収用交換等により取得した代替資産等の取得価額の計算


今回は、個人の「収用交換等により取得した代替資産等の取得価額の計算」を
確認してみましょう。

ポイントは、2つです。
1、譲渡資産の取得時期を代替資産等の取得の時期とする。
2、代替資産等の取得価額を修正する。

取得時期の引継ぎ

取得時期の引継ぎの具体例

A譲渡資産については、4年間所有して収用等された。
B代替資産については、4年間所有して譲渡した。

A譲渡資産の状況

取得  収用等
|----|
  4年間所有

B代替資産の状況

        取得   譲渡
         |----|
           4年間所有

引継ぎすると

譲渡資産の
取得日         代替資産の譲渡日
|-------------|
      8年

この場合、B代替資産の所有期間は実際の所有期間の4年ではなく、
A譲渡資産の取得時期を代替資産の取得時期として引継ぎます。
引き継いだ結果、所有期間は8年となり、
長期の譲渡所得(税率が低い)として計算することが可能です。

取得価額の修正

取得価額の修正方法は、3パターンです。

1、もらった補償金等の額>代替資産の取得価額
 → もらった補償金等が手元に残っている。

2、もらった補償金等の額<代替資産の取得価額
 → もらった補償金等に自己資金を追加して代替資産を取得した。

3、もらった補償金当の額=代替資産の取得価額
 → もらった補償金等と同額の代替資産を取得した。

補償金等が手元に残っている場合

譲渡資産の取得価額(取得費)に
「もらった補償金等で代替資産の取得に使用した割合」を
にかけます。

譲渡資産の取得価額(5000)×代替資産の取得割合(70%)
=代替資産の取得価額(3500)

代替資産の取得割合=
代替資産の取得価額(7000)/ もらった補償金等の額(10000)

譲渡資産の取得費 5000 × 70% = 3500
|---------|

もらった補償金等            10000
|---------|----×-----|
             代替資産7000

自己資金を追加した場合

譲渡資産の取得価額(取得費)に自己資金を追加した金額を加算します。

譲渡資産の取得価額(5000)+自己資金(12000-10000)
=代替資産の取得価額(7000)

譲渡資産の取得費 5000 + 2000 = 7000
|---------|

もらった補償金等            10000
|---------|----------|-----|
                         代替資産12000

補償金等と同額の代替資産を取得した場合

譲渡資産の取得価額(取得費)が代替資産の取得価額となります。

譲渡資産の取得価額(5000)=代替資産の取得価額(5000)

譲渡資産の取得費 5000 → そのまま引き継ぐ
|---------|

もらった補償金等            10000
|---------|----------|
                  代替資産10000

それぞれについて、譲渡費用がある場合は、
もらった補償金等から譲渡費用をマイナスします。
(もらった補償金等-譲渡費用=差引対価補償金)

参考規定など

規定が複雑なのでカッコ書きを省略します。

措置法33条、収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例
措置法33条の2、交換処分等に伴い資産を取得した場合の課税の特例
措置法33条の3、換地処分等に伴い資産を取得した場合の課税の特例

上記の特例の適用を受けた者(注1)が代替資産又は交換処分等、換地処分若しくは権利変換(注2)により取得した資産(代替資産等)について減価償却費(所法49条)を計算するとき、又は代替資産等につきその取得した日以後譲渡(注3)、相続、遺贈若しくは贈与があった場合において、事業所得の金額など(注4)を計算するときは、

ここまでが要件です。
(注)は省略しています。

政令に定めるところにより、上記3つの特例の適用を受けた資産(譲渡資産)の取得の時期をその代替資産等の取得の時期とし、譲渡資産の取得価額並びに設備費及び改良費の額の合計額(一定の場合において取得価額等)のうちその代替資産に対応する部分として政令で定めるところにより計算した金額をその取得価額とします。

ここまでが取扱い部分です。

(収用交換等により取得した代替資産等の取得価額の計算)
第三十三条の六 第三十三条、第三十三条の二第一項若しくは第二項又は第三十三条の三の規定の適用を受けた者(前条第一項の規定による修正申告書を提出し、又は同条第二項の規定による更正を受けたため、第三十三条(第三十三条の二第二項において準用する場合を含む。)の規定の適用を受けないこととなつた者を除く。)が代替資産又は交換処分等、換地処分若しくは権利変換(都市再開発法第八十八条第二項の規定による施設建築物の一部若しくは同条第五項の規定による施設建築物の一部についての借家権若しくは同法第百十条第三項若しくは第百十条の二第四項の規定による同法第百十条第二項(同法第百十条の二第二項において準用する場合を含む。)の施設建築物に関する権利、同法第百十八条の十一第一項(同法第百十八条の二十五の三第三項の規定により読み替えて適用される場合を含む。)の規定による建築施設の部分若しくは施設建築敷地若しくは施設建築物に関する権利、密集市街地における防災街区の整備の促進に関する法律第二百二十二条第二項の規定による防災施設建築物の一部若しくは同条第五項の規定による防災施設建築物の一部についての借家権若しくは同法第二百五十五条第四項若しくは第二百五十七条第三項の規定による同法第二百五十五条第二項(同法第二百五十七条第二項において準用する場合を含む。)の防災施設建築物に関する権利又はマンションの建替え等の円滑化に関する法律第七十一条第二項の規定による施行再建マンションの区分所有権(政令で定めるものに限る。)若しくは同条第三項の規定による施行再建マンションの部分についての借家権の取得を含む。第三号において同じ。)により取得した資産(以下この条において「代替資産等」という。)について所得税法第四十九条第一項の規定により償却費の額を計算するとき、又は代替資産等につきその取得した日以後譲渡(譲渡所得の基因となる不動産等の貸付けを含む。)、相続、遺贈若しくは贈与があつた場合において、事業所得の金額、山林所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額を計算するときは、政令で定めるところにより、第三十三条、第三十三条の二第一項若しくは第二項又は第三十三条の三の規定の適用を受けた資産(以下この項において「譲渡資産」という。)の取得の時期を当該代替資産等の取得の時期とし、譲渡資産の取得価額並びに設備費及び改良費の額の合計額(第三十六条の四、第三十七条の三、第三十七条の五及び第三十七条の六において「取得価額等」という。)のうち当該代替資産等に対応する部分として政令で定めるところにより計算した金額をその取得価額とする。

