固有事業者の分割と簡易課税が選択できない場合


今回は、固有事業者の分割と簡易課税が選択できない場合を確認してみましょう。

分割と簡易課税が選択できない場合

消費税を納める事業者かどうかの判定の1つに
・分割があった場合の特例
があります。

分割の場合、売上が複数の法人に分かれるため、一定期間分かれた売上を足し戻して判定する必要があります。

分割があった場合の特例については、
・新設分割(新たに法人が設立されるもの等)
・吸収分割
の2つがあり、新設分割については、
簡易課税の選択についても制限が設けられています。

法人課税信託の場合、
・固有事業者
・受託事業者
をそれぞれ別の人として取り扱う必要があります。

簡易課税の選択はどのように判定するのでしょうか?

規定を確認してみましょう。

8 固有事業者が法第十二条第一項から第四項までに規定する新設分割親法人又は新設分割子法人である場合における第五十五条の規定の適用については、同条第一号中「第二十三条第一項」とあるのは「第二十三条第一項(第二十七条第五項第一号の規定により読み替えて適用する場合を含む。)」と、同条第二号中「第二十三条第二項」とあるのは「第二十三条第二項(第二十七条第五項第二号の規定により読み替えて適用する場合を含む。)」と、同条第三号イ中「第二十三条第三項」とあるのは「第二十三条第三項(第二十七条第五項第三号の規定により読み替えて適用する場合を含む。)」と、同号ロ中「第二十三条第四項」とあるのは「第二十三条第四項(第二十七条第五項第四号の規定により読み替えて適用する場合を含む。)」と、同条第四号中「第二十三条第五項」とあるのは「第二十三条第五項(第二十七条第五項第五号の規定により読み替えて適用する場合を含む。)」とする。

消費税法施行令第27条第8項、施行日令和6年4月1日

読替後を太文字にしています。

読替規定の内容

読替規定のため、該当する規定を確認してみましょう。

「固有事業者が法第十二条第一項から第四項までに規定する新設分割親法人又は新設分割子法人である場合における第五十五条の規定の適用については、」

とありますので、読み替えの対象は、第55条です。
確認してみましょう。

(仕入れに係る消費税額の控除の特例の適用がない分割等に係る課税期間)
第五十五条 法第三十七条第一項に規定する新設分割親法人又は新設分割子法人の政令で定める課税期間は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める課税期間とする。
一 分割等(法第十二条第一項に規定する分割等をいう。以下この条において同じ。)があつた場合において、新設分割親法人(同項に規定する新設分割親法人をいう。以下この条において同じ。)の新設分割子法人(同項に規定する新設分割子法人をいう。以下この条において同じ。)の当該分割等があつた日の属する事業年度の基準期間に対応する期間における課税売上高として第二十三条第一項の規定の例により計算した金額(新設分割親法人が二以上ある場合には、いずれかの新設分割親法人に係る当該金額)が五千万円を超えるとき。 当該新設分割子法人の当該分割等があつた日の属する事業年度に含まれる課税期間
二 新設分割子法人の当該事業年度開始の日の一年前の日の前日から当該事業年度開始の日の前日までの間に分割等があつた場合において、新設分割親法人の当該新設分割子法人の当該事業年度の基準期間に対応する期間における課税売上高として第二十三条第二項の規定の例により計算した金額(新設分割親法人が二以上ある場合には、いずれかの新設分割親法人に係る当該金額)が五千万円を超えるとき。 当該新設分割子法人の当該事業年度に含まれる課税期間
三 新設分割子法人の当該事業年度開始の日の一年前の日の前々日以前に分割等(新設分割親法人が二以上ある場合のものを除く。次号において同じ。)があつた場合において、当該事業年度の基準期間の末日において当該新設分割子法人が特定要件(法第十二条第三項に規定する特定要件をいう。次号において同じ。)に該当し、かつ、イに掲げる金額とロに掲げる金額との合計額が五千万円を超えるとき。 当該新設分割子法人の当該事業年度に含まれる課税期間
イ 当該新設分割子法人の当該事業年度の基準期間における課税売上高として第二十三条第三項の規定の例により計算した金額
ロ 新設分割親法人のイの基準期間に対応する期間における課税売上高として第二十三条第四項の規定の例により計算した金額
四 新設分割親法人の当該事業年度開始の日の一年前の日の前々日以前に分割等があつた場合において、当該事業年度の基準期間の末日において新設分割子法人が特定要件に該当し、かつ、当該新設分割親法人の当該事業年度の基準期間における課税売上高(法第九条第一項に規定する基準期間における課税売上高をいう。)と当該新設分割子法人の当該基準期間に対応する期間における課税売上高として第二十三条第五項の規定の例により計算した金額との合計額が五千万円を超えるとき。 当該新設分割親法人の当該事業年度に含まれる課税期間

