外交員報酬の基本通達とインボイス制度の留意点


今回は、外交員報酬に関する基本通達とインボイス制度の留意点を確認します。

消費税の基本通達

インボイス制度前(現行)の消費税の基本通達を確認してみましょう。

(外交員等の報酬)
11-2-5 外交員、集金人、電力量計等の検針人その他これらに類する者に対して支払う報酬又は料金のうち、所法第28条第1項《給与所得》に規定する給与所得に該当する部分については、課税仕入れに係る支払対価には該当しないのであるから留意する。

(注) この場合において、給与所得に該当する部分とその他の部分との区分は、所基通204-22《外交員又は集金人の業務に関する報酬又は料金》の例による。

消費税法基本通達11-2-5

外交員等に支払う報酬のうち、所得税法の給与所得に該当する部分は、
消費税法の「課税仕入れに係る支払対価」には該当しません。

消費税では、他者から
・資産を譲り受ける(資産の取得)
・資産を借り受ける
・サービスの提供を受ける
ことを「課税仕入れ」といいます。

外交員からサービスの提供を受けることも
課税仕入れに該当します。

ただし、消費税では、
給与等を対価とするサービスの提供を受けることは、
課税仕入れから除かれています。

基本通達11-2-5(外交員等の報酬)は、
上記の内容を確認するためのものです。

まとめると外交員報酬については、
・給与等に該当する部分は、課税仕入れに該当しない。
・上記以外は、課税仕入れに該当する。
となります。

給与等か給与等以外かの区分については、消費税ではなく
所得税で規定されていますので、
次は所得税の基本通達を確認してみましょう。

所得税の基本通達

所得税の基本通達は、こちら。

(外交員又は集金人の業務に関する報酬又は料金)
204-22 外交員又は集金人がその地位に基づいて保険会社等から支払を受ける報酬又は料金については、次に掲げる場合に応じ、それぞれ次による。

(1) その報酬又は料金がその職務を遂行するために必要な旅費とそれ以外の部分とに明らかに区分されている場合  法第9条第1項第4号《非課税所得》に掲げる金品に該当する部分は非課税とし、それ以外の部分は給与等とする。

(2) (1)以外の場合で、その報酬又は料金が、固定給(一定期間の募集成績等によって自動的にその額が定まるもの及び一定期間の募集成績等によって自動的に格付される資格に応じてその額が定めるものを除く。以下この項において同じ。)とそれ以外の部分とに明らかに区分されているとき。  固定給(固定給を基準として支給される臨時の給与を含む。)は給与等とし、それ以外の部分は法第204条第1項第4号に掲げる報酬又は料金とする。

(3) (1)及び(2)以外の場合  その報酬又は料金の支払の基因となる役務を提供するために要する旅費等の費用の額の多寡その他の事情を総合勘案し、給与等と認められるものについてはその総額を給与等とし、その他のものについてはその総額を法第204条第1項第4号に掲げる報酬又は料金とする。

所得税基本通達

全部で3つです。

旅費と旅費以外に区分されている場合

外交員報酬が、旅費と旅費以外に区分されている場合
・非課税に該当する部分は、所得税の非課税
・非課税に該当しない部分は、給与等
となります。

「法第9条第1項第4号」は、
給与所得者の通勤手当等の非課税に関する規定です。

(非課税所得)
第九条 次に掲げる所得については、所得税を課さない。
四 給与所得を有する者が勤務する場所を離れてその職務を遂行するため旅行をし、若しくは転任に伴う転居のための旅行をした場合又は就職若しくは退職をした者若しくは死亡による退職をした者の遺族がこれらに伴う転居のための旅行をした場合に、その旅行に必要な支出に充てるため支給される金品で、その旅行について通常必要であると認められるもの

所得税法

通常必要である旅費については、所得税がかかりません。

固定給(条件付固定給を除く)と変動給に区分されている場合

外交員報酬が固定給(条件付固定給を除く)と変動給に区分されている場合
・固定給(固定給基準の賞与を含む)は、給与等
・上記以外(条件付固定給と変動給)は、給与等以外の報酬
となります。

「法第204条第1項第4号」は、
報酬等の源泉徴収(原則として10.21%の税率)に関する規定です。

(源泉徴収義務)
第二百四条 居住者に対し国内において次に掲げる報酬若しくは料金、契約金又は賞金の支払をする者は、その支払の際、その報酬若しくは料金、契約金又は賞金について所得税を徴収し、その徴収の日の属する月の翌月十日までに、これを国に納付しなければならない。
四 職業野球の選手、職業拳けん闘家、競馬の騎手、モデル、外交員、集金人、電力量計の検針人その他これらに類する者で政令で定めるものの業務に関する報酬又は料金

所得税法

同じ人に対する支払いであっても、外交員報酬については、
給与等の源泉徴収と、報酬等の源泉徴収を分けて計算する必要があります。

区分されていない場合は総合勘案で分ける。

旅費等の費用の額の多寡その他の事情を総合勘案して
給与等と報酬等に分ける必要が生じます。

インボイス制度の留意点

インボイス制度が始まると、報酬部分については、
インボイスの交付が必要となります。

旅費、給与等、報酬等が区分されていない部分については、
いずれかを選択できるものではないので、あらかじめ区分しておきましょう。

報酬部分が後から変わった場合、
修正インボイスの対応や計算のやり直しが必要となるからです。

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