 負債 200
      / 増加資本金額等 600
      / 分割法人の株式の分割純資産対応帳簿価額 100
      / 資本金等の額の加算額 300 ← この部分を計算

適格分割型分割の場合

純資産価額のカッコ書きには、(次に掲げる分割型分割の区分に応じそれぞれ次に定める金額をいう。)とあり、次の4つがあります。

イ、適格分割型分割に該当しない分割型分割(ロとハを除外)
ロ、適格分割型分割に該当しない分割型分割のうち、非適格合併等に該当しないもの(無対価分割を除外)
ハ、適格分割型分割に該当しない分割型分割のうち、無対価分割で一定の関係があるもの
ニ、適格分割型分割
(合併の場合と比べて1つ多い。)

まずは、適格分割型分割の場合を確認してみましょう。

ニ 適格分割型分割 当該適格分割型分割に係る分割法人の資本金等の額につき第十五号の規定により計算した金額に相当する金額

第15号は、分割法人の資本金等の額の減算額を計算する規定です。

分割法人の仕訳イメージ

負債 200      / 資産 1,000
資本金等の額 ××円 /
↑これを計算

適格分割型分割の場合は、第15号で計算した金額が分割承継法人の資本金等の額の加算額となります。

分割承継法人の仕訳イメージ
資産 1,000 / 負債 200
      / 純資産価額 ××円(第15号で計算した資本金等の額)

無対価分割で一定のもの

適格分割型分割でない場合の計算方法は、3つ(イ、ロ、ハ)あります。

ハに該当する場合は、ハが優先されるためハから見てみましょう。

ハ 適格分割型分割に該当しない分割型分割のうち無対価分割で第四条の三第六項第二号イ(2)に掲げる関係があるもの 当該移転資産(営業権にあつては、独立取引営業権に限る。)の価額(法第六十二条の八第一項に規定する資産調整勘定の金額を含む。)から当該移転負債の価額(法第六十二条の八第二項及び第三項に規定する負債調整勘定の金額を含む。)を控除した金額

1、無対価分割(分割対価資産がない分割)で
2、第4条の3第6項第2号イ(2)の関係があるもの
とあるため、無対価分割であっても2の要件を満たさないものは、ハではなく、イに該当します。

法人税法施行令第4条の3は、適格組織再編成における株式の保有関係等です。
第6項は、適格分割に関するものです。
第2号イ(2)は、分割前後で株式の所有割合が同じ(変わらない)関係です。

ハに該当する場合は、
1、移転資産の価額(営業権単独で取引される独立取引営業権に限定。)
2、移転負債の価額(負債調整勘定の金額。税金計算上の負ののれん。)
3、純資産価額 1-2
により純資産価額を計算します。

非適格合併等に該当しないもの

ハに該当しない場合は、ロの判定が必要です。

ロ 適格分割型分割に該当しない分割型分割のうち法第六十二条の八第一項に規定する非適格合併等に該当しないもの(無対価分割に該当するものを除く。) 当該移転資産の価額から当該移転負債の価額を減算した金額

「法第62条の8第1項に規定する非適格合併等」とあるため、見てみましょう。

法人税法第62条の8は、「非適格合併等により移転を受ける資産等に係る調整勘定の損金算入等」です。税金計算上ののれん等を計算する規定です。

非適格合併等の定義は、

非適格合併等(適格合併に該当しない合併又は適格分割に該当しない分割、適格現物出資に該当しない現物出資若しくは事業の譲受けのうち、政令で定めるものをいう。以下この条において同じ。)

とあるため、政令を確認する必要があります。

非適格合併等=

・適格合併に該当しない合併
又は
・適格分割に該当しない分割
・適格現物出資に該当しない現物出資
・事業の譲受け
のうち、政令で定めるもの

とあります。

・分割(適格分割を除外)
・現物出資(適格現物出資を除外)
・事業の譲受け
の3つを「非適格分割等」といいます。

重要な部分は、「当該非適格分割等の直前において行う事業及び当該事業に係る主要な資産又は負債のおおむね全部が当該非適格分割等により当該非適格分割等に係る分割承継法人、被現物出資法人又は譲受け法人に移転をするもの」です。
(法人税法施行令第123条の10第1項、令和7年4月1日施行)

