今回は、所得税の家事関連費などの取扱いを確認します。
内容
所得税の所得は10種類に分類する必要があり、その中でも、
不動産所得、事業所得、山林所得、雑所得の4つについては、
必要経費の集計が必要となります。
個人事業者は、法人と異なり、生活費などの家事上の経費と
業務上の経費の2種類の支出があり、確定申告をする際、
これらを区分する必要があります。
業務上の経費については、全額必要経費(例外あり)となります。
家事上の経費については、全額経費になりません。
一部は業務上、一部は家事上となる経費を「家事関連費」といいます。
例えば、1階は業務用、2階は居住用として使用する場合の経費です。
建物の減価償却費は床面積などで按分計算します。
家賃が100,000円、1階の割合が60%、2階の割合が40%であれば、
業務上の経費100,000円×60%=60,000円が必要経費となり、
家事関連費100,000円×40%=40,000円は必要経費となりません。
以上、家事関連費の取扱いについて確認しました。
以下、規定上の取扱いを整理します。
規定の仕組み
所得税法45条で、
・家事上の経費
・家事に関連する経費で政令で定めるもの
上記2つについては、必要経費に算入しないと定めています。
政令(所得税法施行令)で定めるものは、意外と?
ごちゃごちゃ規定されています。
家事関連費は、次(1号と2号)の経費「以外の経費」とする。
と規定されているため、
次(1号と2号)の経費は必要経費となりますが、
以外の経費は必要経費となりません。
次の経費とは、1号が「主たる部分」が業務の遂行上必要で明確に区分できるもの、2号が「青色申告者」で「業務の遂行上直接必要であったことが明らかにされる部分」と規定されています。
1号の主たる部分、2号の業務の遂行上直接必要であったことが明らかにされる部分については、それぞれ「総合勘案」となります。
1号の主たる部分については、原則として50%超ですが、必要部分が明確であれば50%以下であっても必要経費の計算することができます。
整理すると次のとおりです。
家事関連費については、すべて総合勘案で判定します。
内容 | 白色申告 | 青色申告 |
---|---|---|
主たる部分 (50%超) | 所令96、1号 業務遂行上必要 明確に区分できる | 所令96、2号 業務遂行上直接必要 |
主たる部分以外 (50%以下) | 通達45-2 業務遂行上必要 明確に区分できる | 所令96、2号 業務遂行上直接必要 |
家事関連費については、青色申告であっても白色申告であっても、
実際の取引の記録等に基づいて、合理的に計算する必要があります。
参考規定など
(家事関連費等の必要経費不算入等)
所得税法
第四十五条 居住者が支出し又は納付する次に掲げるものの額は、その者の不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額又は雑所得の金額の計算上、必要経費に算入しない。
一 家事上の経費及びこれに関連する経費で政令で定めるもの
(家事関連費)
第九十六条 法第四十五条第一項第一号(必要経費とされない家事関連費)に規定する政令で定める経費は、次に掲げる経費以外の経費とする。一 家事上の経費に関連する経費の主たる部分が不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得を生ずべき業務の遂行上必要であり、かつ、その必要である部分を明らかに区分することができる場合における当該部分に相当する経費
二 前号に掲げるもののほか、青色申告書を提出することにつき税務署長の承認を受けている居住者に係る家事上の経費に関連する経費のうち、取引の記録等に基づいて、不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき業務の遂行上直接必要であつたことが明らかにされる部分の金額に相当する経費
所得税法施行令
(主たる部分等の判定等)
45-1 令第96条第1号《家事関連費》に規定する「主たる部分」又は同条第2号に規定する「業務の遂行上直接必要であったことが明らかにされる部分」は、業務の内容、経費の内容、家族及び使用人の構成、店舗併用の家屋その他の資産の利用状況等を総合勘案して判定する。(業務の遂行上必要な部分)
所得税基本通達
45-2 令第96条第1号に規定する「主たる部分が不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得を生ずべき業務の遂行上必要」であるかどうかは、その支出する金額のうち当該業務の遂行上必要な部分が50%を超えるかどうかにより判定するものとする。ただし、当該必要な部分の金額が50%以下であっても、その必要である部分を明らかに区分することができる場合には、当該必要である部分に相当する金額を必要経費に算入して差し支えない。