国等に対する寄附金


今回は、法人税の寄附金の損金不算入のうち、
「国等に対する寄附金」について確認します。

規定の全体像

寄附金の損金不算入に関する規定の全体像を確認します。特殊な規定については省略します。

  1. 一般寄附金の損金不算入
  2. 法人による完全支配関係がある場合の寄附金
  3. 国等に対する寄附金 ← 今回確認
  4. 特定公益増進法人に対する寄附金
  5. みなし寄附金
  6. 特定公益信託
  7. 寄附金の定義
  8. 低額取引
  9. 確定申告等の手続き ← 今回確認
  10. やむを得ない場合
  11. 告示(今回確認)
  12. その他政令
国等に対する寄附金

法人にとって必要な寄附金もあるため、一律損金不算入ではなく、
損金算入に限度額が設けられています。

限度額までであれば、損金として計算できますが、
限度額を超えると、損金として計算できません。

この限度額については、寄附金の性質に応じて異なります。

今回確認する国等に対する寄附金については、
寄附金としてカウントしません。全額、損金算入となります。

国等に対する寄附金は2種類あります。

  • 国、地方公共団体に対する寄附金
  • 公益社団法人等に対する寄附金のうち、財務大臣が指定したもの

国、地方公共団体に対する寄附金については、
損金不算入とする理由がないため、全額損金算入となります。

ただし、寄附であっても、
寄附した人に経済的な利益が生じるようなものについては、
国等に対する寄附金から除外されます。

この点については、基本通達で公表されています。

国等に対する寄附金(基本通達)

法人税基本通達9-4-3(国等に対する寄附金)は、
寄附金の形式が国等以外、実質が国等の場合です。

寄附先が国、地方公共団体でなかったとしても、その寄附の効果がすぐに国等に帰属することが明らかなものについては、国等に対する寄附金に該当します。

反対に、法人税基本通達9-4-4(最終的に国等に帰属しない寄附金)は、
寄附金の形式が国等、実質が国等以外の場合です。

寄附先が国、地方公共団体であったとしても、その寄附の効果が最終的に国、地方公共団体に帰属しないものについては、国等に対する寄附金に該当しません。

国等に対する寄附金は形式より実質が重要です。

財務大臣が指定する寄附金(指定寄附金)

公益社団法人等に対する寄附金のうち財務大臣が指定したものは、国等に対する寄附金と同様に、寄附金としてカウントされません。全額損金算入となります。

有名なものは、赤い羽根共同募金です。

財務省、税制関係の主な告示、法人税関係https://www.mof.go.jp/tax_policy/reference/zeihou_kokuji.html

手続き

国等に対する寄附金、財務大臣指定寄附金については、
確定申告書等に明細書(別表)の添付が必要です。

参考、法人税別表14(2)、寄附金の損金算入に関する明細書
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/shinkoku/itiran2022/pdf/14(02).pdf

国等に対する寄附金などは、別表14(2)の中央付近の「指定寄附金等に関する明細」に記載して、42欄の合計を1欄「指定寄附金等の金額」に転記します。

国等に対する寄附金などは、別表に記載した金額を限度として損金算入が認められます。記載しない場合は、この特例を使用することができません。

寄附金の支払いがあった場合は、雑費などではなく、
「寄附金」の勘定科目を利用して忘れずに別表を作成しましょう。

参考規定など

法人税基本通達、第3款 国等に対する寄附金https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/09/09_04_03.htm

法人税の寄附金の考え方についてはこちら

国等に対する寄附金の取扱い

3 第一項の場合において、同項に規定する寄附金の額のうちに次の各号に掲げる寄附金の額があるときは、当該各号に掲げる寄附金の額の合計額は、同項に規定する寄附金の額の合計額に算入しない
一 国又は地方公共団体(港湾法(昭和二十五年法律第二百十八号)の規定による港務局を含む。)に対する寄附金(その寄附をした者がその寄附によつて設けられた設備を専属的に利用することその他特別の利益がその寄附をした者に及ぶと認められるものを除く。)の額
二 公益社団法人、公益財団法人その他公益を目的とする事業を行う法人又は団体に対する寄附金(当該法人の設立のためにされる寄附金その他の当該法人の設立前においてされる寄附金で政令で定めるものを含む。)のうち、次に掲げる要件を満たすと認められるものとして政令で定めるところにより財務大臣が指定したものの額
イ 広く一般に募集されること。
ロ 教育又は科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に寄与するための支出で緊急を要するものに充てられることが確実であること。

法人税法37条

国等に対する寄附金の手続き

9 第三項の規定は、確定申告書、修正申告書又は更正請求書に第一項に規定する寄附金の額の合計額に算入されない第三項各号に掲げる寄附金の額及び当該寄附金の明細を記載した書類の添付がある場合に限り、(省略)適用する。

この場合において、第三項又は第四項の規定により第一項に規定する寄附金の額の合計額に算入されない金額は、当該金額として記載された金額を限度とする。

法人税法37条

告示規定

11 財務大臣は、第三項第二号の指定をしたときは、これを告示する。

法人税法37条
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