今回は、分割法人の資本金等の額のカッコ書きを確認してみましょう。
資本金等の額の減算額を減らす場合
資本金等の額のカッコ書きは、全部で9つあります。
参考リンク
・分割法人の資本金等の額
今回は、上記の記事で確認できなかったカッコ書きを見てみましょう。
乗じて計算した金額(注2)を確認してみましょう。
乗じて計算した金額(当該分割型分割が適格分割型分割でない場合において、当該計算した金額が当該分割型分割により当該分割法人の株主等に交付した分割承継法人の株式(出資を含む。以下この条において同じ。)その他の資産の価額(法第六十二条第一項(合併及び分割による資産等の時価による譲渡)に規定する特定分割型分割にあつては、同項後段の規定により当該特定分割型分割に係る分割法人の株主等に交付したものとされる分割対価資産又は分割承継法人の株式の価額)を超えるときは、その超える部分の金額を減算した金額)「適格分割型分割でない場合」とありますので、非適格の分割型分割です。
計算した金額は、資本金等の額×分割移転割合です。
・分割移転割合=ロの金額(分子)÷イの金額(分母)
カッコ書きを外します。
当該分割型分割により当該分割法人の株主等に交付した分割承継法人の株式(注1)その他の資産の価額(注2)を超えるときは、その超える部分の金額を減算した金額分割型分割は、分割対価資産を分割法人の株主等に交付します。
資本金等の額の減算額が株主等に交付した資産(例、分割承継法人の株式)の価額を超えるときは、その超える部分の金額を資本金等の額の減算額から減らします。
数字を使ってみましょう。
1、資本金等の額の減算額 1,000
2、株主等に交付した資産の価額 800
3、1から減らす金額 1-2=200
資本金等の額の減算額は、
1,000-200=800に変わります。
資産の価額のカッコ書きには、
「特定分割型分割」のことが規定されています。
法人税法第62条第1項
当該分割(第二条第十二号の九イ(定義)に規定する分割対価資産(以下この項において「分割対価資産」という。)の全てが分割法人の株主等に直接に交付される分割型分割及び同号ロに規定する無対価分割に該当する分割型分割で分割法人の株主等に対する分割承継法人の株式(出資を含む。以下この項及び次条第三項において同じ。)の交付が省略されたと認められる分割型分割として政令で定めるものに限る。以下この項において「特定分割型分割」という。)1、分割対価資産の全てが分割法人の株主等に直接に交付される分割型分割
→ 分割法人を経由しません。
2、同号ロに規定する無対価分割に該当する分割型分割で分割法人の株主等に対する分割承継法人の株式の交付が省略されたと認められる分割型分割として政令で定めるもの
→ 分割前後で所有割合が変わらない無対価分割です。分割対価資産がないため分割法人を経由しません。
上記2つを併せて「特定分割型分割」といいます。
特定分割型分割については、分割対価資産が分割法人に交付されません。ただし、法人税の計算上、分割法人が分割対価資産を取得して、分割対価資産を分割法人の株主等に交付したものとして計算します。
数字を使ってみましょう。
1、資本金等の額の減算額 1,000
2、交付した資産の価額 0 700
交付したものとされる分割対価資産又は分割承継法人の株式の価額で計算
3、1から減らす金額 1-2=300
仮決算による中間申告書を提出している場合
前事業年度(注3)のカッコ書きを確認してみましょう。
前事業年度(当該分割型分割の日以前六月以内に法第七十二条第一項(仮決算をした場合の中間申告書の記載事項等)に規定する期間(通算子法人にあつては、同条第五項第一号に規定する期間。以下この項及び次項第三号イにおいて同じ。)について同条第一項各号に掲げる事項を記載した中間申告書を提出し、かつ、その提出した日から当該分割型分割の日までの間に確定申告書を提出していなかつた場合には、当該中間申告書に係る同項に規定する期間)原則として前事業年度が終了した時の金額で計算します。カッコ書きは、仮決算をした場合の中間申告をしている場合です。
法第72条第1項に規定する期間は、事業年度が開始した日以後6月の期間です。
(3月末決算の場合は、4/1-9/30)
分割型分割の日以前6月以内に
仮決算による中間申告書を「提出」していることが1つ目の要件です。
2つ目の要件は、
・その提出日から
・分割型分割の日まで
の間に確定申告書を提出していなかつた場合です。
2つの要件を満たす場合は、前事業年度が終了した時ではなく、中間申告書の計算期間が終了した時の金額で計算します。
減算した金額
減算した金額(注5)のカッコ書き
減算した金額(当該終了の時から当該分割型分割の直前の時までの間に資本金等の額又は利益積立金額(次条第一号及び第六号に掲げる金額を除く。)が増加し、又は減少した場合にはその増加した金額を加算し、又はその減少した金額を減算した金額とし、当該直前の時において調整対象通算法人の株式を有する場合には当該株式の修正前帳簿価額が修正帳簿価額に満たないときにおけるその満たない部分の金額を加算し、又は当該株式の修正前帳簿価額が修正帳簿価額を超えるときにおけるその超える部分の金額を減算した金額とする。)2つ規定されています。
1つ目
・前事業年度が終了した時から
・分割型分割の直前まで
の間に資本金等の額や利益積立金額(一定の金額は除外)が変わった場合は、変わった後の金額がイの金額(移転割合の分母)となります。
一定の金額は、
・第9条(利益積立金額)第1号の金額
・第9条(利益積立金額)第6号の金額
の2つです。
