吸収信託分割や複数新規信託分割があった場合


今回は、吸収信託分割や複数新規信託分割があった場合を確認してみましょう。

吸収信託分割と複数新規信託分割

既にある信託に信託財産の一部を移転する信託の分割を
「吸収信託分割」といいます。
(吸収分割と似たようなもの)

2以上の信託が新しい信託に信託財産の一部を移転する信託の分割を
「複数新規信託分割」といいます。
(2以上の分割法人が新設分割したようなもの)

・吸収信託分割
・複数新規信託分割
があった場合には、

・単独新規信託分割
・信託の併合
の2つがあったものとして前2項(消費税法施行令第28条第5項と第6項)が適用されます。

第5項は、特定法人課税信託でない信託を特定法人課税信託として取り扱う規定です。第6項は、法人課税信託でない信託を法人課税信託として取り扱う規定です。

今回確認する取り扱いは、1つの組織再編成(分割)を2つの組織再編成(新設分割と合併)に分けるようなものです。

単独新規信託分割

1つの信託が新たな信託に信託財産の一部を移転する信託の分割を
「単独新規信託分割」といいます。

・吸収信託分割
・複数新規信託分割
により移転する信託財産を
その信託財産とする信託を「吸収分割中信託」といいます。

この吸収分割中信託を承継信託(信託財産の一部の移転を受ける信託)とする単独新規信託分割があったものとして取り扱います。
(1つの分割法人が新設分割したようなもの)

信託の併合

吸収信託分割の場合は、
・吸収分割中信託
・承継信託
この2つを従前の信託とする信託の併合があったものとして取り扱います。
(吸収合併したようなもの)

複数新規信託分割の場合は、
・吸収分割中信託
・他の吸収分割中信託
この2つを従前の信託とする信託の併合があったものとして取り扱います。
(新設合併したようなもの)

理由

吸収信託分割や複数新規信託分割を
・単独新規信託分割
・信託の併合
の2つに分ける理由は、信託の併合や分割の方法によって課税関係が異なることを防ぐためです。

信託の併合や分割の内容を確認してみましょう。

1、信託の併合
A信託とB信託を合わせて新しいC信託に移すもの。

2、単独新規信託分割
A信託の一部を新しいC信託に移すもの。

3、複数新規信託分割
A信託の一部とB信託の一部を新しいC信託に移すもの。

4、吸収信託分割
A信託の一部を既存のB信託に移すもの。

信託の併合と複数新規信託分割の違いは、全部移転か一部移転かです。単独新規信託分割と信託の併合を組み合あわせて同じことができるのでしょう。

イメージ
信託の併合は、A信託+B信託=C信託
複数新規信託分割は、A信託の一部+B信託の一部=C信託の一部
(部分的に信託の併合をしている。)

吸収信託分割は、新規の信託ではなく既にある信託に移すもので、承継する方から見れば、部分的に信託の併合をしているようなものと言えます。

複数新規信託分割を単独新規信託分割と信託の併合に分けているので、吸収信託分割も同じ取り扱いとしたのかなと。

参考規定など

吸収信託分割や複数新規信託分割があった場合

7 他の信託に信託財産の一部を移転する信託の分割(以下この項及び次項において「吸収信託分割」という。)又は二以上の信託が新たな信託に信託財産の一部を移転する信託の分割(以下この項及び次項において「複数新規信託分割」という。)が行われた場合には、当該吸収信託分割又は複数新規信託分割により移転する信託財産をその信託財産とする信託(以下この項において「吸収分割中信託」という。)を承継信託とする単独新規信託分割が行われ、直ちに当該吸収分割中信託及び承継信託(複数新規信託分割にあつては、他の吸収分割中信託)を従前の信託とする信託の併合が行われたものとみなして、前二項の規定を適用する。

消費税法施行令第28条第7項、施行日令和6年4月1日


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