完全子法人株式等に係る配当等の課税の特例


今回は、完全子法人株式等に係る配当等の課税の特例を
確認してみましょう。

内容

令和5年10月1日以後、
要件を満たす100%子法人の配当金等については、
源泉徴収が不要となります。

配当等の源泉徴収の規定(所得税法)に、
「第177条の規定に該当するものを除く。」が追加され、
令和5年10月1日以後、源泉徴収の対象外となります。

完全子法人株式等に係る配当等の課税の特例(所得税法177条)

「完全子法人株式等に係る配当等の課税の特例」に該当する場合、
次の3つの規定は適用されません。

  1. 内国法人が受け取った配当等については、所得税を課する。
  2. 内国法人の所得税の課税標準は、配当等の額とする。
  3. 配当等に課する所得税は、配当等の20%(20.42%)とする。

この規定の中で、源泉徴収が不要となる法人や配当等が規定されています。
(特例の要件に該当する場合は、
所得税が課されなくなるため、源泉徴収も不要となります。)

所得税(源泉所得税)が課されない法人

原則として配当等を受け取る内国法人が対象となりますが、
次の一般社団法人等は除外されています。

  1. 一般社団法人等(公益社団法人等を除く。)
  2. 人格のない社団等
  3. 公益法人等とみなされているもので一定のもの

除外規定から公益社団法人等が除外されています。
公益社団法人等は、所得税が課されないからです。

所得税(源泉所得税)が課されない配当等

源泉徴収が不要となる配当等は、次の2つです。

  1. 完全子法人株式等の配当等
  2. 発行済株式総数の1/3超の株式等の配当等(1を除く。)
完全子法人株式等

受取配当等の益金不算入で規定する「完全子法人株式等」と同じですが、
「内国法人が自己の名義をもって所有するもの」に限定されています。
(名義株を除くという意味だと思います。)
原則として、計算期間中の継続保有が必要です。

発行済株式総数の1/3超の株式等の配当等

受取配当等の益金不算入で規定する「関連法人株式等」と似ていますが、
少し異なります。こちらも名義株は除外されています。

所有割合の要件については、関連法人株式等の1/3超と同じです。
源泉徴収が不要となる特例については、基準日等で判定します。
関連法人株式等の継続保有要件がありません。

基準日等

関連法人株式等の基準日等は、次の4つです。

  1. 株式会社で基準日を定めている場合は、その基準日
  2. 株式会社以外で基準日に準ずるものを定めている場合は、その日
  3. 基準日・準ずるものを定めていない場合は、配当金の効力発生日
    (効力発生日を定めていない場合は、配当等がされる日)
  4. みなし配当事由については、その事由が生じた日
参考情報

国税庁、源泉所得税の改正のあらまし、令和5年4月
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/0023004-040.pdf

配当等に関する源泉徴収の規定
(配当金を支払う側の規定)

3 内国法人に対し国内において第百七十四条各号(内国法人に係る所得税の課税標準)に掲げる利子等、配当等、給付補塡金、利息、利益、差益、利益の分配又は賞金(これらのうち第百七十六条第一項若しくは第二項(信託財産に係る利子等の課税の特例)又は第百七十七条(完全子法人株式等に係る配当等の課税の特例)の規定に該当するものを除く。)の支払をする者は、その支払の際、当該利子等、配当等、給付補塡金、利息、利益、差益、利益の分配又は賞金について所得税を徴収し、その徴収の日の属する月の翌月十日までに、これを国に納付しなければならない。

所得税法212条、施行日令和5年10月1日

規定をまとめたもの


内国法人に対し国内において
第174条各号(注1)に掲げる利子等、配当等、給付補塡金、利息、利益、差益、利益の分配又は賞金(注2)の支払をする者は、その支払の際、当該利子等、配当等、給付補塡金、利息、利益、差益、利益の分配又は賞金について所得税を徴収し、その徴収の日の属する月の翌月十日までに、これを国に納付しなければならない。

注1、内国法人に係る所得税の課税標準

注2、これらのうち第百七十六条第一項若しくは第二項(信託財産に係る利子等の課税の特例)又は第177条(完全子法人株式等に係る配当等の課税の特例)の規定に該当するものを除く。


完全子法人株式等に係る配当等の課税の特例
(配当金を受け取る側の規定)

第百七十七条 第七条第一項第四号(課税所得の範囲)、第百七十四条(内国法人に係る所得税の課税標準)及び第百七十五条(内国法人に係る所得税の税率)の規定は、内国法人(一般社団法人及び一般財団法人(公益社団法人及び公益財団法人を除く。)、人格のない社団等並びに法人税法以外の法律によつて法人税法第二条第六号(定義)に規定する公益法人等とみなされているもので政令で定めるもの(次項において「一般社団法人等」という。)を除く。以下この条において同じ。)が支払を受ける当該内国法人の同法第二十三条第五項(受取配当等の益金不算入)に規定する完全子法人株式等に該当する株式等(同条第一項に規定する株式等をいい、当該内国法人が自己の名義をもつて有するものに限る。次項において同じ。)に係る第二十四条第一項(配当所得)に規定する配当等については、適用しない。

