初年度離脱開始子法人の有する資産_時価評価不要資産


今回は、通算制度の開始に伴う資産の時価評価損益の対象資産とならない「初年度離脱開始子法人の有する資産」を確認します。

初年度離脱開始子法人の有する資産(法令131条の15①8号)

規定を要約します。

子法人等(法法64条の9②)で親法人の最初通算事業年度終了日までにその親法人との間にその親法人による完全支配関係を有しなくなるもの(注1)の有する資産

注1、その最初通算事業年度開始日以後2月以内に通算制度の取りやめ等(法法64条の10⑥五・六)の事実が生ずることによりその完全支配関係を有しなくなるものに限るものとし、その親法人若しくはその親法人との間に完全支配関係がある子法人等を合併法人とする合併又は残余財産の確定によりその親法人による完全支配関係を有しなくなるものを除く。第5項において「初年度離脱開始子法人」といいます。


要約します。

初年度に通算グループから離脱する法人の資産については時価評価が不要です。離脱については、最初通算事業年度開始日以後2月以内に通算制度の取りやめ等の事実により完全支配関係を有しなくなる場合に限ります。グループ内合併又は残余財産の確定によりその親法人による完全支配関係を有しなくなるものを除きます。

(2月以内の意味は、原則の確定申告期限という意味でしょうか。原則の確定申告期限まで完全支配関係が続いていれば、その後、完全支配関係が解消したとしても時価評価をするタイミングがないと思います。)

具体例

B子法人を合併法人とする合併等があった場合、
C社は、親法人との完全支配関係が消滅します。

A親法人、3/31決算日
 |
B子法人(合併法人、7/1合併)
 |
C孫法人(被合併法人、6/30消滅、完全支配関係なし)

考え方を整理します。
1、2月以内の事実に限るものとし、その2月以内の合併等を除く。
2、2月以内の事実に限るものとし、2月以内に関係なく合併等を除く。

1が正しいような気がしますが、
2のような気もします。最初は2で読んでいました。

1の場合
最初通算事業年度終了日までに完全支配関係がない。
 最初通算事業年度開始日以後2月以内の合併解散等に限る。
  グループ内合併・残余財産確定のよる事実を除く。

2の場合
最初通算事業年度終了日までに完全支配関係がない。
 最初通算事業年度開始日以後2月以内の合併解散等に限る。
 グループ内合併・残余財産確定のよる事実を除く。

1の場合、例えば、

A親法人(事業年度4/1~3/31)
 |
B子法人(適格合併5/1、継続見込みあり)、D子法人(継続見込み無し)
 |                    |
C孫法人(合併解散4/30)、       E孫法人(通常解散4/30)

CもEも最初通算事業年度終了日までに完全支配関係がありません。

開始日以後2月以内に、
Cは通算子法人の合併解散(5号)、Eは通常解散(6号)が生じています。

Cは、Aとの完全支配関係があるBを合併法人とする合併により、
完全支配関係を有しなくなるため、除きます。

Eの通常解散が残ります。

この場合、Eが初年度離脱開始子法人になり、
時価評価は不要となると読めます。

Cは、通算効力発生時4/1~適格合併直前の時4/30まで完全支配関係が継続しているため、時価評価をしない法人になるのでしょう。

整理すると
時価評価しない法人はBとC、
時価評価する法人はDとE。
ただし、Eは初年度離脱開始子法人に該当し、
時価評価が不要になるのでしょう。

仮に、Dが9/30に解散すると、
最初通算事業年度終了日までに完全支配関係がありません。
開始日2月以内に通常解散(6号)が生じていません。
そのため、初年度離脱開始子法人に該当しないため、
時価評価が必要になるのでしょう。

まとめ

1、通算制度を使用する事業年度3か月前の時点で完全支配関係がある。
2、通算制度を開始する事業年度開始日で完全支配関係がある。
 → 4/1に通算承認を受けます。
3、継続見込みがない場合は時価評価が必要です。
 (継続見込みがある場合は時価評価が不要です。)
4、最初通算事業年度開始日以後2月以内に一定の事実が生じた場合。
5、法法64条の10⑥5号・6号事実により完全支配関係がなくなるものに限る。
6、グループ内合併・残余財産確定により完全支配関係がなくなるものを除く。

参考規定

通算承認の効力失効日

6 次の各号に掲げる事実が生じた場合には、通算法人(第一号から第四号までにあつてはこれらの号に規定する通算親法人及び他の通算法人の全てとし、第五号及び第六号にあつてはこれらの号に規定する通算子法人とし、第七号にあつては同号に規定する通算親法人とする。)については、通算承認は、当該各号に定める日から、その効力を失うものとする。
一から四 省略
 通算子法人の解散合併又は破産手続開始の決定による解散に限る。又は残余財産の確定 その解散の日の翌日(合併による解散の場合には、その合併の日)又はその残余財産の確定の日の翌日
 通算子法人が通算親法人との間に当該通算親法人による通算完全支配関係を有しなくなつたこと(前各号に掲げる事実に基因するものを除く。) その有しなくなつた日
七 省略

法人税法64条の10、通算制度の取りやめ等

初年度離脱開始子法人の有する資産は時価評価不要

(通算制度の開始に伴う資産の時価評価損益)
第百三十一条の十五 法第六十四条の十一第一項(通算制度の開始に伴う資産の時価評価損益)に規定する政令で定めるものは、次に掲げる資産とする。

八 法第六十四条の九第二項に規定する他の内国法人(以下この号において「他の内国法人」という。)で親法人(当該他の内国法人との間に完全支配関係(同条第一項に規定する政令で定める関係に限る。以下この条において同じ。)があるものに限る。)最初通算事業年度終了の日までに当該親法人との間に当該親法人による完全支配関係を有しなくなるもの(当該最初通算事業年度開始の日以後二月以内に法第六十四条の十第六項第五号又は第六号(通算制度の取りやめ等)に掲げる事実が生ずることにより当該完全支配関係を有しなくなるものに限るものとし、当該親法人若しくは当該親法人との間に完全支配関係がある他の内国法人を合併法人とする合併又は残余財産の確定により当該親法人による完全支配関係を有しなくなるものを除く。第五項において「初年度離脱開始子法人」という。)の有する資産

法人税法施行令131条の15

初年度離脱開始子法人の説明

(注1) 初年度離脱開始子法人とは、通算親法人となる法人の最初の事業年度終了の日までにその通算親法人となる法人との間に完全支配関係(通算除外法人(注3)及び外国法人が介在しない一定の関係に限ります。)を有しなくなる法人のうち、その最初の事業年度開始の日以後2月以内にその通算グループ内の通算法人による株式の売却等の一定の事実が生ずることによりその完全支配関係を有しなくなる法人(その通算グループ内の合併又は残余財産の確定によりその親法人による完全支配関係を有しなくなる法人を除きます。)をいいます(令131の15①八)。

グループ通算制度に関するQ&A、71ページ
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