収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例_手続きなど


今回は、個人の「収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例」のうち、手続き規定等を確認してみましょう。

収用等の課税の繰延べのまとめ

収用等の課税の繰延べ(措置法33条)の規定をまとめます。

1項、収用等の課税の繰延べ
2項、先行取得
3項、代替資産を取得する見込みがある場合の課税の繰延べ
4項、みなし対価補償金
5項、補償金は名目を問わない。
6項、確定申告の手続き
7項、確定申告する人の義務
8項、取得指定期間の特例

今回は5項から8項までを確認します。

補償金は名目を問わない。

規定を先に確認します。

 第一項第一号、第五号、第七号又は第八号に規定する補償金の額は、名義がいずれであるかを問わず、資産の収用等の対価たる金額をいうものとし、収用等に際して交付を受ける移転料その他当該資産の収用等の対価たる金額以外の金額を含まないものとする。

租税特別措置法33条、収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例

補償金は名義を問いません。

補償金の額は、

収用等に際して交付を受ける移転料その他当該資産の収用等の対価たる金額以外の金額
その他について

を含みません。

「収用等に際して交付を受ける移転料」も補償金の額に含まないし、その他
「当該資産の収用等の対価たる金額以外の金額」も補償金の額に含みません。

広義の補償金
 1、収用等に際して交付を受ける移転料→含まない
  
 2ー1、資産の収用等の対価たる金額以外の金額→含まない
 2-2、資産の収用等の対価たる金額

手続き

6項の手続きと7項の義務規定を確認します。

6項の手続き

1項、収用等の課税の繰延べ
2項、先行取得
3項、代替資産を取得する見込みがある場合の課税の繰延べ

これらの規定は、課税の繰延べをしようとする年分の確定申告書に、特例を受ける旨を記載し、計算書類と一定の書類を添付しない場合には、使用できません。

例外
やむを得ない事情がある場合は、
1、その事情を記載した書類
2、計算明細書
3、一定の書類
があったときは、使用できます。

7項の義務規定

6項には政令規定がなく、7項には政令規定があります。

法令を並べてみます。

措置法

 第一項から第三項までの規定は、これらの規定の適用を受けようとする年分の確定申告書に、これらの規定の適用を受けようとする旨を記載し、かつ、これらの規定による山林所得の金額又は譲渡所得の金額の計算に関する明細書その他財務省令で定める書類を添付しない場合には、適用しない。ただし、当該申告書の提出がなかつたこと又は当該記載若しくは添付がなかつたことにつき税務署長においてやむを得ない事情があると認める場合において、当該記載をした書類並びに当該明細書及び財務省令で定める書類の提出があつたときは、この限りでない。

 前項に規定する確定申告書を提出する者は、政令で定めるところにより、代替資産の明細に関する財務省令で定める書類を納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。

租税特別措置法33条、収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例

政令

26 法第三十三条第六項に規定する確定申告書を提出する者は、同条第七項に規定する財務省令で定める書類を、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める日(同条第六項ただし書の規定に該当してその日後において同項ただし書に規定する書類を提出する場合には、その提出の日)までに納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。
一 法第三十三条第一項(同条第二項において準用する場合を含む。)の規定の適用を受ける場合 当該確定申告書の提出の日
二 法第三十三条第三項において準用する同条第一項の規定の適用を受ける場合 代替資産の取得をした日から四月を経過する日

租税特別措置法33条、収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例

施行規則

 法第三十三条第六項(法第三十三条の二第三項において準用する場合を含む。)に規定する財務省令で定める書類は、次の各号の区分に応じそれぞれ当該各号に定める書類(法第三十三条第三項において準用する同条第一項の規定の適用を受ける場合には、当該書類並びに同項に規定する取得をする予定の同項に規定する代替資産についての取得予定年月日及び当該代替資産の取得価額の見積額その他の明細を記載した書類(次項において「代替資産明細書」という。))とする。

 土地収用法(昭和二十六年法律第二百十九号)の規定に基づいて収用若しくは使用された資産又は同法に規定された収用委員会の勧告に基づく和解により買い取られ若しくは使用された資産 当該収用若しくは使用に係る裁決書又は当該和解調書の写し

以下省略

租税特別措置法施行規則14条、収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例

 法第三十三条第七項に規定する財務省令で定める書類は、同項に規定する代替資産に関する登記事項証明書その他当該代替資産の同条第一項に規定する取得をした旨を証する書類とする。

租税特別措置法施行規則14条、収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例

関係性がわかりにくいため、並べ替えます。

措置法施行令施行規則
 第一項から第三項までの規定は、これらの規定の適用を受けようとする年分の確定申告書に、これらの規定の適用を受けようとする旨を記載し、かつ、これらの規定による山林所得の金額又は譲渡所得の金額の計算に関する明細書その他財務省令で定める書類を添付しない場合には、適用しない。ただし、当該申告書の提出がなかつたこと又は当該記載若しくは添付がなかつたことにつき税務署長においてやむを得ない事情があると認める場合において、当該記載をした書類並びに当該明細書及び財務省令で定める書類の提出があつたときは、この限りでない。 法第三十三条第六項(法第三十三条の二第三項において準用する場合を含む。)に規定する財務省令で定める書類は、次の各号の区分に応じそれぞれ当該各号に定める書類(法第三十三条第三項において準用する同条第一項の規定の適用を受ける場合には、当該書類並びに同項に規定する取得をする予定の同項に規定する代替資産についての取得予定年月日及び当該代替資産の取得価額の見積額その他の明細を記載した書類(次項において「代替資産明細書」という。))とする。

