基準日在職者であっても定額減税がない場合


今回は、基準日在職者であっても定額減税(月次減税)がない場合を確認してみましょう。

基準日在職者の意味

月次減税の「基準日在職者」について気になる部分があるため、情報を整理したいと思います。

定額減税(月次減税)の判定で、基準日在職者という言葉が出てきます。
基準日在職者は、法令上の定義ではなく造語です。
定額減税Q&Aの中で確認できます。

国税庁、令和6年分所得税の定額減税Q&A
(概要・源泉所得税関係【令和6年5月改訂版】)
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/0024001-021.pdf

3-1_基準日在職者

基準日在職者は、令和6年6月1日現在、給与の支払者のもとで勤務している人のうち、給与等の源泉徴収において源泉徴収税額表の甲欄が適用される居住者の人(その給与の支払者に扶養控除等申告書を提出している居住者の人)をいいます。

国税庁、令和6年分所得税の定額減税Q&A(概要・源泉所得税関係【令和6年5月改訂版】)3-1_基準日在職者

令和6年6月1日時点で、
・勤務中である。
・甲欄が適用される(扶養控除等申告書を提出している)。
の2つの要件を満たしている人を基準日在職者といいます。

別の情報で、同じ説明が出てきますので確認してみましょう。

2-1_定額減税の適用対象者

給与の支払者のもとで定額減税の適用を受けられる人の範囲等は、それぞれ次のようになっています。
⑴ 令和6年6月以後の各月(日々)において、給与等に係る控除前税額から行う控除(月次減税)の適用が受けられる給与所得者(基準日在職者)

給与の支払者のもとで6月以後の控除(月次減税)を受けられる人

令和6年6月1日現在、給与の支払者のもとで勤務している人のうち、給与等の源泉徴収において源泉徴収税額表の甲欄が適用される居住者の人(その給与の支払者に扶養控除等申告書を提出している居住者の人)

国税庁、令和6年分所得税の定額減税Q&A(概要・源泉所得税関係【令和6年5月改訂版】)2-1_定額減税の適用対象者

2-1の情報と3-1の情報を比較すると「基準日在職者」の説明が微妙に異なります。

2-1の情報では、
⑴ 令和6年6月以後の各月(日々)において、給与等に係る控除前税額から行う控除(月次減税)の適用が受けられる給与所得者(基準日在職者)

3-1の情報では、
基準日在職者は、令和6年6月1日現在、給与の支払者のもとで勤務している人のうち、給与等の源泉徴収において源泉徴収税額表の甲欄が適用される居住者の人(その給与の支払者に扶養控除等申告書を提出している居住者の人)をいいます。

となっています。

2-1の情報の中で、「給与の支払者のもとで6月以後の控除(月次減税)を受けられる人」とあり、続いて3-1の情報と同じものが記載されています。

基準日在職者の意味は、
1、令和6年6月1日の定額減税の1要件を満たす人(3-1の情報)
2、実際に定額減税の適用を受ける人(2-1の情報)
どちらなのでしょうか?

3-1の情報が正確だと思いますので、令和6年6月1日の定額減税の1要件を満たす人(3-1の情報)を基準日在職者という前提で話を進めます。

基準日在職者であっても月次減税がない場合

実際に定額減税を受けるためには、
・基準日在職者の判定で甲欄
・給料支払時の判定で甲欄
の2つの要件を満たす必要があります。

基準日在職者の判定時期と給料支払時の判定時期は異なるため、
1、基準日在職者の判定で甲欄、給料支払時の判定で乙欄
2、基準日在職者の判定で乙欄、給料支払時の判定で甲欄
となる場合があります。

1の場合は、基準日在職者であっても定額減税が受けられません。具体的には、令和6年6月1日の基準日在職者である人が、退職して給料を受け取る場合です。

別の情報を確認してみましょう。

国税庁、給与等の源泉徴収事務に係る令和6年分所得税の定額減税のしかた
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/0023012-317.pdf

3ページに「控除対象者の確認」があります。

令和6年6月1日現在、給与の支払者のもとで勤務している人のうち、給与等の源泉徴収において源泉徴収税額表の甲欄が適用される居住者の人(その給与の支払者に扶養控除等申告書を提出している居住者の人)(以下「基準日在職者」といいます。)を選び出します。
この基準日在職者が、原則として月次減税額の控除の対象となる人(以下「控除対象者」といいます。)となりますが、その後、他の給与の支払者に扶養控除等申告書を提出した場合には、この人は控除対象者から外れることになります。

