売上代金の貸倒れの消費税


今回は、売上代金の貸倒れの消費税を確認してみましょう。

貸倒れが発生した場合

日本で商品を販売した場合、
原則として消費税がかかります。

掛けで販売した場合であっても、
販売した時点で消費税がかかるため、
代金を回収する前に消費税を納付することもあります。

この代金が貸倒れ等により回収できなかった場合、
受け取った消費税からマイナスすることが可能です。

例えば、商品売上110,000円(うち消費税10,000円)
回収できなかった金額22,000円(うち消費税2,000円)の場合

10,000円(売上消費税)-2,000円(貸倒れ消費税)=
8,000円が納付する消費税となります。

消費税の控除要件

貸倒れによる消費税の控除要件は、次の4つです。

1、課税事業者である。
2、国内の商品の販売等で消費税がかかっている。
3、貸倒れの事実が発生している。
4、代金が回収できなくなっている。

1について
・商品を販売したとき
・代金が回収できなくなったとき
両方のタイミングで課税事業者であることが必要です。

・商品販売時に免税事業者、貸倒れ発生時に課税事業者
・商品販売時に課税事業者、貸倒れ発生時に免税事業者
上記の場合は、要件を満たさないことになります。

2について
・消費税がかからない売上
・非課税の売上
・消費税が免除される売上
等には、消費税がかかっていないため、
貸倒れによる消費税の控除は、使えません。

3と4について
貸倒れの事実を確認する必要があります。

貸倒れの事実

貸倒れの事実を確認してみましょう。

1、再生計画認可の決定により債権の切捨て
2、特別清算に係る協定の認可の決定により債権の切捨て
3、債務者が債務の全額を弁済できないことが明らかな場合
4、法令の規定による整理手続によらない一定の債権の切捨て
5、回収できない状況における書面による債務の免除
6、回収できない状況における一定の貸倒れ経理

等の事実が生じている必要があります。

書類の保存が必要

貸倒れによる消費税の控除は、
貸倒れの事実を証明する書類の保存が必要です。
書類を保存しない場合、原則として消費税の控除ができません。

貸倒れ処理した後に回収できた場合

貸倒れによる消費税の控除を計算した後に、
貸倒れ処理した代金を回収した場合、回収代金に応じて
受け取った消費税として取扱う必要があります。

・商品販売時
・貸倒れ発生時
・代金回収時
全て課税事業者の場合に、受け取った消費税として取り扱います。

相続等があった場合

相続があった場合の取扱いを確認してみましょう。

・被相続人(課税事業者)が商品販売
・相続人(課税事業者)が相続により事業を承継
・被相続人の売上代金が回収不能

上記の場合、被相続人の確定申告書を修正しないで
相続人が商品販売したものとして、
相続人で貸倒れによる消費税の控除が可能です。
(貸倒れの事実を証明する書類の保存が必要)

上記の後、売上代金が回収できた場合、
回収代金に応じて受け取った消費税として取扱う必要があります。

法人の合併や分割があった場合、
相続があった場合と同様の取扱いとなります。

参考規定など

貸倒れに係る消費税額の控除等

第三十九条 事業者(第九条第一項本文の規定により消費税を納める義務が免除される事業者を除く。)が国内において課税資産の譲渡等(第七条第一項、第八条第一項その他の法律又は条約の規定により消費税が免除されるものを除く。)を行つた場合において、当該課税資産の譲渡等の相手方に対する売掛金その他の債権につき更生計画認可の決定により債権の切捨てがあつたことその他これに準ずるものとして政令で定める事実が生じたため、当該課税資産の譲渡等の税込価額の全部又は一部の領収をすることができなくなつたときは、当該領収をすることができないこととなつた日の属する課税期間の課税標準額に対する消費税額から、当該領収をすることができなくなつた課税資産の譲渡等の税込価額に係る消費税額(当該税込価額に百十分の七・八(当該税込価額が軽減対象課税資産の譲渡等に係るものである場合には、百八分の六・二四)を乗じて算出した金額をいう。第三項において同じ。)の合計額を控除する。

消費税法第39条第1項、施行日令和5年10月1日

事業者(注1)が国内において
課税資産の譲渡等(注2)を行つた場合において、

当該課税資産の譲渡等の相手方に対する売掛金その他の債権につき
更生計画認可の決定により債権の切捨てがあつたこと
その他これに準ずるものとして政令で定める事実が生じたため、
当該課税資産の譲渡等の税込価額の全部又は一部の領収を
することができなくなつたときは、

当該領収をすることができないこととなつた日の
属する課税期間の課税標準額に対する消費税額から、
当該領収をすることができなくなつた
課税資産の譲渡等の税込価額に係る消費税額(注3)の合計額を控除する。

注1、第九条第一項本文の規定により消費税を納める義務が免除される事業者を除く。

注2、第七条第一項、第八条第一項その他の法律又は条約の規定により消費税が免除されるものを除く。

注3、当該税込価額に7.8/110(注3-1)を乗じて算出した金額をいう。第三項において同じ。

注3-1、当該税込価額が軽減対象課税資産の譲渡等に係るものである場合には、6.24/108

書類の保存

2 前項の規定は、事業者が財務省令で定めるところにより同項に規定する債権につき同項に規定する事実が生じたことを証する書類を保存しない場合には、適用しない。ただし、災害その他やむを得ない事情により当該保存をすることができなかつたことを当該事業者において証明した場合は、この限りでない。

