固定資産などの譲渡代金が回収できなくなった場合


今回は、固定資産などの譲渡代金が回収できなかった場合の所得税の取扱いを確認します。この取扱いは、固定資産の譲渡代金以外にも使用することが可能です。

固定資産などの譲渡代金が回収できなくなった場合

固定資産などの譲渡代金が回収できなくなった場合、
所得税の計算上、その譲渡代金はなかったものとして計算することが可能です。

上記の取扱いは、対象となる所得が限定されています。
所得税の所得は全部で10種類。

利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得、一時所得、雑所得

事業所得の代金の回収不能については、
別の取扱いにより必要経費となりますので、今回の取扱いの対象外となります。

他に、不動産所得と山林所得の事業から生じた回収不能についても、
別の取扱いにより必要経費となりますので、今回の取扱いの対象外となります。

求償権が行使できなくなった場合

例えば、
1、AがBからお金を1,000万円借りていた。
2、CはAの保証人になっていた。
3、Aは借金を返せなくなった。
4、CはCが所有する固定資産を譲渡して、買い手から譲渡代金を受け取り、Aの代わりに借金をBに返済した。

上記の場合、CはAの代わりに借金を返済するためであったとしても、
固定資産を譲渡しているため、Cに譲渡所得と税金が発生します。

4の後、CはAの借金の肩代わりをしているため、
Aに対し求償権(※)を行使することができます。
※ 肩代わりしたので、Aに対し1000万円支払ってくださいという権利です。

この求償権が行使できなかった場合
(CがAからお金を受け取れなかった場合)
譲渡代金が回収できなかった場合の取り扱いに準じて、
所得税を計算することができます。

詳しくは、国税庁、タックスアンサーをご確認ください。
No.3220 保証債務を履行するために土地建物などを売ったとき
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3220.htm

手続き

上記2つの特例については、確定申告などにおいて、
一定の手続きをする必要があります。

参考規定

(資産の譲渡代金が回収不能となつた場合等の所得計算の特例)
第六十四条 その年分の各種所得の金額(事業所得の金額を除く。以下この項において同じ。)の計算の基礎となる収入金額若しくは総収入金額(不動産所得又は山林所得を生ずべき事業から生じたものを除く。以下この項において同じ。)の全部若しくは一部を回収することができないこととなつた場合又は政令で定める事由により当該収入金額若しくは総収入金額の全部若しくは一部を返還すべきこととなつた場合には、政令で定めるところにより、当該各種所得の金額の合計額のうち、その回収することができないこととなつた金額又は返還すべきこととなつた金額に対応する部分の金額は、当該各種所得の金額の計算上、なかつたものとみなす。

 保証債務を履行するため資産(第三十三条第二項第一号(譲渡所得に含まれない所得)の規定に該当するものを除く。)の譲渡(同条第一項に規定する政令で定める行為を含む。)があつた場合において、その履行に伴う求償権の全部又は一部を行使することができないこととなつたときは、その行使することができないこととなつた金額(不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上必要経費に算入される金額を除く。)前項に規定する回収することができないこととなつた金額とみなして、同項の規定を適用する。

 前項の規定は、確定申告書、修正申告書又は更正請求書に同項の規定の適用を受ける旨の記載があり、かつ、同項の譲渡をした資産の種類その他財務省令で定める事項を記載した書類の添付がある場合に限り、適用する。

所得税法

(保証債務の履行のため資産を譲渡した場合の所得計算の特例の適用を受けるための記載事項)
第三十八条 法第六十四条第三項(資産の譲渡代金が回収不能となつた場合等の所得計算の特例)に規定する財務省令で定める事項は、次に掲げる事項とする。
一 法第六十四条第二項に規定する譲渡をした資産の数量及び譲渡金額並びに保証債務の履行に伴う求償権の全部又は一部を行使することができないこととなつた金額
二 主たる債務者及び債権者の氏名又は名称及び住所若しくは居所又は本店若しくは主たる事務所の所在地
三 保証債務の履行に伴う求償権の全部又は一部を行使することができないこととなつた年月日
四 第一号に規定する資産の譲渡の年月日及び取得の年月日
五 求償権の行使ができないこととなつた事情の説明
六 その他参考となるべき事項

所得税法施行規則

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