今回は、完全支配関係がある法人の間の取引を確認してみましょう。
内容
法人が固定資産等を譲渡した場合、
売却対価は益金、譲渡原価は損金として処理します。
完全支配関係がある法人の間の取引については、
複数の法人を1つの法人とみて、
資産の譲渡損益を繰り延べる特例が設けられています。
規定の確認
規定を整理したものを確認してみましょう。
内国法人(注1)が
その有する譲渡損益調整資産(注2)を
他の内国法人(注3)に譲渡した場合には、
その譲渡損益調整資産に係る
譲渡利益額(注4)又は譲渡損失額(注5)
に相当する金額は、
その譲渡した事業年度(注6)の所得の金額の計算上、
損金の額又は益金の額に算入する。
カッコ書き
注1、普通法人又は協同組合等に限る。
注2、固定資産、土地(注2-1)、有価証券、金銭債権及び繰延資産で
政令で定めるもの以外のものをいう。以下この条において同じ。
注2-1、土地の上に存する権利を含み、固定資産に該当するものを除く。
注3、当該内国法人との間に
完全支配関係がある普通法人又は協同組合等に限る。
注4、その譲渡に係る収益の額が
原価の額を超える場合におけるその超える部分の金額をいう。
以下この条において同じ。
注5、その譲渡に係る原価の額が
収益の額を超える場合におけるその超える部分の金額をいう。
以下この条において同じ。
注6、その譲渡が適格合併に該当しない合併による
合併法人への移転である場合には、次条第二項に規定する最後事業年度
ポイントは3つです。
1、内国法人(普通法人、協同組合等)である。
2、譲渡損益調整資産に該当する資産である。
3、他の内国法人(完全支配関係がある普通法人、協同組合等)に譲渡した。
上記の要件を満たす場合、
・譲渡利益額は、損金算入
・譲渡損失額は、益金算入
となります。
次の事例で考えてみましょう。
A社は、B社の株式を全て所有している。
B社はA社に次の土地を時価で譲渡した。
・簿価 2,000万円
・時価 5,000万円
B社の会計上の仕訳
借方 | 貸方 |
---|---|
現預金 5,000万円 | 土地 2,000万円 |
- | 固定資産売却益 3,000万円 |
B社の税務上の仕訳
借方 | 貸方 |
---|---|
現預金 5,000万円 | 譲渡収入 5,000万円 |
譲渡原価 2,000万円 | 土地 2,000万円 |
譲渡利益額 3,000万円 | 譲渡損益調整資産 3,000万円 |
譲渡収入5,000万円は、益金算入
譲渡原価2,000万円は、損金算入
通算すると譲渡利益額は、3,000万円となります。
譲渡利益額3,000万円の課税を繰り延べるために、
同額の3,000万円を損金算入とします。
別表調整
別表4
譲渡損益調整資産の譲渡利益額 3,000万円(減算、留保)
別表5(1)
譲渡損益調整資産 3欄と4欄、△3,000万円
(調整名は任意)
譲渡損益調整資産
譲渡損益調整資産は、次の資産をいいます。
・固定資産
・土地、土地の上に存する権利
・有価証券
・金銭債権
・繰延資産
ただし、次の資産は、除外されます。
1、売買目的有価証券
2、取得側で売買目的有価証券となるもの
3、譲渡直前の簿価が1,000万円未満の資産(通算法人株式を除く)
消費税の取扱い
完全支配関係がある法人の間の取引であっても、
消費税には譲渡損益の繰延べ規定はなく、
譲渡対価を繰り延べる必要はありません。
参考規定
譲渡損益調整資産の譲渡利益額と譲渡損失額の取扱い
第六十一条の十一 内国法人(普通法人又は協同組合等に限る。)がその有する譲渡損益調整資産(固定資産、土地(土地の上に存する権利を含み、固定資産に該当するものを除く。)、有価証券、金銭債権及び繰延資産で政令で定めるもの以外のものをいう。以下この条において同じ。)を他の内国法人(当該内国法人との間に完全支配関係がある普通法人又は協同組合等に限る。)に譲渡した場合には、当該譲渡損益調整資産に係る譲渡利益額(その譲渡に係る収益の額が原価の額を超える場合におけるその超える部分の金額をいう。以下この条において同じ。)又は譲渡損失額(その譲渡に係る原価の額が収益の額を超える場合におけるその超える部分の金額をいう。以下この条において同じ。)に相当する金額は、その譲渡した事業年度(その譲渡が適格合併に該当しない合併による合併法人への移転である場合には、次条第二項に規定する最後事業年度)の所得の金額の計算上、損金の額又は益金の額に算入する。
法人税法第61条の11第1項、施行日令和5年6月7日
譲渡損益調整資産
第百二十二条の十二 法第六十一条の十一第一項(完全支配関係がある法人の間の取引の損益)に規定する政令で定めるものは、次に掲げる資産とする。
法人税法施行令第122条の12第1項、施行日令和5年10月1日
一 法第六十一条の三第一項第一号(売買目的有価証券の評価益又は評価損の益金又は損金算入等)に規定する売買目的有価証券(次号及び第四項第六号において「売買目的有価証券」という。)
二 その譲渡を受けた他の内国法人(法第六十一条の十一第一項の内国法人との間に完全支配関係があるものに限る。以下この条において同じ。)において売買目的有価証券とされる有価証券(前号又は次号に掲げるものを除く。)
三 その譲渡の直前の帳簿価額(その譲渡した資産を財務省令で定める単位に区分した後のそれぞれの資産の帳簿価額とする。)が千万円に満たない資産(第一号に掲げるもの及び法第六十一条の十一第一項の内国法人が通算法人である場合における同条第八項に規定する他の通算法人の株式又は出資(当該他の通算法人以外の通算法人に譲渡されたものに限る。第十七項及び第十九項において「通算法人株式」という。)を除く。)