収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例_翌年以後取得


今回は、個人の「収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例」のうち、翌年以後に取得した場合を確認してみましょう。

原則は、代替資産の取得と補償金等の取得が同じ年です。
先行取得は、前年に代替資産の取得、補償金等の取得が本年です。
今回の特例は、補償金等の取得が本年で、代替資産の取得が翌年以後です。

先行取得    本年取得   翌年以後取得←今回はこれ
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内容

「収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例」は、個人が収用等の要件に該当した場合において、その個人が受け取った補償金等で「取得指定期間」内に代替資産を取得する見込みがあるときに使用できます。

本年中に代替資産を取得していない場合であっても、将来に代替資産を取得する見込みがあれば、課税の繰延べが使用できる特例です。

取得指定期間

収用等のあったの日の属する年の「翌年」1月1日から
収用等のあった「日」以後2年を経過した日までの期間をいいます。

開始日は翌年1月1日ですが、終了日は収用等のあった「日」から起算します。

 収用等  翌年1/1    翌翌年1/1  
-×-----|-------|-------|
 |    スタート
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                2年経過日

居住用財産の特別控除などの規定は、3年目の年末まで特例が使えますが、
収用等の特例については年末基準ではないため注意が必要です。

2年経過日についても特殊な事情がある場合は、延長されます。

特殊な事情

その収用等に係る事業が全部又は一部が完了しないこと、
工場等の建設に要する期間が「通常」2年を超えること
その他やむを得ない事情があるため、
その期間内に代替資産の取得が困難である場合で
政令で定める場合には、
その代替資産については、収用年の翌年1月1日から
政令で定める日まで「取得指定期間」が延長されます。

原則は2年、事情があれば延長されます。

取得指定期間が延長される場合

パターンは2つ。

1、収用等の事業が完了しないため2年以内に代替資産を取得することが困難で、収用等の事業完了後に代替資産を取得することが確実な場合

取得する資産によって延長期間が異なります。

イ、収用等の事業の施行地区内にある土地等
 その収用等があった日から4年を経過した日(注1)
 から6月を経過した日

ロ、イの土地等の上にある建物や構築物
 その収用等があった日から4年を経過した日(注2)
 から6月を経過した日

2、宅地の造成、工場等の建設などの期間が通常2年を超えるため、2年以内に代替資産を取得することが困難で、その収用等のあった日から3年を経過した日までにその資産を取得することが確実な場合

その資産を取得することができることとなると認められる日まで
取得指定期間が延長されます。

収用等の事業が完了しない場合の取得指定期間の延長

1、4年以内に、土地等を取得したり、敷地として使用できる場合は、その取得や使用できると認められる日となります。無条件で4年にはなりません。

2、収用等の事業が完了しないことにより、4年以内に代替資産を取得できない場合で税務署長の承認を受けたときは、同日(4年経過日)から4年を経過する日までの間で、税務署長が認定した日まで取得指定期間が延長されます。

取得指定期間の延長の手続き

収用等があった日後4年を経過した日から2月以内に
一定の書類を税務署長に提出する必要があります。

取得指定期間延長の原則は4年6月ですが、
取得指定期間延長の承認申請は4年2月ですので、
注意が必要です。

原則

収用等  2年経過日
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特殊な事情がある場合の原則

収用等     4年経過日   6月が期限
 |--------|-------|
 期間内で認められる日


4年以内に収用等の事業が完了することが前提ですが、
期間内に事業が完了しない場合は、延長申請が可能です。

申請期限

収用等     4年経過日 2月以内が申請期限
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承認を受けた場合

収用等     4年経過日           4年経過日
 |--------|---------------|-------|
             延長期間内の税務署長の認定日 から 6月が期限

2の宅地の造成等の場合については、申請による延長制度がありません。
1の延長については、収用等が完了しないため、認められているのでしょうね。

読み替え規定

課税の繰延べは3パターンあります。

1、原則による代替資産の取得
2、先行取得
3、今回の翌年以後取得

原則により代替資産を取得した場合、先行取得をした場合は、課税の繰延べの重複適用となるため、今回の翌年以後取得の計算上、「補償金等の額」から「先に取得した資産の取得金額」をマイナスします。