所得税法第177条第1項、施行日令和5年10月1日

規定をまとめたもの


第七条第一項第四号(課税所得の範囲)、
第百七十四条(内国法人に係る所得税の課税標準)及び
第百七十五条(内国法人に係る所得税の税率)の規定は、

内国法人(注1)が支払を受けるその内国法人の
同法第23条第5項(受取配当等の益金不算入)に規定する完全子法人株式等に
該当する株式等(注2)に係る
第24条第1項(配当所得)に規定する配当等については、適用しない。

注1、一般社団法人及び一般財団法人(注1-1)、
人格のない社団等並びに
法人税法以外の法律によつて
法人税法第2条第6号(定義)に規定する
公益法人等とみなされているもので政令で定めるもの(注1-2)を除く。
以下この条において同じ。

注1-1、公益社団法人及び公益財団法人を除く。

注1-2、次項において「一般社団法人等」という。

注2、同条第一項に規定する株式等をいい、
当該内国法人が自己の名義をもつて有するものに限る。次項において同じ。


1/3超の場合
(配当金を受け取る側の規定)

2 第七条第一項第四号、第百七十四条及び第百七十五条の規定は、内国法人(当該内国法人が他の内国法人(一般社団法人等を除く。)の発行済株式又は出資(当該他の内国法人が有する自己の株式等を除く。)の総数又は総額の三分の一を超える数又は金額の株式等を有する場合として政令で定める場合における当該内国法人に限る。)が支払を受ける当該他の内国法人の株式等(前項に規定する完全子法人株式等に該当する株式等を除く。)に係る第二十四条第一項に規定する配当等については、適用しない。

所得税法第177条第2項、施行日令和5年10月1日

規定をまとめたもの


第七条第一項第四号(課税所得の範囲)、
第百七十四条(内国法人に係る所得税の課税標準)及び
第百七十五条(内国法人に係る所得税の税率)の規定は、

内国法人(注1)が支払を受ける
当該他の内国法人の株式等(注2)に係る
第24条第1項に規定する配当等については、適用しない。

注1、当該内国法人が他の内国法人(注1-1)の発行済株式又は出資(注1-2)の総数又は総額の1/3を超える数又は金額の株式等を有する場合として政令で定める場合における当該内国法人に限る。

注1-1、一般社団法人等を除く。
注1-2、当該他の内国法人が有する自己の株式等を除く。
注2、前項に規定する完全子法人株式等に該当する株式等を除く。


完全子法人株式等

5 第一項に規定する完全子法人株式等とは、配当等の額の計算期間を通じて内国法人との間に完全支配関係がある他の内国法人(公益法人等及び人格のない社団等を除く。)の株式等として政令で定めるものをいう。

法人税法第23条

1/3超の株式等

2 法第百七十七条第二項に規定する政令で定める場合は、同条第一項に規定する内国法人が、同条第二項に規定する他の内国法人(以下この項において「他の内国法人」という。)の発行済株式又は出資(当該他の内国法人が有する自己の株式又は出資を除く。)の総数又は総額の三分の一を超える数又は金額の同条第一項に規定する株式等を、当該内国法人が当該他の内国法人から受ける同条第二項に規定する配当等の額に係る基準日等(法人税法施行令第二十二条第一項(関連法人株式等の範囲)に規定する基準日等をいう。)において有している場合とする。

所得税法施行令第301条第2項、施行日令和5年10月1日

基準日等

2 前項において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 省略
二 基準日等 次に掲げるものの区分に応じそれぞれ次に定める日をいう。
イ 株式会社がする剰余金の配当で当該剰余金の配当を受ける者を定めるための会社法第百二十四条第一項(基準日)に規定する基準日(以下この号において「基準日」という。)定めがあるもの 当該基準日
ロ 株式会社以外の法人がする剰余金の配当等で当該剰余金の配当等を受ける者を定めるための基準日に準ずる日の定めがあるもの 同日
ハ 剰余金の配当等で当該剰余金の配当等を受ける者を定めるための基準日又は基準日に準ずる日の定めがないもの 当該剰余金の配当等がその効力を生ずる日(その効力を生ずる日の定めがない場合には、当該剰余金の配当等がされる日)
ニ 前号ロに掲げるもの 法第二十四条第一項各号に掲げる事由が生じた日

法人税法施行令第22条
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