定額減税がある場合の繰戻し還付


今回は、定額減税がある場合の繰戻し還付を確認してみましょう。

定額減税がある場合の繰戻し還付

繰戻し還付は、所得税が発生した年(黒字の年)の翌年が
赤字の場合に所得税の還付請求ができる特例です。

繰戻し還付を請求する場合に、
定額減税を考慮するのでしょうか。
それとも定額減税を考慮しないのでしょうか。

答えは、
・還付請求の計算は、定額減税を考慮しない。
・還付請求の上限計算は、定額減税を考慮する。
となります。

還付請求の計算

令和7年の繰戻し還付の規定を確認してみましょう。

純損失の繰戻しによる還付の請求

第百四十条 青色申告書を提出する居住者は、その年において生じた純損失の金額がある場合には、当該申告書の提出と同時に、納税地の所轄税務署長に対し、第一号に掲げる金額から第二号に掲げる金額を控除した金額に相当する所得税の還付を請求することができる。
一 その年の前年分の課税総所得金額、課税退職所得金額及び課税山林所得金額につき第三章第一節(税率)の規定を適用して計算した所得税の額
二 その年の前年分の課税総所得金額、課税退職所得金額及び課税山林所得金額から当該純損失の金額の全部又は一部を控除した金額につき第三章第一節の規定に準じて計算した所得税の額

所得税法第140条第1項、施行日令和7年1月1日

1号は赤字を考慮しないで所得税を計算する規定で、
2号は赤字を考慮して所得税を計算する規定です。

1号から2号をマイナスして還付請求額を計算します。
赤字に相当する所得税を還付請求できる特例です。

定額減税がある令和6年の規定と同じ規定です。
そのため、1号の金額も2号の金額も定額減税は考慮されません。

還付請求の上限計算

令和7年の還付請求の上限計算の規定を確認してみましょう。

2 前項の場合において、同項に規定する控除した金額に相当する所得税の額がその年の前年分の課税総所得金額、課税退職所得金額及び課税山林所得金額に係る所得税の額(附帯税の額を除く。)をこえるときは、同項の還付の請求をすることができる金額は、当該所得税の額に相当する金額を限度とする。

所得税法第140条第2項、施行日令和7年1月1日

A、同項に規定する控除した金額に相当する所得税の額
B、その年の前年分の課税総所得金額、課税退職所得金額及び課税山林所得金額に係る所得税の額(附帯税の額を除く。)

A>Bのときは、還付請求できる上限は、Bとなります。
実際に発生した所得税が還付請求の上限という意味です。

例えば、次の場合で計算してみましょう。
・令和6年分の課税所得金額(黒字) 700,000円
・所得税率 5%
・令和6年分の定額減税 30,000円
・令和7年分の純損失の金額(赤字) 300,000円

1号の計算
課税所得金額700,000円×所得税率5%=所得税35,000円
(定額減税を考慮しない所得税)

2号の計算
課税所得金額700,000円-純損失の金額300,000円=課税所得金額400,000円
課税所得金額400,000円×所得税率5%=20,000円
(赤字を考慮して、定額減税を考慮しない所得税)

還付請求額
1号-2号=15,000円
(赤字300,000円×5%=15,000円)

実際の所得税を計算してみましょう。

令和6年分の所得税の計算
課税所得金額700,000円×所得税率5%=所得税35,000円
定額減税 30,000円
所得税35,000円-定額減税30,000円=定額減税考慮後の所得税5,000円

還付請求額(Aの金額) 15,000円
還付請求の上限額(Bの金額) 5,000円
A>Bとなり、還付請求できる金額は、
少ない金額の5,000円となります。

赤字を繰り戻す金額は選択できますので、
戻しすぎないようにしましょう。

参考情報

国税庁、令和6年分所得税の定額減税Q&A(予定納税・確定申告関係)
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shotoku/0024004-072_01.pdf
2-6 純損失の繰戻しがある場合

新しいこと
・とあるラーメン屋

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