圧縮記帳の経理方法と別表調整


今回は、圧縮記帳の経理方法と別表調整を確認してみましょう。

概要

法人が国、県、市などから
固定資産を取得するための補助金等を受け取って、
実際に固定資産を取得したときは、
補助金等に対して、圧縮記帳(費用の先取り)が可能です。

今回は、圧縮記帳の経理方法や別表調整などを確認したいと思います。

経理方法は、2つあります。
1、損金経理(費用処理する)方法
2、積立金経理(費用処理しない)方法

損金経理による方法

損金経理とは、
圧縮による損失を費用や損失で処理する方法です。

事例で確認してみましょう。前提は、次のとおりです。
・3月決算法人
・当期に土地3000万円を取得
・当期に上記土地を取得するための国庫補助金等1000万円を取得(返還不要)

会計上の仕訳と税務上の仕訳を見てみましょう。

会計上の仕訳

借方貸方
土地 3000万円現預金 3000万円
現預金 1000万円受取補助金等 1000万円
圧縮損 1000万円土地 1000万円
会計上の仕訳

圧縮損を費用処理し、
土地の取得価額を直接減額します。

税務上の仕訳

借方貸方
土地 3000万円現預金 3000万円
現預金 1000万円受取補助金等 1000万円
圧縮損 1000万円土地 1000万円
税務上の仕訳

会計上の仕訳と税務上の仕訳は一致しますので、
税務調整は不要となります。

損益計算書と貸借対照表を確認してみましょう。

損益計算書

受取補助金等 1000万円
土地圧縮損 -1000万円
当期純利益 0円

貸借対照表

資産負債・純資産
現預金 -2000万円
土地 2000万円
利益剰余金 0円
貸借対照表

法人税申告書の別表4と別表5(1)を確認してみましょう。

別表4、所得の金額

内容総額留保社外
当期純利益0円0円
課税所得0円0円
別表4、所得の金額

別表5(1)、利益積立金額

内容期首減少増加期末
繰越損益金0円0円
合計0円0円
別表5(1)、利益積立金額
積立金経理による方法

積立金経理とは、
圧縮損を費用や損失で処理しない方法です。

会計上の仕訳と税務上の仕訳を見てみましょう。

会計上の仕訳

借方貸方
土地 3000万円現預金 3000万円
現預金 1000万円受取補助金等 1000万円
繰越利益剰余金 1000万円圧縮積立金 1000万円
会計上の仕訳

貸方には、圧縮記帳する金額を積立金として経理します。
借方には、圧縮損を計上せず繰越利益剰余金を減らします。
積立金経理は、損益計算書と固定資産の取得価額に影響を与えない方法です。

税務上の仕訳

借方貸方
土地 3000万円現預金 3000万円
現預金 1000万円受取補助金等 1000万円
圧縮損 1000万円土地 1000万円
税務上の仕訳

会計上の仕訳と税務上の仕訳は一致しないため、
税務調整が必要です。後で確認します。

損益計算書と貸借対照表を確認してみましょう。

損益計算書

受取補助金等 1000万円
土地圧縮損 -1000万円 ← 費用や損失を計上しない方法
当期純利益 1000万円

貸借対照表

資産負債・純資産
現預金 -2000万円
土地 3000万円
圧縮積立金 1000万円
繰越利益剰余金 0円
貸借対照表
積立金経理の別表調整

会計上の仕訳と税務上の仕訳が一致していないため、
税務調整が必要となります。

税務調整

借方貸方
圧縮損 1000万円土地 1000万円
税務調整

法人税申告書の別表4と別表5(1)を確認してみましょう。

別表4、所得の金額

内容総額留保社外、※
当期純利益1000万円1000万円
圧縮積立金
認定損
-1000万円-1000万円
課税所得0円0円
別表4、所得の金額

積立金経理した1000万円は、
損金経理と同様に損金の額に算入できます。

会計上は、損金経理していないため、
圧縮積立金認定損1000万円を減算留保で調整します。

別表5(1)、利益積立金額

内容期首減少増加期末
圧縮積立金
(土地)
1000万円
(B/Sから転記)
1000万円
圧縮積立金
(税務調整)
-1000万円
(別表4から転記)
-1000万円
繰越損益金
(繰越利益剰余金)
0円0円
合計0円0円
別表5(1)、利益積立金額

圧縮積立金(土地)は、貸借対照表の圧縮積立金1000万円を転記、
圧縮積立金(税務調整)は、別表4から転記します。

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