第1号は、一般的な利益積立金額の増減を計算する規定です。
第6号は、通算法人が他の通算法人の株式を有する場合の規定です。
(上記2つは、除外されていますので、実際に利益積立金額が変わっても計算に使用しません。)
2つ目
当該直前の時において調整対象通算法人の株式を有する場合には当該株式の修正前帳簿価額が修正帳簿価額に満たないときにおけるその満たない部分の金額を加算し、又は当該株式の修正前帳簿価額が修正帳簿価額を超えるときにおけるその超える部分の金額を減算した金額とする。要件
・直前の時に「調整対象通算法人」の株式を有する場合
取扱い1
・調整対象通算法人の株式の修正前帳簿価額が
修正帳簿価額に満たないときにおけるその満たない部分の金額を加算
取扱い2
・調整対象通算法人の株式の修正前帳簿価額が
修正帳簿価額を超えるときにおけるその超える部分の金額を減算
分割型分割や株式分配により、分割型分割や株式分配に基因して通算制度が終了する事由が発生する法人を「調整対象通算法人」といいます。
(法人税法施行令第8条第2項に定義されています。)
数字を使ってみましょう。
株式の修正前帳簿価額(1,000)が修正帳簿価額(1,500)に満たないときにおけるその満たない部分の金額(500)を加算
1、資産の帳簿価額 5,000
2、負債の帳簿価額 2,000
3、純資産価額(減算した金額) 1-2=3,000
分割型分割の直前に調整対象通算法人の株式がある場合
3,000+満たない部分の金額(500)=純資産価額は、3,500に変わります。
取扱い2は、取扱い1の逆の計算(減算)をします。
帳簿価額
帳簿価額(注7)のカッコ書き
帳簿価額(調整対象通算法人の株式にあつては、当該株式の修正帳簿価額を当該分割法人が当該直前に有していた当該調整対象通算法人の株式の数(出資にあつては、金額。ロにおいて同じ。)で除し、これに当該分割型分割により当該分割法人から当該分割承継法人に移転をした当該調整対象通算法人の株式の数を乗じて計算した金額)「調整対象通算法人の株式」とあるため、調整対象通算法人の株式がない場合は、関係ありません。
この帳簿価額は、分割型分割により移転する資産の帳簿価額です。ということは、移転資産の中に調整対象通算法人の株式がある場合に、カッコ書きの計算が必要になります。
当該株式の修正帳簿価額を当該分割法人が当該直前に有していた当該調整対象通算法人の株式の数で除し、これに当該分割型分割により当該分割法人から当該分割承継法人に移転をした当該調整対象通算法人の株式の数を乗じて計算した金額算式に変えてみます。数字を追加します。
株式の修正帳簿価額(10,000)÷分割法人が直前に有していた調整対象通算法人の株式数(100株)=1単位当たりの修正帳簿価額(@100)
1単位当たりの修正帳簿価額(@100)×分割型分割により分割法人から分割承継法人に移転した調整対象通算法人の株式数(30株)=3,000
修正した後の帳簿価額を「修正帳簿価額」といいます。
移転資産の中に調整対象通算法人の株式がある場合は、移転する前の帳簿価額ではなく、修正した後の帳簿価額(修正帳簿価額)で、イの金額(分母)とロの金額(分子)の計算が必要となります。
控除した金額
控除した金額(注9)のカッコ書き
帳簿価額の合計額を控除した金額(当該金額がイに掲げる金額を超える場合(イに掲げる金額が零に満たない場合を除く。)には、イに掲げる金額)控除した金額は、
1、移転資産の帳簿価額
2、移転負債の帳簿価額
3、移転する純資産価額 1-2の金額です。
この金額(移転する純資産価額)>イの金額(純資産価額)の場合は、イの金額(純資産価額)に変わります。
基準となる純資産価額を超えて、純資産価額が移転しないことになります。
(イの金額とロの金額が同額となり、移転割合が100%になります。)
ただし、イの金額(分母)<0の場合は、除外されています。
(0の場合は、除外されていません。)
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参考情報
数字を入れて検討しました。
1、一般的な場合
ロの金額(100)÷イの金額(1,000)
移転割合=100÷1,000=10%
2、ロの金額>イの金額の場合
ロの金額(1,000)÷イの金額(100)のため、1つ目のカッコ書きの要件を満たすため、金額が変わります。
移転割合=100÷100=100%
3、イの金額が‐1,000の場合
ロの金額(100)÷イの金額(‐1,000)のため、1つ目のカッコ書きの要件を満たしますが、イの金額が0未満のため除外されます。そのため、金額が変わりません。
そのまま計算しますが、割合の計算ルールで
・資本金等の額>0
・ロの金額(分子)>0
・イの金額(分母)≦0
の場合は、移転割合は100%になります。
資本金等の額が0以下の場合は、移転割合が0%になります。
4、イの金額が0の場合
ロの金額(100)÷イの金額(0)のため、1つ目のカッコ書きの要件を満たします。イの金額が0(0未満でない)のため、除外されません。そのため、金額が変わります。
ロの金額(100)→イの金額(0)÷イの金額(0)
そのまま計算しますが、割合の計算ルールで
・資本金等の額>0
・ロの金額(分子)>0
・イの金額(分母)≦0
の場合は、移転割合は、100%になります。
ロの金額が0に変わっているため、上記の要件を満たしません。資本金等の額が0以下の場合は、移転割合が0%になります。
4のケースを3のケースに合わせる場合は、「0未満を除く」ではなく「0以下を除く」となるのでしょう。