参考規定

翌年以後取得の特例

3 第一項の規定は、個人が同項各号に掲げる場合に該当した場合において、その者が当該各号に規定する補償金、対価又は清算金の額の全部又は一部に相当する金額をもつて取得指定期間(収用等のあつた日の属する年の翌年一月一日から収用等のあつた日以後二年を経過した日までの期間(当該収用等に係る事業の全部又は一部が完了しないこと、工場等の建設に要する期間が通常二年を超えることその他のやむを得ない事情があるため、当該期間内に代替資産の取得をすることが困難である場合で政令で定める場合には、当該代替資産については、同年一月一日から政令で定める日までの期間)をいう。)内に代替資産の取得をする見込みであるときについて準用する。この場合において、同項中「の額(」とあるのは「の額(第三項に規定する収用等のあつた日の属する年において当該補償金、対価若しくは清算金の額の一部に相当する金額をもつて同項に規定する代替資産の取得をした場合又は同項に規定する収用等に係る次項に規定する前年中に同項に規定する代替資産となるべき資産の取得をした場合には、これらの資産の取得価額を控除した金額。以下この項において同じ。)(」と、「取得価額」とあるのは「取得価額の見積額」と読み替えるものとする。

租税特別措置法33条、収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例

特殊な事情がある場合の取得指定期間の特例

19 法第三十三条第三項に規定する政令で定める場合は、次の各号に掲げる場合とし、同項に規定する政令で定める日は、当該各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める日とする。

一 収用等に係る事業の全部又は一部が完了しないため、当該収用等のあつた日以後二年を経過した日までにイ又はロに掲げる資産を代替資産として取得をすることが困難であり、かつ、当該事業の全部又は一部の完了後において当該資産の取得をすることが確実であると認められる場合 それぞれイ又はロに定める日
イ 当該収用等に係る事業の施行された地区内にある土地又は当該土地の上に存する権利(当該事業の施行者の指導又はあつせんにより取得するものに限る。) 当該収用等があつた日から四年を経過した日同日前に当該土地又は土地の上に存する権利の取得をすることができると認められる場合には、当該取得をすることができると認められる日とし、当該収用等に係る事業の全部又は一部が完了しないことにより当該四年を経過した日までに当該取得をすることが困難であると認められる場合において財務省令で定めるところにより納税地の所轄税務署長の承認を受けたときは、同日から四年を経過する日までの期間内の日で当該取得をすることができる日として当該税務署長が認定した日とする。)から六月を経過した日
ロ 当該収用等に係る事業の施行された地区内にある土地又は当該土地の上に存する権利を有する場合に当該土地又は当該権利の目的物である土地の上に建設する建物又は構築物 当該収用等があつた日から四年を経過した日同日前に当該土地又は当該権利の目的物である土地を当該建物又は構築物の敷地の用に供することができると認められる場合には、当該敷地の用に供することができると認められる日とし、当該収用等に係る事業の全部又は一部が完了しないことにより当該四年を経過した日までに当該敷地の用に供することが困難であると認められる場合において財務省令で定めるところにより納税地の所轄税務署長の承認を受けたときは、同日から四年を経過する日までの期間内の日で当該敷地の用に供することができる日として当該税務署長が認定した日とする。)から六月を経過した日

二 収用等のあつたことに伴い、工場等の建設又は移転を要することとなつた場合において、当該工場等の敷地の用に供するための宅地の造成並びに当該工場等の建設及び移転に要する期間が通常二年を超えるため、当該収用等のあつた日以後二年を経過した日までに当該工場等又は当該工場等の敷地の用に供する土地その他の当該工場等に係る資産を代替資産として取得をすることが困難であり、かつ、当該収用等のあつた日から三年を経過した日までに当該資産の取得をすることが確実であると認められるとき 当該資産の取得をすることができることとなると認められる日

租税特別措置法施行令22条、収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例

収用等の事業が完了しない場合の取取指定期間の延長の手続き

4 施行令第二十二条第十九項第一号イ又はロに規定する所轄税務署長の承認を受けようとする者は、これらの規定に規定する収用等があつた日後四年を経過した日から二月以内に、次に掲げる事項を記載した申請書にこれらの規定に規定する事業の施行者の当該承認を受けようとする者がこれらの規定に掲げる資産を同号に規定する代替資産として同号イに規定する取得をすること又は同号ロに規定する敷地の用に供することができることとなると認められる年月の記載がされた書類を添付して、納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。
一 申請者の氏名及び住所
二 法第三十三条第一項に規定する譲渡した資産について引き続き同項の規定の適用を受けようとする旨
三 当該四年を経過した日までに当該取得をすること又は当該敷地の用に供することができないこととなつた事情の詳細
四 法第三十三条第三項に規定する収用等のあつた年月日
五 法第三十三条第三項に規定する補償金、対価又は清算金の額
六 法第三十三条の五第一項第二号に掲げる場合に該当することとなつたとしたならば同項に規定する修正申告書の提出により納付すべきこととなる税額及びその計算に関する明細
七 当該取得をする予定の当該代替資産の種類、構造及び規模並びにその取得予定年月日

租税特別措置法施行規則14条
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