ただし、取得価額については、次の各号に掲げる場合に該当する場合には、その取得価額とされる金額に、当該各号に定める金額のうち政令で定めるところにより計算した金額をそれぞれ加算した金額を、その取得価額とする。
一 譲渡資産に係る収用交換等による譲渡に関して第三十三条第一項に規定する費用がある場合 当該費用に相当する金額
二 代替資産の取得価額が、譲渡資産に係る補償金等の額(当該資産の収用交換等による譲渡に要した費用がある場合には、第三十三条第一項に規定する政令で定める金額を控除した金額)を超える場合又は同条第三項(第三十三条の二第二項において準用する場合を含む。)の規定により読み替えられた第三十三条第一項に規定する取得価額の見積額(当該補償金等の額以下のものに限る。)を超える場合(前条第四項の規定による更正の請求をした場合を除く。) その超える金額
三 交換処分等、換地処分又は権利変換により取得した資産の価額が譲渡資産の価額を超え、かつ、その差額に相当する金額を交換処分等、換地処分又は権利変換に際して支出した場合 その支出した金額
四 代替住宅等を取得するために要した経費の額がある場合 当該経費の額

2 個人が第三十三条、第三十三条の二第一項若しくは第二項又は第三十三条の三第二項、第四項若しくは第六項の規定の適用を受けた場合には、代替資産等については、第十九条第一項各号に掲げる規定は、適用しない。

租税特別措置法33条の6

1項

ただし、取得価額については、次の各号に掲げる場合に該当する場合には、その取得価額とされる金額に、その各号に定める金額のうち政令で定めるところにより計算した金額をそれぞれ加算した金額を、その取得価額とします。

場合金額
1号、譲渡資産に係る収用交換等による譲渡に関して措置法33条1項の費用がある場合その費用に相当する金額
2号、代替資産の取得価額が、譲渡資産に係る補償金等の額()を超える場合又は同条(措置法33条)3項()の規定により読み替えられた措置法33条1項に規定する取得価額の見積額()を超える場合その超える金額
3号、交換処分等、換地処分又は権利変換により取得した資産の価額が譲渡資産の価額を超え、かつ、その差額に相当する金額を交換処分等、換地処分又は権利変換に際して支出した場合その支出した金額
4号、代替住宅等を取得するために要した経費の額がある場合その経費の額
取得価額に加算する金額

2項

個人が収用等の課税の繰延べを使用した場合には、代替資産等については、措置法19条1項各号の規定は、適用できません。

(特別償却等に関する複数の規定の不適用)
第十九条 個人の有する減価償却資産がその年において次に掲げる規定のうち二以上の規定の適用を受けることができるものである場合には、当該減価償却資産については、これらの規定のうちいずれか一の規定のみを適用する。
一 第十条の三から第十条の四の二まで、第十条の五の三、第十条の五の五、第十条の五の六又は第十一条から第十五条までの規定
二 前号に掲げるもののほか、減価償却資産に関する特例を定めている規定として政令で定める規定

租税特別措置法19条

措置法10条の3、中小事業者が機械等を取得した場合の特別償却又は所得税額の特別控除など

代替資産等の取得価額の計算

2 法第三十三条の六第一項本文の規定により同項に規定する代替資産等(以下この条において「代替資産等」という。)の取得価額とされる金額は、財務省令で定めるところにより、次の各号に掲げる資産の区分に応じ当該各号に定める金額とする。
一 代替資産 当該代替資産の取得価額(当該取得価額が法第三十三条の六第一項に規定する譲渡資産(以下この項において「譲渡資産」という。)の法第三十三条の四第一項に規定する収用交換等による譲渡により取得した補償金、対価又は清算金の額(当該譲渡に要した費用の金額がある場合には、当該費用の金額のうち第二十二条第三項又は第二十二条の二第四項の規定により計算した金額を控除した金額)を超える場合には、その超える金額を控除した金額)又は法第三十三条第三項(法第三十三条の二第二項において準用する場合を含む。)において準用する法第三十三条第一項に規定する取得価額の見積額(その額が当該代替資産の取得価額と当該補償金、対価又は清算金の額とのいずれにも満たず、かつ、法第三十三条の五第四項の規定による更正の請求をしない場合における当該見積額に限る。)が当該補償金、対価又は清算金の額のうちに占める割合を、当該譲渡資産の取得価額並びに設備費及び改良費の額の合計額(当該補償金、対価又は清算金とともに交換取得資産、換地取得資産、対償取得資産又は代替住宅等を取得した場合には、当該交換取得資産、換地取得資産、対償取得資産又は代替住宅等につき次号、第三号、第五号又は第九号の規定により計算した金額を控除した金額)に乗じて計算した金額

以下省略

租税特別措置法施行令22条の6
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