国外に転出したときの所得税_未決済の信用取引等


今回は、国外に転出したときの所得税のうち、未決済の信用取引等を確認してみましょう。

国外に転出しただけで所得税?

株式などの有価証券を売却して利益が発生した場合は、原則として売却による所得税が発生します。

有価証券を持っているだけでは税金は発生しませんが、特例(国外転出時課税制度)の要件を満たすと、有価証券を持っているだけで税金が発生する場合があります。

参考リンク
国外に転出したときの所得税

特例の主な要件は2つ
1、日本国内に住所や居所がある居住者が海外に転出した。
(日本国内の住所や居所がなくなった場合を転出といいます。)
2、転出時に一定の要件を満たす有価証券を持っている。

要件を満たすと、実際には売却していない有価証券を売却したものとして所得税を計算する必要があります。

未決済の信用取引も対象

有価証券を持っている場合だけではなく、次の契約を締結している場合についても特例の対象となります。

1、国外転出時に決済していない信用取引に関する契約
2、国外転出時に決済していない発行日取引に関する契約

国外転出の時に未決済の信用取引等を締結している場合、国外転出の時に信用取引等を決済したものとして所得税を計算する必要があります。
(所得税特有の制度のため消費税は関係ありません。)

所得区分については、事業所得か雑所得のいずれかです。
有価証券を売却したわけではないので、譲渡所得はありません。

利益と損失

実際に決済していない信用取引等をを決済したものとして取り扱うため、利益と損失について2つのルールが定められています。

要件は、有価証券の取扱いとまったく同じです。

1つ目
・確定申告書を提出する時までに納税管理人の届出をした場合
・納税管理人の届出をしないで国外転出をした日以後に、確定申告書を提出する場合など

この場合は、国外転出した時に決済したものとして計算した利益や損失となります。

2つ目
1に該当しない場合は、国外転出の予定日からさかのぼって3月前の日に決済したものとして計算した利益や損失となります。

3月前の日より後に契約を締結した場合は、その契約を締結した時に決済したものとして計算した利益や損失となります。

参考規定

所得税の国外転出時課税、未決済信用取引等

2 国外転出をする居住者が、その国外転出の時において決済していない金融商品取引法第百五十六条の二十四第一項(免許及び免許の申請)に規定する信用取引又は発行日取引(有価証券が発行される前にその有価証券の売買を行う取引であつて財務省令で定める取引をいう。)(以下この条から第六十条の四までにおいて「未決済信用取引等」という。)に係る契約を締結している場合には、その者の事業所得の金額又は雑所得の金額の計算については、その国外転出の時に、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める金額の利益の額又は損失の額が生じたものとみなす。
一 前項第一号に掲げる場合 当該国外転出の時に当該未決済信用取引等を決済したものとみなして財務省令で定めるところにより算出した利益の額又は損失の額に相当する金額
二 前項第二号に掲げる場合 当該国外転出の予定日から起算して三月前の日(同日後に契約の締結をした未決済信用取引等にあつては、当該締結の時)に当該未決済信用取引等を決済したものとみなして財務省令で定めるところにより算出した利益の額又は損失の額に相当する金額

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