消費税法施行令第55条、施行日令和6年4月1日

・1号から3号までが新設分割子法人の簡易課税の制限
・4号が新設分割親法人の簡易課税の制限
に関する規定です。

簡易課税の選択については、一定期間、分かれた売上を足し戻して5000万円超の判定が必要となります。

上記の規定を読み替えてみましょう。

(仕入れに係る消費税額の控除の特例の適用がない分割等に係る課税期間)
第五十五条 法第三十七条第一項に規定する新設分割親法人又は新設分割子法人の政令で定める課税期間は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める課税期間とする。

一 分割等(法第十二条第一項に規定する分割等をいう。以下この条において同じ。)があつた場合において、新設分割親法人(同項に規定する新設分割親法人をいう。以下この条において同じ。)の新設分割子法人(同項に規定する新設分割子法人をいう。以下この条において同じ。)の当該分割等があつた日の属する事業年度の基準期間に対応する期間における課税売上高として第二十三条第一項(第二十七条第五項第一号の規定により読み替えて適用する場合を含む。)の規定の例により計算した金額(新設分割親法人が二以上ある場合には、いずれかの新設分割親法人に係る当該金額)が五千万円を超えるとき。 当該新設分割子法人の当該分割等があつた日の属する事業年度に含まれる課税期間

二 新設分割子法人の当該事業年度開始の日の一年前の日の前日から当該事業年度開始の日の前日までの間に分割等があつた場合において、新設分割親法人の当該新設分割子法人の当該事業年度の基準期間に対応する期間における課税売上高として第二十三条第二項(第二十七条第五項第二号の規定により読み替えて適用する場合を含む。)の規定の例により計算した金額(新設分割親法人が二以上ある場合には、いずれかの新設分割親法人に係る当該金額)が五千万円を超えるとき。 当該新設分割子法人の当該事業年度に含まれる課税期間

三 新設分割子法人の当該事業年度開始の日の一年前の日の前々日以前に分割等(新設分割親法人が二以上ある場合のものを除く。次号において同じ。)があつた場合において、当該事業年度の基準期間の末日において当該新設分割子法人が特定要件(法第十二条第三項に規定する特定要件をいう。次号において同じ。)に該当し、かつ、イに掲げる金額とロに掲げる金額との合計額が五千万円を超えるとき。 当該新設分割子法人の当該事業年度に含まれる課税期間
イ 当該新設分割子法人の当該事業年度の基準期間における課税売上高として第二十三条第三項(第二十七条第五項第三号の規定により読み替えて適用する場合を含む。)の規定の例により計算した金額
ロ 新設分割親法人のイの基準期間に対応する期間における課税売上高として第二十三条第四項(第二十七条第五項第四号の規定により読み替えて適用する場合を含む。)の規定の例により計算した金額

四 新設分割親法人の当該事業年度開始の日の一年前の日の前々日以前に分割等があつた場合において、当該事業年度の基準期間の末日において新設分割子法人が特定要件に該当し、かつ、当該新設分割親法人の当該事業年度の基準期間における課税売上高(法第九条第一項に規定する基準期間における課税売上高をいう。)と当該新設分割子法人の当該基準期間に対応する期間における課税売上高として第二十三条第五項(第二十七条第五項第五号の規定により読み替えて適用する場合を含む。)の規定の例により計算した金額との合計額が五千万円を超えるとき。 当該新設分割親法人の当該事業年度に含まれる課税期間

まとめ

読替部分だけ確認してみましょう。

1号は、第二十三条第一項(第二十七条第五項第一号の規定により読み替えて適用する場合を含む。)

2号は、第二十三条第二項(第二十七条第五項第二号の規定により読み替えて適用する場合を含む。)

3号イは、第二十三条第三項(第二十七条第五項第三号の規定により読み替えて適用する場合を含む。)

3号ロは、第二十三条第四項(第二十七条第五項第四号の規定により読み替えて適用する場合を含む。)

4号は、第二十三条第五項(第二十七条第五項第五号の規定により読み替えて適用する場合を含む。)

カッコ書きにある「第27条第5項」は、固有事業者が
・新設分割親法人
・新設分割子法人
・分割法人
の場合の、分割があった場合の納税義務の特例に関する読替規定です。

納税義務の判定では、
・固有事業者の計算した金額
・受託事業者の計算した金額
を合計する必要があります。

各規定(第23条第1項から第5項まで)については、
「読替規定により適用する場合を含む」とありますので、
簡易課税の判定についても、
・固有事業者の計算した金額
・受託事業者の計算した金額
を合計して5000万円判定することとなります。

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