収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例_先行取得


今回は、個人が先行取得した場合の
「収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例」を確認してみましょう。

先行取得は、先に代替資産を取得して、
後から収用等により補償金等を受け取った場合をいいます。

原則の取扱い

    土地等の譲渡+補償金等取得
1/1     (課税の繰延べ)      取得  12/31
|------×-------------×----|--→

先行取得の取扱い

               土地等の譲渡+補償金等取得
先行取得        1/1    (課税の繰延べ)
--×---------|------×----→

内容

要件は、次の2つです。

  1. 収用等の要件に該当する場合(15個の限定列挙、原則と同じ)
  2. その個人が収用等があった年の前年中に代替資産を取得したとき

原則との違いは、代替資産の取得時期が本年か前年かです。
前年であれば先行取得となります。

前年中は、限定されています。

前年中のうち
その収用等によりその個人の有する資産の譲渡をすることとなることが明らかとなった日「以後」の期間に限ります。

先行取得の取扱い
                          補償金等取得
 収用等が明らか 代替資産(見込み)   1/1    (課税の先送り)
--×---------×---------|------×----→

たまたま、何も知らずに取得した資産の場合は、
後から補償金等を受け取ったとしても特例が使えません。

原則は前年中(1年前)の取得に限定されていますが、
事情があるときは、2年前であっても特例が使用できます。

参考規定

2 前項の規定は、個人が同項各号に掲げる場合に該当することとなつた場合において、当該個人が、収用等のあつた日の属する年の前年中(当該収用等により当該個人の有する資産の譲渡をすることとなることが明らかとなつた日以後の期間に限る。)に代替資産となるべき資産の取得をしたとき(当該代替資産となるべき資産が土地等である場合において、工場等の建設に要する期間が通常一年を超えることその他の政令で定めるやむを得ない事情があるときは、政令で定める期間内に取得をしたとき)について準用する。この場合において、同項中「その選択により」とあるのは、「その選択により、政令で定めるところにより」と読み替えるものとする。

租税特別措置法33条、収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例
事情がある場合

例えば、工場等を建てるための宅地の造成、工場等の建設・移転に要する期間が1年を超える場合です。

特別な事情がある場合は、1年ではなく、3年となります。

先行取得の取扱い(事情がある場合)

  前年以前3年 前年以前2年   前年       補償金等取得
1/1     1/1      1/1      1/1  (課税の繰延べOK)
|------|------|------|------×----→
  ↑先行取得

ただし、原則と同じで、その収用等によりその個人の有する資産の譲渡をすることとなることが明らかとなった日「以後」の期間に限ります。

注意点
収用等のあった日から過去1年(3年)ではなく、年単位で計算します。
そのため、実際の期間で計算すると1年超(3年超)となる場合があります。

参考規定

17 法第三十三条第二項に規定する政令で定めるやむを得ない事情は、工場、事務所その他の建物、構築物又は機械及び装置で事業の用に供するもの(以下この項及び第十九項第二号において「工場等」という。)の敷地の用に供するための宅地の造成並びに当該工場等の建設及び移転に要する期間が通常一年を超えると認められる事情その他これに準ずる事情とし、同条第二項に規定する政令で定める期間は、同項に規定する収用等のあつた日の属する年の前年以前三年の期間(当該収用等により同項の個人の有する資産の譲渡をすることとなることが明らかとなつた日以後の期間に限る。)とする。

租税特別措置法施行令22条、収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例
先行取得した場合の調整計算

先行取得した資産が減価償却資産で、
必要経費として算入したものがあるときの取扱いです。

例えば、先行取得資産100万円、初年度の減価償却費(10万円)の場合、
初年度の計算が済んだ時点では、補償金等を受け取っていないため、
課税の繰延べの計算ができません。

後で補償金等を受け取ってから、具体的な課税の繰延べの計算が可能となりますが、既に初年度の減価償却費の計算が済んでいるため、調整計算が必要となります。

この調整計算による差額については、譲渡資産の譲渡があったものとして、
不動産所得、事業所得、山林所得、雑所得の収入金額となります。

例えば、
課税の繰延べ前の減価償却費 10万円
課税の繰延べ後の減価償却費 8万円
差額2万円については、上記4つのいずれかの収入となります。

参考規定

18 法第三十三条第二項において準用する同条第一項の規定を適用する場合において、同条第二項に規定する代替資産となるべき資産が減価償却資産であり、かつ、当該代替資産となるべき資産につき収用等のあつた日前に既に必要経費に算入された所得税法第四十九条第一項の規定による償却費の額があるときは、当該収用等により取得した法第三十三条第一項に規定する補償金、対価又は清算金の額のうち、当該償却費の額当該償却費の額の計算の基礎となつた期間につき法第三十三条の六の規定を適用した場合に計算される所得税法第四十九条第一項の規定による償却費の額との差額に相当する金額については、譲渡資産の譲渡があつたものとし、当該譲渡があつたものとされる金額は、不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得に係る収入金額とする。

租税特別措置法施行令22条、収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例
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