国外転出する場合の納税猶予を受ける人が亡くなったとき


今回は、国外転出する場合の納税猶予を受ける人が亡くなったときを確認してみましょう。

納税猶予を受けている人が亡くなった場合

国外転出すると株式などの含み益に所得税がかかります。実際に株式などを売却していないため、所得税の支払いの先延ばし(納税猶予)が可能です。

納税猶予の期間は、原則として5年4カ月。延長すると10年4カ月となり、猶予の期限が到来する前に個人が亡くなる場合があります。

個人が亡くなった場合、その相続人が猶予された所得税を支払う義務を引き継ぎます。

詳細は、所得税法施行令を確認する必要がありますので確認してみましょう。

9 法第百三十七条の二第十三項の規定により納付の義務を承継した同項の相続人(以下この条において「猶予承継相続人」という。)については、法第百三十七条の二第一項の規定の適用を受けた者とみなして、同条及びこの条の規定を適用する。

所得税法施行令第266条の2第9項、施行日令和7年1月1日

納付する義務を引き継いだ相続人を「猶予承継相続人」といいます。猶予承継相続人は、国外転出した場合の納税猶予を受けた人として取り扱われます。

猶予承継相続人が非居住者の場合

猶予承継相続人が非居住者の場合、相続が始まったことを知った日の翌日から4月以内に、納税管理人の届出が必要です。
(既に届出をしている場合は不要)

参考規定

10 非居住者である猶予承継相続人は、既に国税通則法第百十七条第二項の規定による納税管理人の届出をしている場合を除き、その相続の開始があつたことを知つた日の翌日から四月以内に、同項の規定による納税管理人の届出をしなければならない。この場合において、次条第六項及び第七項の規定は当該届出をすべき非居住者である猶予承継相続人が二人以上あるときに当該納税管理人の届出をする場合について、法第百三十七条の三第八項、第九項及び第十四項(第三号に係る部分に限る。)(贈与等により非居住者に資産が移転した場合の譲渡所得等の特例の適用がある場合の納税猶予)の規定は当該納税管理人の届出が当該期限までに行われなかつた場合について、それぞれ準用する。

所得税法施行令第266条の2第10項、施行日令和7年1月1日
連署の義務と通知

おまけコーナーです。所得税法施行令第266条の2第10項の準用規定を確認してみましょう。

「次条第六項及び第七項の規定」は、
・所得税法施行令第266条の3第6項
・所得税法施行令第266条の3第7項
を指しています。

第6項では、非居住者に株式を贈与等をした場合の納税猶予により、納税管理人の届出をする場合が規定されています。

納税猶予の対象となる資産を取得した非居住者が2人以上の場合、連署による1つの書面で届け出る必要があります。ただし、連署しないで付記してそれぞれが届け出ることも可能です。

第7項では、連署しなかった場合は、他の非居住者に届出の記載内容を通知する義務があると規定されています。

猶予承継相続人が非居住者の場合は、上記2つの規定が準用されます。

納税管理人の届出をしない場合

もう1つ準用規定があります。

法第137条の3第8項
非居住者に株式を贈与等をした場合の納税猶予を受けている人が更新しなかったことについてやむを得ない事情があるときは、後から更新手続きができる。

法第137条の3第9項
非居住者に株式を贈与等をした場合の納税猶予を受けている人が更新手続きをしなかったときは、猶予期限が繰り上がる。

法第137条の3第14項(第3号に係る部分に限る。)
非居住者に株式を贈与等をした場合の納税猶予を受けている人が更新手続きをしなかったときの利子税

上記3つの取扱いは、非居住者である猶予承継相続人が納税管理人の届出を期限までに提出しなかった場合に準用されます。

参考規定

納税猶予分の税金を納める義務は、相続人が引き継ぐ。

13 第一項の規定の適用に係る納税の猶予に係る期限までに同項の規定の適用を受ける国外転出をした者が死亡した場合には、当該国外転出をした者に係る納税猶予分の所得税額に係る納付の義務は、当該国外転出をした者の相続人が承継する。この場合において、必要な事項は、政令で定める。

所得税法第137条の2第13項、施行日令和7年1月1日

納税管理人の届出は、原則として連署が必要。付記することも可能。

6 法第百三十七条の三第二項の規定による納税管理人の届出をする場合において、同項に規定する対象資産を取得した非居住者が二人以上あるときは、当該届出は、各非居住者が連署による一の書面で行わなければならない。ただし、当該取得した他の非居住者の氏名を付記して各別に行うことを妨げない。

所得税法施行令第266条の3第6項、施行日令和7年1月1日

連署しなかった場合の通知義務

7 前項ただし書の方法により同項の届出をした非居住者は、遅滞なく、当該取得した他の非居住者に対し、当該届出の際に提出した書面に記載した事項の要領を通知しなければならない。

所得税法施行令第266条の3第7項、施行日令和7年1月1日
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