固定資産を交換した場合の固定資産の圧縮限度額


今回は、固定資産を交換した場合の固定資産の圧縮限度額を確認してみましょう。

固定資産を交換した場合

法人が事業で使っている固定資産(車両や建物など)を売却して利益が発生した場合、利益に対して法人税がかかります。

例えば、次の場合
・簿価 50万円
・売却した金額 120万円

売却した金額(120万円)-簿価(50万円)=利益(70万円)に対して法人税がかかります。
(消費税は、売却した金額120万円にかかります。)

通常、固定資産を売却してお金を受け取りますが、固定資産を受け取った場合は、どうなるでしょうか?

法人税の計算では、固定資産をその時の価額で買ったものとして取り扱われます。

例えば、固定資産Aを売って、時価120万円の固定資産Bを受け取った場合

仕訳例

借方貸方
固定資産B 120万円固定資産A 50万円
固定資産売却益 70万円

実際にお金を受け取っていれば、約30%の法人税が支払えますが、固定資産を受け取っているため、法人税が支払えなくなります。そのため、売却益に法人税がかからないようにするため、費用の先行計上(圧縮記帳)が可能です。

圧縮限度額

固定資産を交換した場合の圧縮記帳の圧縮限度額については、法人税法施行令に規定されています。

(交換により生じた差益金の額)
第九十二条 法第五十条第一項(交換により取得した資産の圧縮額の損金算入)に規定する政令で定めるところにより計算した金額は、同項に規定する取得資産(以下この条において「取得資産」という。)の取得の時における価額が同項に規定する譲渡資産(以下この条において「譲渡資産」という。)の譲渡直前の帳簿価額(当該譲渡資産の譲渡に要した経費がある場合には、その経費の額(当該譲渡資産が同項に規定する適格組織再編成により同項に規定する被合併法人等から移転を受けたものである場合には、当該被合併法人等が当該譲渡のために要した経費の額を含む。)を加算した金額。以下この条において同じ。)を超える場合におけるその超える部分の金額とする。

法人税法施行令第92条第1項、令和7年4月1日施行

少し長いのでカッコ書きを外してみましょう。

同項に規定する取得資産(取得資産)の取得の時における価額が同項に規定する譲渡資産(譲渡資産)の譲渡直前の帳簿価額(省略)を超える場合におけるその超える部分の金額とする。

1、取得資産の取得時の価額
2、譲渡資産の譲渡直前の帳簿価額

1>2の場合におけるその超える部分の金額が圧縮限度額となります。

例えば、次の場合
1、取得資産の取得時の価額 1200万円
2、譲渡資産の譲渡直前の帳簿価額 500万円

1の1200万円>2の500万円の場合におけるその超える部分の金額(1,200万円-500万円=700万円)です。

仕訳(考え方)

借方貸方
取得資産 1,200万円譲渡資産の簿価 500万円
差益金(圧縮限度額) 700万円

1<2の場合は、固定資産の交換により損失が発生するため圧縮記帳の対象外となります。損失には法人税がかからないからです。

参考情報

譲渡直前の帳簿価額のカッコ書きを確認してみましょう。

譲渡直前の帳簿価額(当該譲渡資産の譲渡に要した経費がある場合には、その経費の額(当該譲渡資産が同項に規定する適格組織再編成により同項に規定する被合併法人等から移転を受けたものである場合には、当該被合併法人等が当該譲渡のために要した経費の額を含む。)を加算した金額。以下この条において同じ。)

1つ目のカッコ書きは、相手に渡した固定資産に経費(譲渡経費)が発生した場合です。この場合は、譲渡経費を譲渡資産の帳簿価額にプラスします。

例えば、次の場合
1、取得資産の取得時の価額 1200万円
2、譲渡資産の譲渡直前の帳簿価額 500万円
3、2の譲渡経費 50万円

1の1200万円>2の500万円+50万円=550万円の場合におけるその超える部分の金額(1,200万円-550万円=650万円)が圧縮限度額になります。

仕訳(考え方)

借方貸方
取得資産 1,200万円譲渡資産の簿価 500万円
現預金 50万円
差益金(圧縮限度額) 650万円

2つ目のカッコ書きを確認してみましょう。

(当該譲渡資産が同項に規定する適格組織再編成により同項に規定する被合併法人等から移転を受けたものである場合には、当該被合併法人等が当該譲渡のために要した経費の額を含む。)

相手に渡した固定資産が適格組織再編成により他社(被合併法人等)から受け取っている場合です。被合併法人等が負担した譲渡経費についても譲渡資産の帳簿価額にプラスします。

・適格合併
・適格分割
・適格現物出資
・適格現物分配
の4つを「適格組織再編成」といいます。

法人税基本通達10-6-9を確認してみますと

(譲渡資産の譲渡に要した経費)
10-6-9 令第92条第1項《交換により生じた差益金の額》の「譲渡資産の譲渡に要した経費の額」には、交換に当たり支出した譲渡資産に係る仲介手数料、取外費、荷役費、運送保険料その他その譲渡に要した経費の額のほか、土地の交換に関する契約の一環として、又は当該交換のために当該土地の上に存する建物等につき取壊しをした場合におけるその取壊しにより生じた損失の額(その取壊しに伴い借家人に対して支払った立退料の額を含む。)が含まれる。(昭55年直法2-15「二十二」により改正)

とありますので、

例えば、
1、適格組織再編成の前に建物を取り壊し、被合併法人等が費用を負担
2、適格組織再編成により土地を合併法人等に移転
3、適格組織再編成の後に土地を交換
した場合に、1の費用についても圧縮限度額の計算に含める必要があります。

交換については、固定資産の売却と取得が同時(同じ事業年度)に行われるため、先行取得(圧縮限度額の修正など)や特別勘定の設定(圧縮記帳の予約)がありません。


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