合併があつた場合の納税義務の免除の特例_過去に新設合併があった場合_その1


今回は、消費税の「合併があつた場合の納税義務の免除の特例」のうち、
過去に新設合併があった場合(その1)を確認します。

内容

原則として、2期前の課税売上高(消費税がかかる売上)が
1000万円以下の場合、免税事業者となり、消費税を納める義務がありません。

ただし、納税義務の免除の特例に該当する場合は、
消費税を納める義務が生じます。その特例の1つが合併があった場合です。

合併があった場合の特例は、次の4つです。

  1. 当期中に吸収合併があった場合
  2. 過去に吸収合併があった場合
  3. 当期中に新設合併があった場合
  4. 過去に新設合併があった場合 ← 今回確認

今回は、4の「過去に新設合併があった場合」を確認します。

特例の内容

過去に新設合併があった場合において、
一定の方法で計算した金額が1000万円を超えるときは、
合併法人のその事業年度の課税資産の譲渡等については、
消費税の納税義務は免除されません。
(消費税を納める義務が生じます。)

事例

株式会社A(6月決算法人)と株式会社B(3月決算法人)が、
X年4/1に新設合併により株式会社Cを設立した場合

過去に新設合併があった場合には、一定の方法で計算した金額が
1000万円を超えるときに消費税の納税義務が生じます。

一定の方法で計算した金額については、2年前(2期前)に遡って計算します。
期間の遡り計算は吸収合併があった場合と似ています。

基準期間(2期前)に対応する期間

株式会社Cの基準期間に対応する期間を計算します。
左側が規定、右側が取扱いです。

規定取扱い
当該合併法人の当該事業年度開始の日の二年前の日の前日から<合併法人>
事業年度開始日 X+1年4/1
2年前の日 X-1年4/2
前日 X-1年4/1
同日以後一年を経過する日まで同日 X-1年4/1
以後1年を経過する日 X年3/31
の間に終了した同項の各被合併法人の各事業年度における<被合併法人>
合併法人のX-1年4/1からX年3/31までの間に終了した被合併法人の各事業年度は、次の2つです。
(被合併法人A)
X-2年7/1からX-1年6/30まで
X-1年7/1からX年3/31まで
(被合併法人B)
X-1年4/1からX年3/31まで
規定と取扱い

「各事業年度」とあるため、
事業年度が1年未満の場合や課税期間が1年未満の場合は期間を通算します。

課税売上高の計算方法は3つ

課税売上高の計算方法は次の3つです。

1、合併法人の基準期間における課税売上高がある場合
 合併法人の基準期間における課税売上高と
 被合併法人の一定の方法で計算した金額を合計して判定します。

2、合併法人の基準期間における課税売上高がない場合
 被合併法人の一定の方法で計算した金額を合計して判定します。

3、その他一定の場合
 合併法人の基準期間における課税売上高を調整します。

上記の事例は、2に該当するため、2を確認します。

例えば、Aの基準期間に対応する期間の課税売上高が840万円
Bの基準期間に対応する期間の課税売上高が360万円の場合、
被合併法人の課税売上高を年換算します。

左が規定、真ん中と右が取扱いです。

規定Aの取扱いBの取扱い
課税売上高の合計額を当該各事業年度の月数の合計数で除し、840万円÷21月
=40万円
360万円÷12月
=30万円
これに12を乗じて計算した金額の合計額40万円×12月
=480万円
30万円×12月
=360万円
年換算

被合併法人の課税売上高を合計すると
Aの課税売上高480万円+Bの課税売上高360万円=
840万円≦1000万円となるため、
過去に合併があった場合の特例の対象外となります。

合併の特例が適用されない場合

次の3つのいずれかに該当する場合は、特例の対象外です。

  1. 課税事業者選択届出書を提出している場合
  2. 特定期間の判定により納税義務が免除されない場合
  3. 基準期間における課税売上高が1000万円超である場合

当期中に吸収合併があった場合と同じです。

納税義務の免除の特例は多数あり、
他の規定により納税義務が免除されない場合は、
合併があったの場合の特例の対象外となります。

合併の特例の比較

合併の特例の比較

内容当期中に吸収合併した場合過去に吸収合併があった場合当期中に新設合併した場合過去に新設合併があった場合
どの課税売上高を使用するのか被合併法人のみ合併法人と
被合併法人
被合併法人のみ合併法人と
被合併法人
被合併法人が2以上ある場合の課税売上高合計しない。合計する。合計しない。合計する。
合併の特例の比較
参考規定

合併があつた場合の納税義務の免除の特例、過去に新設合併した場合

4 合併法人の当該事業年度開始の日の二年前の日から当該事業年度開始の日の前日までの間に合併があつた場合において、当該合併法人の当該事業年度の基準期間における課税売上高(事業年度の基準期間中の国内における課税資産の譲渡等の対価の額の合計額から事業年度の基準期間における売上げに係る税抜対価の返還等の金額の合計額を控除した残額をいう。以下この項において同じ。)と各被合併法人の当該合併法人の当該事業年度の基準期間に対応する期間における課税売上高として政令で定めるところにより計算した金額の合計額との合計額(当該合併法人の当該事業年度の基準期間における課税売上高がない場合その他政令で定める場合には、政令で定める金額が千万円を超えるときは、当該合併法人(第九条第四項の規定による届出書の提出により、又は第九条の二第一項の規定により消費税を納める義務が免除されないものを除く。)の当該事業年度(その第九条第一項に規定する基準期間における課税売上高が千万円以下である事業年度に限る。)における課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れについては、同条第一項本文の規定は、適用しない。

消費税法11条

合併法人の基準期間における課税売上高がない場合の
被合併法人の基準期間における課税売上高の計算(年換算する)

6 法第十一条第四項に規定する政令で定める金額は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める金額とする。
一 法第十一条第四項の合併法人の当該事業年度の基準期間における課税売上高がない場合 当該合併法人の当該事業年度開始の日の二年前の日の前日から同日以後一年を経過する日までの間に終了した同項の各被合併法人の各事業年度における課税売上高の合計額を当該各事業年度の月数の合計数で除し、これに十二を乗じて計算した金額の合計額
二 省略

消費税法施行令22条
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