・事業
・主要な資産や負債
のおおむね全部が分割承継法人などに移転するもの、が政令で定めるものとなります。

合併は全部(100%)移転しますが、分割などは移転割合が変わります。

おおむね全部が移転する場合は、政令で定める場合に該当します。政令で定めるもの場合に該当する場合は、一定の「非適格合併等」に該当します。

「非適格合併等に該当しないもの」とありますので、事業、資産、負債のおおむね全部が移転しないものがロに該当します。

ただし、カッコ書きで「無対価分割」は除外されています。

ロの要件を満たす場合は、
1、移転資産の価額
2、移転負債の価額
3、資本金等の額の加算額 1-2
により純資産価額を計算します。

その他の非適格分割型分割

適格分割型分割に該当しない分割型分割(ロ及びハに掲げるものを除く。)と規定されているため、ロとハに該当しないものがイの対象となります。

イ 適格分割型分割に該当しない分割型分割(ロ及びハに掲げるものを除く。) 当該分割型分割により分割法人(分割対価資産の全てが分割法人の株主等に直接に交付される分割型分割にあつては、当該株主等)に交付した当該法人の株式その他の資産の価額の合計額

分割法人(分割法人の株主等)に交付した
・資産(例、分割法人の株式)の価額の合計額
が純資産価額です。

ロとハは差額計算しますが、イは差額計算しません。

参考情報

分割型分割があった場合の資本金等の額の加算額

六 分割型分割により移転を受けた資産(以下この号において「移転資産」という。)及び負債(以下この号において「移転負債」という。)の純資産価額(次に掲げる分割型分割の区分に応じそれぞれ次に定める金額をいう。)から当該分割型分割による増加資本金額等(当該分割型分割により増加した資本金の額又は出資金の額(法人を設立する分割型分割にあつては、その設立の時における資本金の額又は出資金の額)並びに当該分割型分割により分割法人(分割対価資産の全てが分割法人の株主等に直接に交付される分割型分割にあつては、当該株主等)に交付した金銭並びに当該金銭及び当該法人の株式以外の資産の価額の合計額をいい、適格分割型分割により分割法人に法第二条第十二号の十一に規定する分割承継親法人の株式(以下この号及び次号において「分割承継親法人株式」という。)を交付した場合にあつては、その交付した分割承継親法人株式の当該適格分割型分割の直前の帳簿価額とする。)及び当該法人が有していた当該分割型分割(第四条の三第六項第一号イに規定する無対価分割(以下この項において「無対価分割」という。)で同条第六項第二号イ(1)又は(2)に掲げる関係があるものに限る。)に係る分割法人の株式に係る法第六十一条の二第四項に規定する分割純資産対応帳簿価額(適格分割型分割に該当しない分割型分割にあつては、法第二十四条第三項の規定により当該株式に対して交付されたものとみなされる当該法人の株式の価額のうち同条第一項の規定により法第二十三条第一項第一号に掲げる金額とみなされる金額を加算した金額)を減算した金額(当該法人が資本又は出資を有しない法人である場合には、零)
イ 適格分割型分割に該当しない分割型分割(ロ及びハに掲げるものを除く。) 当該分割型分割により分割法人(分割対価資産の全てが分割法人の株主等に直接に交付される分割型分割にあつては、当該株主等)に交付した当該法人の株式その他の資産の価額の合計額
ロ 適格分割型分割に該当しない分割型分割のうち法第六十二条の八第一項に規定する非適格合併等に該当しないもの(無対価分割に該当するものを除く。) 当該移転資産の価額から当該移転負債の価額を減算した金額
ハ 適格分割型分割に該当しない分割型分割のうち無対価分割で第四条の三第六項第二号イ(2)に掲げる関係があるもの 当該移転資産(営業権にあつては、独立取引営業権に限る。)の価額(法第六十二条の八第一項に規定する資産調整勘定の金額を含む。)から当該移転負債の価額(法第六十二条の八第二項及び第三項に規定する負債調整勘定の金額を含む。)を控除した金額
ニ 適格分割型分割 当該適格分割型分割に係る分割法人の資本金等の額につき第十五号の規定により計算した金額に相当する金額

法人税法施行令第8条第1項第6号、令和7年4月1日施行
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