今回は、国外に転出した個人が亡くなった場合の所得税の再計算を確認してみましょう。
要件を満たせば再計算
国内に住所や居所がなくなることを「国外転出」といいます。
国外転出の時に、要件を満たす有価証券等を持っていると有価証券等を売却したものとして所得税を計算する必要があります。「国外転出時課税」といいます。
国外転出時課税は、要件を満たすと所得税が再計算できます。
再計算の要件は、次の3つです。
1、帰国する場合
2、別の居住者に贈与した場合
3、亡くなった場合
今回は、3を確認してみましょう。
参考リンク、1と2に関する記事
・国外に転出した場合の所得税を再計算できる場合
亡くなった場合
国外転出時課税の所得税の再計算は、2つの要件があります。
1つ目
国外転出時課税の対象者が国外転出の日から5年以内に亡くなり、相続や遺贈が発生した場合です。
ただし、
・限定承認の相続
・包括遺贈の限定承認の遺贈
の2つは、再計算の対象から外れます。
(亡くなった方の所得税の負担を相続人に影響させないようにするため。)
2つ目の要件は、2つあります。
1、国外転出の日から5年以内に、相続や遺贈により財産を引き継いだ相続人や受遺者の全員が「居住者」となった場合
・国内に住所がある個人
・国内に現在まで引き続いて1年以上居所がある個人
を居住者といいます。
(2つの要件は、帰国と同じ。)
相続人や受遺者が他の人に贈与をしている場合は、贈与を受けた個人も居住者である必要があります。
2、国外転出時課税の対象となった人の遺産分割が発生し、相続や遺贈により有価証券等を引き継いだ相続人や受遺者に「非居住者」が含まれなくなった場合
(5年以内に帰国した非居住者は対象から外れます。)
亡くなった方の財産を相続人に分ける場合、相続人で話し合って財産を分けます。遺産分割といいます。
遺産分割が相続税の申告をする時点で済んでいない場合(未分割の場合)、民法で定める割合で相続税の計算が必要となります。
相続税の申告をした後に遺産分割が済んだ場合、相続税の再計算が可能です。この相続税の再計算があった場合の内容となります。
具体的には、当初の申告は未分割で非居住者の相続人や受遺者が含まれていたが、遺産分割により非居住者の相続人や受遺者が含まれなくなった場合です。
参考規定
国外転出時課税の再計算、亡くなった場合
三 当該国外転出の日から五年を経過する日までに当該個人が死亡したことにより、当該国外転出の時に有していた有価証券等又は締結していた未決済信用取引等若しくは未決済デリバティブ取引に係る契約の相続(限定承認に係るものを除く。以下この号において同じ。)又は遺贈(包括遺贈のうち限定承認に係るものを除く。以下この号において同じ。)による移転があつた場合において、次に掲げる場合に該当することとなつたとき 当該相続又は遺贈による移転があつた有価証券等、未決済信用取引等又は未決済デリバティブ取引
所得税法第60条の2第6項第3号、施行日令和6年6月12日
イ 当該国外転出の日から五年を経過する日までに、当該相続又は遺贈により有価証券等又は未決済信用取引等若しくは未決済デリバティブ取引に係る契約の移転を受けた相続人及び受遺者である個人(当該個人から相続又は遺贈により当該有価証券等又は未決済信用取引等若しくは未決済デリバティブ取引に係る契約の移転を受けた個人を含む。ロにおいて同じ。)の全てが居住者となつた場合
ロ 当該個人について生じた第百五十一条の六第一項(遺産分割等があつた場合の修正申告の特例)に規定する遺産分割等の事由により、当該相続又は遺贈により有価証券等又は未決済信用取引等若しくは未決済デリバティブ取引に係る契約の移転を受けた相続人及び受遺者である個人に非居住者(当該国外転出の日から五年を経過する日までに帰国をした者を除く。)が含まれないこととなつた場合