今回は、国外転出した場合の納税猶予が途中で終わるときを確認してみましょう。
納税猶予が途中で終わるとき
国外転出時課税の納税猶予を受けると、所得税の支払期限を5年4ヵ月先延ばしできます。
ただし、期限(満了基準日)までに株式を売却すると手許に売却代金が残るため、納税猶予が途中で終了します。
納税猶予が途中で終了する事由は、国外転出時課税の対象となった
1、有価証券等の売却
2、未決済の信用取引等の決済
3、未決済のデリバティブ取引の決済
4、有価証券等、未決済の信用取引等やデリバディブ取引の贈与
の4つです。
納税猶予が途中で終了する日は、株式の売却等をした日から4月を経過する日となりますので注意しましょう。
参考規定
納税猶予が終了する場合
5 第一項の規定の適用を受けている個人が、同項の規定による納税の猶予に係る満了基準日までに、国外転出の時において有していた適用資産の譲渡(これに類するものとして政令で定めるものを含む。次条第六項において同じ。)若しくは決済又は贈与による移転をしたことその他政令で定める事由が生じた場合には、これらの事由が生じた適用資産に係る納税猶予分の所得税額のうちこれらの事由が生じた適用資産に対応する部分の額として政令で定めるところにより計算した金額に相当する所得税については、第一項の規定にかかわらず、これらの事由が生じた日から四月を経過する日をもつて同項の規定による納税の猶予に係る期限とする。
所得税法第137条の2第5項、施行日令和6年6月12日
売却に類するもの
おまけコーナーです。
納税猶予が途中で終了する事由は他にもあります。
この場合は、別の規定を準用します。
5 第百七十条第二項(国外転出をする場合の譲渡所得等の特例)の規定は、法第百三十七条の二第五項に規定する譲渡に類するものとして政令で定めるものについて準用する。
所得税法施行令第266条の2第5項、施行日令和7年1月1日
譲渡でないものを譲渡に類するものとして取り扱う規定(所得税法施行令第170条第2項)があり、その規定を納税猶予の終了にも準用する。
という内容です。
所得税法施行令第170条第2項を確認してみると
「2 法第六十条の二第四項に規定する譲渡に類するものとして政令で定めるものは、」
とあり、所得税法第60条の2は、国外転出する場合の国外転出時課税のことです。第4項は、国外転出時課税の対象となる有価証券等の購入金額を更新する規定です。
続きを確認してみましょう。
「租税特別措置法第三十七条の十第三項若しくは第四項(一般株式等に係る譲渡所得等の課税の特例)又は第三十七条の十一第三項若しくは第四項(上場株式等に係る譲渡所得等の課税の特例)の規定によりその額及び価額の合計額が同法第三十七条の十第一項に規定する一般株式等に係る譲渡所得等又は同法第三十七条の十一第一項に規定する上場株式等に係る譲渡所得等に係る収入金額とみなされる金銭及び金銭以外の資産の交付の基因となつた同法第三十七条の十第三項若しくは第四項各号又は第三十七条の十一第四項各号に規定する事由に基づく同法第三十七条の十第二項に規定する株式等についての当該金銭の額及び当該金銭以外の資産の価額に対応する権利の移転又は消滅とする。」
とあります。
他の規定により、一定の事由(権利の移転や消滅)が生じた場合は、一定の金額を株式の売却代金として取り扱います。
という意味です。
上記の規定を準用しますので、一定の事由(権利の移転や消滅)が生じた場合は、納税猶予が途中で終了します。
参考規定
2 法第六十条の二第四項に規定する譲渡に類するものとして政令で定めるものは、租税特別措置法第三十七条の十第三項若しくは第四項(一般株式等に係る譲渡所得等の課税の特例)又は第三十七条の十一第三項若しくは第四項(上場株式等に係る譲渡所得等の課税の特例)の規定によりその額及び価額の合計額が同法第三十七条の十第一項に規定する一般株式等に係る譲渡所得等又は同法第三十七条の十一第一項に規定する上場株式等に係る譲渡所得等に係る収入金額とみなされる金銭及び金銭以外の資産の交付の基因となつた同法第三十七条の十第三項若しくは第四項各号又は第三十七条の十一第四項各号に規定する事由に基づく同法第三十七条の十第二項に規定する株式等についての当該金銭の額及び当該金銭以外の資産の価額に対応する権利の移転又は消滅とする。
所得税法施行令第170条第2項、施行日令和7年1月1日