受取配当等の益金不算入


今回は、法人税の「受取配当等の益金不算入」について確認します。
(令和4年4月以後開始事業年度から一部改正があります。)

益金不算入の理由

法人が受け取った配当金は収益として課税されます。
法人が支払った配当金については費用にならず、法人税の2重課税が生じます。2重課税を回避するために、一定の要件を満たす配当を益金不算入とする特例を受取配当等の益金不算入といいます。

益金不算入となる配当

実務上よく見る配当金が下記1の「剰余金の配当」です。
ある法人の株式を取得して受け取る配当金等が、剰余金の配当に該当します。

  1. 剰余金の配当、利益の配当、剰余金の分配
  2. 投資信託及び投資法人に関する法律に規定する金銭の分配
  3. 資産の流動化に関する法律に規定する金銭の分配
  4. 特定株式投資信託(一定のものを除く)の収益の分配
益金不算入とならない配当

次の配当金については、益金不算入の対象となりません。
他に特例が適用されない場合、受け取った配当金は収益として課税されます。

  • 外国法人から受けるもの
  • 公益法人等や人格のない社団等から受けるもの
  • 適格現物分配に係るもの
    (別規定で益金不算入となるため)
  • 保険会社から受け取る契約者配当(※)
  • 事業分量配当金(※)
  • 公社債投資信託以外の証券投資信託の収益の分配の額
    (平成27年度改正で益金不算入対象から除外)
  • 特定目的会社から受ける配当等の額(※)
  • 投資法人から受ける配当等の額(※)

(※)損金算入規定があるため、2重課税が生じません。

益金不算入額の計算

受取配当金の益金不算入額は、次の保有割合に応じて計算します。

株式等の
保有割合
区分負債利子の控除益金不算入割合
100%完全子法人株式等なし
1/3超~100%未満(※1)関連法人株式等配当等×4%
(支払利息等の10%を限度)
(※2)
5%超~1/3以下その他の株式等(いずれにも該当しないもの)なし50%
5%以下(※1)非支配目的株式等・特定株式投資信託の受益権なし20%
益金不算入額の一覧

※1、令和4年4月1日以後開始事業年度から
   100%グループ法人も考慮します。
※2、令和4年4月1日以後開始事業年度から適用します。
   各区分の詳細については省略します。

同じ配当金100,000であっても、株式等の保有割合が異なると
益金不算入額が変わります。

例えば、配当金100,000を受け取った場合の
益金不算入額は次のとおりです。

1、完全子法人株式等の配当
  100,000

2、関連法人株式等の配当
  100,000△100,000×4%(=負債利子4,000)=96,000

3、その他の株式の配当
  100,000×50%=50,000

4、非支配目的株式等の配当
  100,000×20%=20,000

実務上の注意点
保有割合が5%以下の場合、
非支配目的株式等(益金不算入割合20%)に該当します。

負債利子の控除

負債利子を控除する理由
株式を取得するための資金を借りた場合、支払利息が発生します。
株式の配当金が益金不算入、支払利息が損金算入となると2重控除(法人税が課されずに費用処理)になるため、受け取った配当金から負債利子を控除します。

控除する金額
原則、受取配当金×4%です。
ただし、支払利息の合計額10%≦配当金の合計額×4%の場合は、
次の金額となります。
支払利息の合計額×10%×(受取配当金÷受取配当金の合計額)


関連法人株式等の配当の計算例
支払利息の合計額が10,000、受取配当金が100,000の場合

1、支払利息の合計額 10,000×10%=1,000(限度額)
2、受取配当金の合計額 100,000×4%=4,000
3、1(限度額)≦2のため、特例計算。
4、1,000×受取配当金100,000÷受取配当金の合計額100,000=1,000

益金不算入となる関連法人株式等の配当金
受取配当金100,000△1,000(=支払利息10,000×10%)=99,000

原則で計算した場合は、
100,000△100,000×4%=96,000となります。

特例計算の方が控除する負債利子が少なくなるため、
税金計算上は有利です。


特例計算の趣旨
益金不算入の対象から除外する4%は、受取配当金に対応する支払利息を概算したものです。受取配当金に対して支払利息が少ない場合、益金不算入が過度に制限されるため、支払利息の10%を控除額(限度額)としています。仮に支払利息が0であれば、控除額(限度額)も0となります。

グループ通算制度の場合
A社の受取配当金が1,000、B社の受取配当金が2,000であれば、
A社の割合は1,000/3,000、B社の割合は2,000/3,000となります。
上記の意味で、受取配当金÷受取配当金の合計額と
規定されているのでしょうね。