消費税法第39条第2項、施行日令和5年10月1日

貸倒れ回収

3 第一項の規定の適用を受けた同項の事業者が同項の規定の適用を受けた課税資産の譲渡等の税込価額の全部又は一部の領収をしたときは、当該領収をした税込価額に係る消費税額を課税資産の譲渡等に係る消費税額とみなしてその事業者のその領収をした日の属する課税期間の課税標準額に対する消費税額に加算する。

消費税法第39条第3項、施行日令和5年10月1日

第1項の規定の適用を受けた同項(第1項)の事業者が
同項(第1項)の規定の適用を受けた
課税資産の譲渡等の税込価額の全部又は一部の領収をしたときは、

当該領収をした税込価額に係る消費税額を
課税資産の譲渡等に係る消費税額とみなして
その事業者のその領収をした日の属する課税期間の
課税標準額に対する消費税額に加算する。

相続があった場合の特例

4 相続により当該相続に係る被相続人の事業を承継した相続人がある場合において、当該被相続人により行われた課税資産の譲渡等の相手方に対する売掛金その他の債権について当該相続があつた日以後に第一項の規定が適用される事実が生じたときは、その相続人が当該課税資産の譲渡等を行つたものとみなして、同項及び第二項の規定を適用する。

消費税法第39条第4項、施行日令和5年10月1日

相続により当該相続に係る被相続人の事業を
承継した相続人がある場合において、

当該被相続人により行われた課税資産の譲渡等の
相手方に対する売掛金その他の債権について
当該相続があつた日以後に第1項の規定が適用される事実が生じたときは、
その相続人が当該課税資産の譲渡等を行つたものとみなして、
同項(第1項)及び第2項の規定を適用する。

相続があった場合の貸倒れ回収の特例

5 相続により当該相続に係る被相続人の事業を承継した相続人が当該被相続人について第一項の規定が適用された課税資産の譲渡等の税込価額の全部又は一部を領収した場合には、その相続人が同項の規定の適用を受けたものとみなして、第三項の規定を適用する。

消費税法第39条第5項、施行日令和5年10月1日

相続により当該相続に係る被相続人の事業を承継した相続人が
当該被相続人について第1項の規定が適用された
課税資産の譲渡等の税込価額の全部又は一部を領収した場合には、
その相続人が同項の規定の適用を受けたものとみなして、
第3項の規定を適用する。

合併、分割の準用

6 前二項の規定は、合併により当該合併に係る被合併法人から事業を承継した合併法人又は分割により当該分割に係る分割法人から事業を承継した分割承継法人について準用する。

消費税法第39条第6項、施行日令和5年10月1日

前2項(第4項、第5項)の規定は、
・合併により当該合併に係る被合併法人から事業を承継した合併法人又は
・分割により当該分割に係る分割法人から事業を承継した分割承継法人
について準用する。

7 第一項に規定する税込価額に係る消費税額の計算の細目に関し必要な事項は、政令で定める。

消費税法第39条第7項、施行日令和5年10月1日

貸倒れの範囲等(施行令)

(貸倒れの範囲等)
第五十九条 法第三十九条第一項に規定する政令で定める事実は、次に掲げる事実とする。
一 再生計画認可の決定により債権の切捨てがあつたこと。
二 特別清算に係る協定の認可の決定により債権の切捨てがあつたこと。
三 債権に係る債務者の財産の状況、支払能力等からみて当該債務者が債務の全額を弁済できないことが明らかであること。
四 前三号に掲げる事実に準ずるものとして財務省令で定める事実

消費税法施行令第59条、施行日令和5年10月1日

貸倒れの範囲(施行規則)

(貸倒れの範囲)
第十八条 令第五十九条第四号に規定する財務省令で定める事実は、次に掲げる事実とする。
一 法令の規定による整理手続によらない関係者の協議決定で次に掲げるものにより債権の切捨てがあつたこと。
イ 債権者集会の協議決定で合理的な基準により債務者の負債整理を定めているもの
ロ 行政機関又は金融機関その他の第三者のあつせんによる当事者間の協議により締結された契約でその内容がイに準ずるもの

二 債務者の債務超過の状態が相当期間継続し、その債務を弁済できないと認められる場合において、その債務者に対し書面により債務の免除を行つたこと。

三 債務者について次に掲げる事実が生じた場合において、その債務者に対して有する債権につき、事業者が当該債権の額から備忘価額を控除した残額を貸倒れとして経理したこと。
イ 継続的な取引を行つていた債務者につきその資産の状況、支払能力等が悪化したことにより、当該債務者との取引を停止した時(最後の弁済期又は最後の弁済の時が当該取引を停止した時以後である場合には、これらのうち最も遅い時)以後一年以上経過した場合(当該債権について担保物がある場合を除く。)
ロ 事業者が同一地域の債務者について有する当該債権の総額がその取立てのために要する旅費その他の費用に満たない場合において、当該債務者に対し支払を督促したにもかかわらず弁済がないとき。

消費税法施行規則第18条、施行日令和5年10月1日
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