以下省略
 前項に規定する確定申告書を提出する者は、政令で定めるところにより、代替資産の明細に関する財務省令で定める書類を納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。26 法第三十三条第六項に規定する確定申告書を提出する者は、同条第七項に規定する財務省令で定める書類を、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める日(同条第六項ただし書の規定に該当してその日後において同項ただし書に規定する書類を提出する場合には、その提出の日)までに納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。
一 法第三十三条第一項(同条第二項において準用する場合を含む。)の規定の適用を受ける場合 当該確定申告書の提出の日
二 法第三十三条第三項において準用する同条第一項の規定の適用を受ける場合 代替資産の取得をした日から四月を経過する日
 法第三十三条第七項に規定する財務省令で定める書類は、同項に規定する代替資産に関する登記事項証明書その他当該代替資産の同条第一項に規定する取得をした旨を証する書類とする。
手続き規定のまとめ

6項は、本年分の確定申告書に関する手続きです。
7項は、確定申告書を提出する人の義務規定です。

7項の手続きでは、
1、原則の規定と先行取得
2、事後取得
で、代替資産の明細に関する財務省令書類(登記事項証明書、取得証明書)の提出期限が異なります。

事後取得だと、代替資産を取得していないため、
本年分の確定申告書の提出期限までに書類が提出できないからです。

事後取得の場合は、
代替資産を取得してから4月以内に書類を提出する必要があります。

まとめます。

措置法施行令施行規則
6項、手続き
確定申告書+
・特例を使用する旨
・計算書類
・財務省令書類
財務省令書類は
各号列挙
7項、義務規定
政令(詳しくは政令に規定)により、代替資産の明細に関する書類(詳しくは施行規則に規定)を提出する義務がある。
代替資産の明細に関する書類(詳しくは施行規則に規定)を提出期限までに提出する義務がある。

1号、原則取得と先行取得
確定申告書の提出の日

2号、事後取得
代替資産取得後4月以内
財務省令書類は
・登記事項証明書
・代替資産取得証明書
まとめ
特定非常災害の取得指定期間の延長

やむを得ない事情が「特定非常災害」である場合は、
事後取得の取得指定期間が追加延長することができます。

手続きの要件

その取得指定期間の初日から
その取得指定期間の末日「後」2年以内の日で政令で定める日まで
の間に代替資産を取得する見込みで、かつ、税務署長の承認を受けること

延長される期間

取得指定期間の初日からその政令で定める日までの期間

参考規定

 個人が、特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律第二条第一項の規定により特定非常災害として指定された非常災害に基因するやむを得ない事情により、代替資産の第三項に規定する取得指定期間内における取得をすることが困難となつた場合において、当該取得指定期間の初日から当該取得指定期間の末日後二年以内の日で政令で定める日までの間に代替資産の取得をする見込みであり、かつ、財務省令で定めるところにより納税地の所轄税務署長の承認を受けたときは、同項及び第三十三条の五の規定の適用については、同項に規定する取得指定期間は、当該初日から当該政令で定める日までの期間とする。

租税特別措置法33条、収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例

27 法第三十三条第八項に規定する政令で定める日は、同条第三項に規定する取得指定期間の末日の翌日から起算して二年以内の日で代替資産の取得をすることができるものとして同条第八項の所轄税務署長が認定した日とする。

租税特別措置法施行令22条、収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例

期限は追加された2年間で税務署長が認定した日までとなります。この手続きは、取得指定期間の末日の属する年の翌年3月15日までにする必要があります。

参考規定

 法第三十三条第八項に規定する所轄税務署長の承認を受けようとする個人は、同項に規定する取得指定期間の末日の属する年の翌年三月十五日(同日が法第三十三条の五第一項に規定する提出期限後である場合には、当該提出期限)までに、法第三十三条第一項に規定する譲渡した資産について同条第八項の承認を受けようとする旨、同項の特定非常災害として指定された非常災害に基因するやむを得ない事情により代替資産(同条第一項に規定する代替資産をいう。以下この項において同じ。)の取得(同条第一項に規定する取得をいう。以下この項において同じ。)をすることが困難であると認められる事情の詳細、取得をする予定の代替資産の取得予定年月日及びその取得価額の見積額並びに当該所轄税務署長の認定を受けようとする年月日その他の明細を記載した申請書に、当該非常災害に基因するやむを得ない事情により代替資産の取得をすることが困難であると認められる事情を証する書類を添付して、当該所轄税務署長に提出しなければならない。ただし、税務署長においてやむを得ない事情があると認める場合には、当該書類を添付することを要しない。

租税特別措置法施行規則14条、収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例

申請書の提出が必要です。

 前項に規定する個人が同項の所轄税務署長の承認を受けた場合には、施行令第二十二条第二十七項に規定する所轄税務署長が認定した日は当該承認において税務署長が認定した日とする。

租税特別措置法施行規則14条、収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例

申請が承認された場合であっても、認定日は、
個人の希望として認定を受けようとする年月日ではなく、
税務署長が認定した日とするという意味です。
個人の希望日は関係ありません。

インボイス関係でも登録希望日の論点がありましたね。

PAGE TOP