なお、次に掲げる人は、基準日在職者に該当しませんので注意してください。
<基準日在職者に該当しない人>
令和6年6月1日以後支払う給与等の源泉徴収において源泉徴収税額表の乙欄や丙欄が適用される人(扶養控除等申告書を提出していない人)
以下省略

国税庁、給与等の源泉徴収事務に係る令和6年分所得税の定額減税のしかた、3ページ

上記の情報で、「基準日在職者が原則として控除対象者、例外として控除対象者から外れることがある」ことが公表されています。

その例外とは、「他に扶養控除等申告書を提出した場合」です。
実際には、もう少し要件が広くなります。

扶養控除等申告書の失効

他に扶養控除等申告書を提出した場合、控除対象者から外れます。なぜかといいますと、扶養控除等申告書の効力がなくなるからです。

基本通達(取扱い)を確認してみましょう。

(年の中途で退職した者に係る給与所得者の扶養控除等申告書等の効力)
194・195-6 給与所得者の扶養控除等申告書又は従たる給与についての扶養控除等申告書を提出した者が年の中途においてその提出を経由した給与等の支払者のもとを退職した場合には、これらの申告書はその退職により効力を失うものとする。ただし、その退職後その年中に当該支払者がその退職した者に給与等の追加払等をする場合において、次に掲げる区分に応じ、それぞれ次に掲げることが明らかなときは、当該追加払等をする給与等に係る源泉徴収税額は、これらの申告書が退職後も引き続き効力を有するものとして計算して差し支えない。(平22課個2-16、課法9-1、課審4-30、平29課法10-13、課個2-22、課審5-8改正)
(1) その退職した者が給与所得者の扶養控除等申告書を提出した者である場合 その追加払等をする時において、その退職した者が他の給与等の支払者を経由して給与所得者の扶養控除等申告書を提出していないこと。
(2) その退職した者が従たる給与についての扶養控除等申告書を提出した者である場合 その追加払等をする時において、その退職した者が他の給与等の支払者を経由して当該申告書に記載されている源泉控除対象配偶者及び控除対象扶養親族を記載した給与所得者の扶養控除等申告書又は従たる給与についての扶養控除等申告書を提出していないこと。

所得税基本通達194・195-6

給与所得者が退職した時点で、扶養控除等申告書の効力がなくなります。例外として、他に扶養控除等申告書を提出していないことが明らかな場合は、扶養控除等申告書の効力がなくなりません。

提出が明らかな場合や不明な場合は失効します。失効すると甲欄の適用ができないため、定額減税が受けられないと考えられます。

まとめ

定額減税(月次減税)を受けるためには、
・基準日在職者の判定で甲欄(扶養控除等申告書を提出している。)
・給料支払時の判定で甲欄(扶養控除等申告書が有効である。)
の2つの要件を満たす必要があります。

参考規定

月次減税

(令和六年六月以後に支払われる給与等に係る特別控除の額の控除等)
第四十一条の三の七 令和六年六月一日において給与等(所得税法第百八十三条第一項に規定する給与等をいう。以下この条及び次条において同じ。)の支払者から主たる給与等(給与所得者の扶養控除等申告書(同法第百九十四条第八項に規定する給与所得者の扶養控除等申告書をいう。第三項第一号及び第二号並びに次条第二項第二号において同じ。)の提出の際に経由した給与等の支払者から支払を受ける給与等をいう。以下この項及び次項において同じ。)の支払を受ける者である居住者の同日以後最初に当該支払者から支払を受ける同年中の主たる給与等(同年分の所得税に係るものに限り、同法第百九十条の規定の適用を受けるものを除く。次項及び第五項において「第一回目控除適用給与等」という。)につき同法第四編第二章第一節の規定により徴収すべき所得税の額は、当該所得税の額に相当する金額(以下この項及び次項において「第一回目控除適用給与等に係る控除前源泉徴収税額」という。)から給与特別控除額を控除した金額に相当する金額とする。この場合において、当該給与特別控除額が当該第一回目控除適用給与等に係る控除前源泉徴収税額を超えるときは、当該控除をする金額は、当該第一回目控除適用給与等に係る控除前源泉徴収税額に相当する金額とする。

租税特別措置法第41条の3の7第1項、施行日令和6年6月1日


新しいこと
・三角麵

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