国庫補助金等の特別勘定


今回は、国庫補助金等の特別勘定を確認してみましょう。

特別勘定のしくみ

国庫補助金等の圧縮記帳(費用の先行計上)は、
次の2つが必要です。

・固定資産の取得
・返還不要確定の補助金等の取得

固定資産を取得しない場合や
補助金等の返還不要が確定していない場合は、
圧縮記帳ができません。

圧縮記帳ができない場合、
受け取った補助金等が税金の対象となり、
交付目的に合った固定資産を取得することが難しくなります。

そのため、圧縮記帳とは別に
特別勘定の設定による費用の先行計上が可能です。

特別勘定なしと特別勘定ありの
損益計算書を比較してみましょう。

内容特別勘定なし特別勘定あり
(仮受金経理)
受取補助金等(収益)+1000万円0円
法人税等(約30%)300万円0円
当期純利益700万円0円
損益計算書の比較
特別勘定の設定の要件

特別勘定の設定要件は、次の4つです。

・固定資産の取得に充てるために国等から補助金等を取得
・当期末までに補助金等の返還不要が未確定
・補助金等以下の金額で一定の経理
・確定申告書に別表の添付

補助金等の返還不要が確定している場合は、
圧縮記帳(別の特例)の対象となるため、対象外となります。

経理方法

経理方法は、2つあります。
・積立金経理による方法
・仮受金経理による方法(法人税基本通達10-1-1)

損金経理による方法はありません。

仮受金経理については、
受け取った補助金等を仮受金等で仕訳をきります。
会計上は、収益が発生しません。

税務上の考え方は、
・受取補助金等は益金算入
・特別勘定の設定は損金算入
となり、税金計算上の所得は仮受金経理と一致します。

手続き

特別勘定を設定する場合は、
確定申告書に別表の添付が必要です。

別表13(1)、国庫補助金等、工事負担金及び賦課金で
取得した固定資産等の圧縮額等の損金算入に関する明細書
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/shinkoku/itiran2023/pdf/13(01).pdf

特別勘定の取崩し義務

圧縮記帳ができないため、特別勘定の設定が認められています。
圧縮記帳ができる場合などは、特別勘定を取り崩す必要があります。

特別勘定を取り崩す必要がある場合は、次の4つです。

・国庫補助金等の返還義務が発生(補助金等を返す必要がある)
・国庫補助金等の返還不要が確定(補助金等を返す必要がない)
・通常の解散(費用を先行計上する理由がない)
・非適格合併による解散(同上)

取崩しによる益金算入

・取崩し義務による特別勘定
・任意の取崩しによる特別勘定
上記の2つは、費用を先行計上しているため、
収益(益金)として処理する必要があります。

適格組織再編成により他の法人に
特別勘定を引き継ぐ場合は、収益処理は不要です。

まとめ

・補助金等の返還不要が確定、固定資産の取得
 → 圧縮記帳

・補助金等の返還不要が未確定
 → 特別勘定の設定

参考規定

国庫補助金等に係る特別勘定の金額の損金算入

第四十三条 内国法人(清算中のものを除く。以下この条において同じ。)が、各事業年度(被合併法人の合併(適格合併を除く。次項及び第三項において「非適格合併」という。)の日の前日の属する事業年度を除く。)において固定資産の取得又は改良に充てるための国庫補助金等の交付を受ける場合(その国庫補助金等の返還を要しないことが当該事業年度終了の時までに確定していない場合に限る。)において、その国庫補助金等の額に相当する金額以下の金額を当該事業年度の確定した決算において特別勘定を設ける方法(政令で定める方法を含む。)により経理したときは、その経理した金額に相当する金額は、当該事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する。

法人税法第43条第1項、施行日令和5年11月29日

規定を整理してみましょう。


内国法人(注1)が、各事業年度(注2)において
固定資産の取得又は改良に充てるための
国庫補助金等の交付を受ける場合(注3)において、

その国庫補助金等の額に相当する金額以下の金額を
当該事業年度の確定した決算において
特別勘定を設ける方法(注4)により経理したときは、

その経理した金額に相当する金額は、
当該事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する。

注1、清算中のものを除く。以下この条において同じ。

注2、被合併法人の合併(適格合併を除く。
次項及び第三項において「非適格合併」という。)の日の前日の
属する事業年度を除く。

注3、その国庫補助金等の返還を要しないことが
当該事業年度終了の時までに確定していない場合に限る。

注4、政令で定める方法を含む。


仮受金経理の基本通達

(特別勘定の経理)
10-1-1 法第43条及び第48条《国庫補助金等に係る特別勘定の金額の損金算入等》に規定する特別勘定の経理は、積立金として積み立てる方法のほか、仮受金等として経理する方法によることもできるものとする。(昭55年直法2-15「十七」により追加、昭57年直法2-11「十」、平19年課法2-3「二十六」により改正)

法人税基本通達

特別勘定の取崩し義務

2 前項の特別勘定を設けている内国法人は、国庫補助金等について返還すべきこと又は返還を要しないことが確定した場合、当該内国法人が非適格合併により解散した場合その他の政令で定める場合には、その国庫補助金等に係る特別勘定の金額のうち政令で定めるところにより計算した金額を取り崩さなければならない。

法人税法第43条第2項、施行日令和5年11月29日

特別勘定の取崩し

(国庫補助金等に係る特別勘定の金額の取崩し)
第八十一条 法第四十三条第二項(国庫補助金等に係る特別勘定の金額の損金算入)に規定する政令で定める場合は、次の各号に掲げる場合とし、同項に規定する政令で定めるところにより計算した金額は、それぞれ当該各号に定める金額とする。
一 法第四十三条第一項に規定する国庫補助金等(以下この号において「国庫補助金等」という。)について返還すべきこと又は返還を要しないことが確定した場合 その確定した国庫補助金等の額に相当する同条第二項の特別勘定の金額(以下この条において「特別勘定の金額」という。)
二 解散(合併による解散を除く。)をした場合において、特別勘定の金額を有しているとき。 当該特別勘定の金額
三 合併(適格合併を除く。)により解散した場合において、特別勘定の金額を有しているとき。 当該特別勘定の金額

法人税法施行令第81条、施行日令和5年10月1日

取崩しによる益金算入

3 前項の規定により取り崩すべきこととなつた第一項の特別勘定の金額又は前項の規定に該当しないで取り崩した当該特別勘定の金額(第八項の規定により合併法人、分割承継法人、被現物出資法人又は被現物分配法人(第八項及び第十項において「合併法人等」という。)に引き継ぐこととされたものを除く。)は、それぞれその取り崩すべきこととなつた日(前項に規定する内国法人が非適格合併により解散した場合には、当該非適格合併の日の前日)又は取り崩した日の属する事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入する。

法人税法第43条第3項、施行日令和5年11月29日

手続き

4 第一項の規定は、確定申告書に同項に規定する経理した金額に相当する金額の損金算入に関する明細の記載がある場合に限り、適用する。

法人税法第43条第4項、施行日令和5年11月29日

やむを得ない事情がある場合

5 税務署長は、前項の記載がない確定申告書の提出があつた場合においても、その記載がなかつたことについてやむを得ない事情があると認めるときは、第一項の規定を適用することができる。

法人税法第43条第5項、施行日令和5年11月29日
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