手続き

受取配当等の益金不算入を利用する場合は、
確定申告書等に計算書類(別表)の添付が必要です。
益金不算入額は誤った金額を記載した場合であっても再計算できません。

上記計算書類とは別に、支払利息×10%の特例を使用する場合は、
確定申告書等に計算書類(別表)を添付する必要があります(政令規定)。

参考規定

内国法人が次に掲げる金額(第一号に掲げる金額にあつては、外国法人若しくは公益法人等又は人格のない社団等から受けるもの及び適格現物分配に係るものを除く。以下この条において「配当等の額」という。)を受けるときは、その配当等の額(関連法人株式等に係る配当等の額にあつては当該配当等の額から当該配当等の額に係る利子の額に相当するものとして政令で定めるところにより計算した金額を控除した金額とし、完全子法人株式等、関連法人株式等及び非支配目的株式等のいずれにも該当しない株式等(株式又は出資をいう。以下この条において同じ。)に係る配当等の額にあつては当該配当等の額の百分の五十に相当する金額とし、非支配目的株式等に係る配当等の額にあつては当該配当等の額の百分の二十に相当する金額とする。)は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入しない。

一 剰余金の配当(株式等に係るものに限るものとし、資本剰余金の額の減少に伴うもの並びに分割型分割によるもの及び株式分配を除く。)若しくは利益の配当(分割型分割によるもの及び株式分配を除く。)又は剰余金の分配(出資に係るものに限る。)の額

二 投資信託及び投資法人に関する法律第百三十七条(金銭の分配)の金銭の分配(出資総額等の減少に伴う金銭の分配として財務省令で定めるもの(第二十四条第一項第四号(配当等の額とみなす金額)において「出資等減少分配」という。)を除く。)の額

三 資産の流動化に関する法律第百十五条第一項(中間配当)に規定する金銭の分配の額

法人税法第23条、受取配当等の益金不算入

 第一項に規定する関連法人株式等とは、内国法人(当該内国法人との間に完全支配関係がある他の法人を含む。)が他の内国法人(公益法人等及び人格のない社団等を除く。)の発行済株式又は出資(当該他の内国法人が有する自己の株式等を除く。)の総数又は総額の三分の一を超える数又は金額の株式等を有する場合として政令で定める場合における当該他の内国法人の株式等(次項に規定する完全子法人株式等を除く。)をいう。

法人税法第23条、受取配当等の益金不算入

・内国法人
・内国法人との間に完全支配関係がある他の法人
上記2つ合わせて保有割合を計算します。

 第一項に規定する完全子法人株式等とは、配当等の額の計算期間を通じて内国法人との間に完全支配関係がある他の内国法人(公益法人等及び人格のない社団等を除く。)の株式等として政令で定めるものをいう。

法人税法第23条、受取配当等の益金不算入

 第一項に規定する非支配目的株式等とは、内国法人(当該内国法人との間に完全支配関係がある他の法人を含む。)が他の内国法人(公益法人等及び人格のない社団等を除く。)の発行済株式又は出資(当該他の内国法人が有する自己の株式等を除く。)の総数又は総額の百分の五以下に相当する数又は金額の株式等を有する場合として政令で定める場合における当該他の内国法人の株式等(前項に規定する完全子法人株式等を除く。)をいう。

法人税法第23条、受取配当等の益金不算入

・内国法人
・内国法人との間に完全支配関係がある他の法人
上記2つ合わせて保有割合を計算します。

法人税法施行令19条
関連法人株式等に係る配当等の額から控除する利子の額

第十九条 法第二十三条第一項(受取配当等の益金不算入)に規定する政令で定めるところにより計算した金額は、同項に規定する配当等の額(次項及び第四項において「配当等の額」という。)百分の四に相当する金額とする。

 前項の場合において、法第二十三条第一項の内国法人の第一号に掲げる金額が第二号に掲げる金額以下であるときは、以下略

 当該適用事業年度に係る支払利子等の額の合計額の百分の十に相当する金額
 当該適用事業年度において受ける関連法人株式等に係る配当等の額の合計額の百分の四に相当する金額

法人税法第23条、受取配当等の益金不算入

(金銭の分配)第百三十七条
 投資法人は、その投資主に対し、第百三十一条第二項の承認を受けた金銭の分配に係る計算書に基づき、利益を超えて金銭の分配をすることができる。ただし、貸借対照表上の純資産額から基準純資産額を控除して得た額を超えることはできない。

投資信託及び投資法人に関する法律

(中間配当)第百十五条
 事業年度を一年とする特定目的会社については、一事業年度の途中において一回に限り事業年度中の一定の日を定めその日における社員(当該特定目的会社を除く。)に対し取締役の決定(取締役が数人あるときは、その過半数をもってする決定)により金銭の分配(以下この款において「中間配当」という。)をすることができる旨を定款で定めることができる。

資産の流動化に関する法律
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