収用交換等の場合の譲渡所得等の特別控除_その2


今回は、個人の「収用交換等の場合の譲渡所得等の特別控除」の手続きなどを確認します。

収用等の特別控除が使用できない場合

収用等の特別控除が使用できない場合は次の3つです。

1、6月以内に譲渡しない場合
収用等の特別控除については、収用等の課税の繰延べにはない、6月以内譲渡要件があります。収用等の特別控除を使用するためには、「買取りの申し出があった日」から6月以内に土地等を譲渡する必要があります。

2、複数年で譲渡があった場合
1つの収用等の事業で2以上の資産が収用される場合、例えば、A資産を2022年に譲渡、B資産を2023年に譲渡したときは、A資産については課税の繰延べと特別控除のいずれかを選択できますが、B資産については収用等の特別控除が選択できません。年を跨ぐケースだと注意が必要ですね。

 収用等        1/1
-×-----×-----|-----×------
      A譲渡         B譲渡
    5000万円選択〇      5000万円選択×

1事業につき特別控除は5000万円までです。

3、別の人に譲渡した場合
収用等については、土地等の買取りの申し出があります。申し出を受けたAが譲渡する場合は収用等の特別控除を使用できますが、申し出を受けたA以外の人が譲渡する場合は収用等の特別控除が使用できません。

ただし、申し出を受けたAが死亡した場合、Aから土地等を取得した人が譲渡した場合は収用等の特別控除が使用できます。

申し出を受けた人A ← 買取り等の申し出 ← 公共事業施行者

↓ 収用の対象となる土地等の譲渡

B = 収用等の特別控除は×(Aが死亡した場合は〇)

6月以内に譲渡しなくても特別控除が使用できる場合

原則として、申し出があった日から6月が収用等の特別控除の期限となりますが、法令等により6月以内に譲渡できない場合は、6月以内でなくても収用等の特別控除が使用できます。

6月を経過しても収用等の特別控除が使用できる場合

  1. 土地収用法第15条の7第1項の仲裁の申請(6月経過日以前限定)による仲裁判断があった場合
  2. 土地収用法第46条の2第1項の補償金の支払の請求があった場合
  3. 農地法3条1項、第5条1項の許可が必要な場合
  4. 農地法第5条第7号の届出をする場合
確定申告義務がある人の手続き

収用等の特別控除の手続きは、少し特殊です。

収用等の特別控除を使用する場合においても
確定申告書の提出義務がある人については、
1、確定申告書・修正申告書に特別控除を使用する旨を記載
2、買取り等の申し出があったことを証する書類の添付
の2点が必要です。

収用等の特別控除を使用する場合に、確定申告書の提出義務がない人については手続き要件がありません。自動的に、収用等の特別控除が使用されます。

参考規定

4 第一項の規定は、同項の規定の適用があるものとした場合においてもその年分の確定申告書を提出しなければならない者については、同項の規定の適用を受けようとする年分の確定申告書又は同項の修正申告書に、同項の規定の適用を受けようとする旨の記載があり、かつ、同項の規定の適用を受けようとする資産につき公共事業施行者から交付を受けた前項の買取り等の申出があつたことを証する書類その他の財務省令で定める書類の添付がある場合に限り、適用する。

租税特別措置法33条の4
利子税の免除

所得税には、山林所得と譲渡所得について延納(税金の分割払い)が認められています。延納については利子税が発生しますが、収用等の特別控除により所得税が減少する場合、利子税についても特別控除に対応する部分が免除されます。

7 所得税法第百三十二条第一項に規定する延納の許可に係る所得税の額の計算の基礎となつた山林所得の金額又は譲渡所得の金額のうちに第一項の規定の適用を受けた資産の譲渡に係る部分の金額がある場合には、当該延納に係る同法第百三十六条の規定による利子税のうち当該譲渡に係る山林所得の金額又は譲渡所得の金額に対する所得税の額に対応する部分の金額として政令で定めるところにより計算した金額は、免除する。

租税特別措置法33条の4
参考規定

3 第一項の規定は、次の各号に掲げる場合に該当する場合には、当該各号に定める資産については、適用しない。
一 第一項に規定する資産の収用交換等による譲渡が、当該資産の買取り、消滅、交換、取壊し、除去又は使用(以下この条において「買取り等」という。)の申出をする者(以下この条において「公共事業施行者」という。)から当該資産につき最初に当該申出のあつた日から六月を経過した日(当該資産の当該譲渡につき、土地収用法第十五条の七第一項の規定による仲裁の申請(同日以前にされたものに限る。)に基づき同法第十五条の十一第一項に規定する仲裁判断があつた場合、同法第四十六条の二第一項の規定による補償金の支払の請求があつた場合又は農地法(昭和二十七年法律第二百二十九号)第三条第一項若しくは第五条第一項の規定による許可を受けなければならない場合若しくは同項第七号の規定による届出をする場合には、同日から政令で定める期間を経過した日)までにされなかつた場合 当該資産
二 一の収用交換等に係る事業につき第一項に規定する資産の収用交換等による譲渡が二以上あつた場合において、これらの譲渡が二以上の年にわたつてされたとき 当該資産のうち、最初に当該譲渡があつた年において譲渡された資産以外の資産
三 第一項に規定する資産の収用交換等による譲渡が当該資産につき最初に買取り等の申出を受けた者以外の者からされた場合(当該申出を受けた者の死亡によりその者から当該資産を取得した者が当該譲渡をした場合を除く。) 当該資産

5 税務署長は、確定申告書若しくは第一項の修正申告書の提出がなかつた場合又は前項の記載若しくは添付がない確定申告書若しくは第一項の修正申告書の提出があつた場合においても、その提出又は記載若しくは添付がなかつたことについてやむを得ない事情があると認めるときは、当該記載をした書類及び前項の財務省令で定める書類の提出があつた場合に限り、第一項の規定を適用することができる。

6 公共事業施行者は、財務省令で定めるところにより、第三項の買取り等の申出に係る資産の全部につき第四項に規定する買取り等の申出があつたことを証する書類の写し及び当該資産の買取り等に係る支払に関する調書を、その事業の施行に係る営業所、事業所その他の事業場の所在地の所轄税務署長に提出しなければならない。

租税特別措置法33条の4
PAGE TOP