医療費控除の医療費


今回は、医療費控除の医療費を確認します。

医療費控除は、所得からマイナスできる「所得控除」の1つです。個人事業者の「必要経費」ではありません。必要経費で処理してしまうと、誤って所得が少なく計算されるので注意が必要です。

2022/9/26、修正
実際の規定を確認しながら情報を整理したものですので、
わかりづらいところが多いと思います。

医療費控除の内容

医療費控除の対象者は、居住者(日本に住んでいる人)で、
本人、生計を一にする配偶者や親族です。

「生計を一」は、財布(生活費)が一緒という意味です。
同居していなくても問題ありません。

医療費控除の医療費は実際に支払ったものが対象です。未払いの医療費は対象になりません。クレジットカード払いは、カード会社が本人の代わりに支払っているため、支払った医療費として集計できます。

控除額の計算

支払った全額が控除の対象にはなりません。
医療費控除の控除額は、次の方法で計算します。

1、医療費(もらった保険金等を除く)の合計額
2、本人の所得☓5%(10万円限度)
3、1-2=医療費控除額

「医療費が10万円超えたら医療費控除できる」と言われていますが、
所得が少ない場合は10万円を超えていなくても医療費控除が可能です。

例えば、所得140万円であれば、医療費10万円の場合
1、医療費の金額
 10万円
2、本人の所得
 140万円×5%=7万円
3、控除額
 1-2=3万円の医療費控除が可能です。

過度な医療費を抑制するために、
医療費控除は200万円までとなっています。

細かいルール(政令)

医療費控除の医療費の基準は、全部で7項目です。

ポイントは、治療などを行う人・場所・行為が定められていることです。誰でも良いわけでも、どこでも良いわけでも、何でも良いわけでもありません。

さらに細かいルール(財務省令)

1項は「状況」を規定しています。1号は指定介護老人福祉施設などで発生した政令207条(7項目のこと)の提供する場合の状況です。何のこと?と思います。自分で判断できないので、老人福祉施設に支払ったときの領収書を確認しましょう。「医療費控除対象額」が記載されているはずです。

2号はメタボ健診にひっかかり、指導を受ける本人が高血圧症、脂質異常症、糖尿病と同等のような状態(ピンチな状態)を指しています。特定健康診査費用の取扱いについては、国税庁のタックスアンサーでも回答があります。

 特定健康診査の費用は、疾病の治療を伴うものではないので、原則として医療費控除の対象とはなりません。
 しかし、その特定健康診査の結果、高血圧症、脂質異常症又は糖尿病と同等の状態であると認められる基準に該当すると診断され、かつ、引き続きその特定健康診査を行った医師の指示に基づき特定健康指導が行われた場合には、その特定健康診査の費用(自己負担額)も、医療費控除の対象となります。

国税庁、タックスアンサー、No.1122 医療費控除の対象となる医療費

2項は「診療所(これに準ずるものとして財務省令で定めるものを含む。)」についてです。診療所の他に、指定介護老人福祉施設なども含まれます。指定介護老人福祉施設など収容されるための人的サービス費用についても医療費控除の対象となります。

実際には

法令は抽象的に書かれているため理解しづらいです。実際には色々な情報サイトや国税庁の情報(タックスアンサー、質疑応答事例、所得税基本通達など)で判断することが多いと思いますが、判断に迷ったら規定を確認してみましょう。

参考規定

(医療費控除)
第七十三条 居住者が、各年において、自己又は自己と生計を一にする配偶者その他の親族に係る医療費を支払つた場合において、その年中に支払つた当該医療費の金額(保険金、損害賠償金その他これらに類するものにより補てんされる部分の金額を除く。)の合計額がその居住者のその年分の総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額の合計額の百分の五に相当する金額(当該金額が十万円を超える場合には、十万円)を超えるときは、その超える部分の金額(当該金額が二百万円を超える場合には、二百万円)を、その居住者のその年分の総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額から控除する。
2 前項に規定する医療費とは、医師又は歯科医師による診療又は治療、治療又は療養に必要な医薬品の購入その他医療又はこれに関連する人的役務の提供の対価のうち通常必要であると認められるものとして政令で定めるものをいう。
3 第一項の規定による控除は、医療費控除という。

所得税法

(医療費の範囲)
第二百七条 法第七十三条第二項(医療費控除)に規定する政令で定める対価は、次に掲げるものの対価のうち、その病状その他財務省令で定める状況に応じて一般的に支出される水準を著しく超えない部分の金額とする。
一 医師又は歯科医師による診療又は治療
二 治療又は療養に必要な医薬品の購入
三 病院、診療所(これに準ずるものとして財務省令で定めるものを含む。)又は助産所へ収容されるための人的役務の提供
四 あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律(昭和二十二年法律第二百十七号)第三条の二(名簿)に規定する施術者(同法第十二条の二第一項(医業類似行為を業とすることができる者)の規定に該当する者を含む。)又は柔道整復師法(昭和四十五年法律第十九号)第二条第一項(定義)に規定する柔道整復師による施術
五 保健師、看護師又は准看護師による療養上の世話
六 助産師による分べんの介助
七 介護福祉士による社会福祉士及び介護福祉士法(昭和六十二年法律第三十号)第二条第二項(定義)に規定する喀痰かくたん吸引等又は同法附則第十条第一項(認定特定行為業務従事者に係る特例)に規定する認定特定行為業務従事者による同項に規定する特定行為

所得税法施行令

(医療費の範囲)
第四十条の三 令第二百七条(医療費の範囲)に規定する財務省令で定める状況は、次に掲げる状況とする。
一 指定介護老人福祉施設(介護保険法(平成九年法律第百二十三号)第四十八条第一項第一号(施設介護サービス費の支給)に規定する指定介護老人福祉施設をいう。次項において同じ。)及び指定地域密着型介護老人福祉施設(同法第四十二条の二第一項(地域密着型介護サービス費の支給)に規定する指定地域密着型サービスに該当する同法第八条第二十二項(定義)に規定する地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護の事業を行う同項に規定する地域密着型介護老人福祉施設をいう。次項において同じ。)における令第二百七条各号に掲げるものの提供の状況
二 高齢者の医療の確保に関する法律(昭和五十七年法律第八十号)第十八条第一項(特定健康診査等基本指針)に規定する特定健康診査の結果に基づき同項に規定する特定保健指導(当該特定健康診査を行つた医師の指示に基づき積極的支援(特定健康診査及び特定保健指導の実施に関する基準(平成十九年厚生労働省令第百五十七号。以下この号において「実施基準」という。)第八条第一項(積極的支援)に規定する積極的支援をいう。)により行われるものに限る。)を受ける者のうちその結果が次のいずれかの基準に該当する者のその状態
イ 実施基準第一条第一項第五号(特定健康診査の項目)に掲げる血圧の測定の結果が高血圧症と同等の状態であると認められる基準
ロ 実施基準第一条第一項第七号に規定する血中脂質検査の結果が脂質異常症と同等の状態であると認められる基準
ハ 実施基準第一条第一項第八号に掲げる血糖検査の結果が糖尿病と同等の状態であると認められる基準
2 令第二百七条第三号に規定する財務省令で定めるものは、指定介護老人福祉施設及び指定地域密着型介護老人福祉施設とする。

所得税法施行規則
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