寄附修正事由が生じた場合


今回は、法人税の寄附修正事由について確認します。

寄附修正事由

100%グループ法人間で寄附を行うと、単なる資金移動として
「寄附金の損金不算入」と「受贈益の益金不算入」の処理をします。

この際、寄附した法人と寄附を受けた法人の価値が変わります。
この価値の変動を株式に反映させる作業が「寄附修正」です。

国税庁の資料に3パターンの説明がありますが、
今回は、簡単な例で確認します。

国税庁、平成22年度税制改正に係る法人税質疑応答事例(グループ法人税制関係)(情報)
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/hojin/100810/index.htm

(寄附修正)
問7 寄附修正事由が生じた場合の株主の処理(PDF/534KB)

具体例

1、A親会社は、100%子会社を2社(B社とC社)を設立した。
2、B子会社の資本金は10,000円、発行済株式は100株です。
3、C子会社の資本金は20,000円、発行済株式は100株です。

4、B子会社は、C子会社に10,000円を贈与した。
(寄附修正事由の発生)

A親会社の出資時の仕訳

借方貸方
B子会社株式 10,000円
(100株×100円)
現金 10,000円
C子会社株式 20,000円
(100株×200円)
現金 20,000円
A親会社の仕訳

B子会社の設立時の仕訳

借方貸方
現金 10,000円資本金 10,000円
(100株×100円)
B子会社の仕訳

C子会社の設立時の仕訳

借方貸方
現金 20,000円資本金 20,000円
(100株×200円)
C子会社の仕訳

B子会社の贈与時の仕訳(寄附修正事由の発生)

借方貸方
寄附金 10,000円
(全額損金不算入)
現金 10,000円
B子会社の仕訳

C子会社の受贈益の仕訳(寄附修正事由の発生)

借方貸方
現金 10,000円受贈益 10,000円
(全額益金不算入)
C子会社の仕訳

現時点のB/S

B子会社のB/S

資産負債・純資産
現金 0円利益剰余金 △10,000円
資本金 10,000円
B子会社のB/S

C子会社のB/S

資産負債・純資産
現金 30,000円利益剰余金 10,000円
資本金 20,000円
C子会社のB/S
利益積立金額の修正

寄附修正事由が発生した場合、次の2つの修正が必要です。

  • 子会社株式の修正
  • 利益積立金額の修正

寄附修正による株式の価値の変動を反映させるため、子会社株式を修正します。利益積立金額とは、法人の課税済み利益です。詳細の説明は省略します。

利益積立金額の計算は次の算式で計算します。

利益積立金額=
過去事業年度の1号~7号-過去事業年度の8号~14号
+当事業年度の1号~7号-当事業年度の8号~14号
(1号~14号まで細かい規定が並んでいます。)

寄附修正は7号の加算項目です。

7号の加算金額は、
受贈益×持分割合-寄附金×持分割合で計算します。

具体例を規定にあてはめると

当該法人(A親会社)が当該法人(A親会社)との間に
完全支配関係がある法人(子法人)の株式等。

 → B子会社株式10,000円とC子会社株式20,000円のことです。

利益積立金額の加算金額については0円となります。

受贈益10,000円×持分割合100%-
寄附金10,000円×持分割合100%=0

子会社株式の修正

利益積立金額の加算金額が0円のため、子会社株式の修正がないように見えますが、B子会社株式△10,000円、C子会社株式+10,000円の修正が必要です。

参考規定

 内国法人の有する第九条第七号(利益積立金額)に規定する子法人の株式(出資を含むものとし、移動平均法によりその一単位当たりの帳簿価額を算出するものに限る。以下この項において同じ。)について同号に規定する寄附修正事由が生じた場合には、その株式の当該寄附修正事由が生じた直後の移動平均法により算出した一単位当たりの帳簿価額は、当該寄附修正事由が生じた時の直前の帳簿価額同号に掲げる金額を加算した金額をその株式の数で除して計算した金額とする。

法人税法施行令119条の3

子法人株式に寄附修正事由が生じた場合は、
子法人株式の帳簿価額は、
寄附修正直前の帳簿価額に「7号の金額」をプラスします。

7号の加算金額は、
受贈益×持分割合(プラス項目)
-寄附金×持分割合(マイナス項目)で計算します。

B子会社株式の帳簿価額
 10,000円(100株×100円)-10,000円(7号、寄附金)=0円

C子会社株式の帳簿価額
 20,000円(100株×200円)+10,000円(7号、受贈益)=30,000円
 30,000円÷100株=@300円

A親会社の税務上の仕訳

借方貸方
利益積立金額 10,000円
(利積の減少、寄附をした法人)
B子会社株式 10,000円
C子会社株式 10,000円利益積立金額 10,000円
(利積の増加、寄附を受けた法人)
A親会社の税務上の仕訳

7号の加算金額と7号の減算金額が同額のため、利益積立金額の増減は0円ですが、増減の理由が異なるため、別表にはそれぞれ分けて記載します。

別表5(1)、利益積立金額

内容期首減少増加期末
B子会社株式
(寄附修正)
△10,000△10,000
C子会社株式
(寄附修正)
+10,000+10,000
合計00
利益積立金額
参考情報
B子会社の処理

P/Lと別表4

支払寄附金 10,000円
当期純利益 △10,000円
寄附金の損金不算入 10,000円(加算社外)
課税所得 0円

別表5(1)、利益積立金額

内容期首減少増加期末
繰越損益金△10,000△10,000
合計△10,000△10,000
利益積立金額
C子会社の処理

P/Lと別表4

受取寄附金 10,000円
当期純利益 10,000円
受贈益の益金不算入 △10,000円(減算※)
課税所得 0円

別表5(1)、利益積立金額

内容期首減少増加期末
繰越損益金+10,000+10,000
合計+10,000+10,000
利益積立金額
利益積立金額の規定(一部)

(利益積立金額)
第九条 法第二条第十八号(定義)に規定する政令で定める金額は、同号に規定する法人の当該事業年度前の各事業年度(以下この条において「過去事業年度」という。)の第一号から第七号までに掲げる金額の合計額から当該法人の過去事業年度の第八号から第十四号までに掲げる金額の合計額を減算した金額に、当該法人の当該事業年度開始の日以後の第一号から第七号までに掲げる金額を加算し、これから当該法人の同日以後の第八号から第十四号までに掲げる金額を減算した金額とする。

 イからヲまでに掲げる金額の合計額からワからネまでに掲げる金額の合計額を減算した金額当該金額のうちに当該法人が留保していない金額がある場合には当該留保していない金額を減算した金額とし、公益法人等又は人格のない社団等にあつては収益事業から生じたものに限る。)

 法第二十五条の二第一項(受贈益)の規定により所得の金額の計算上益金の額に算入されない金額

 当該法人が有する当該法人との間に完全支配関係(通算完全支配関係を除く。)がある法人(以下この号において「子法人」という。)の株式又は出資について寄附修正事由(子法人が他の内国法人から法第二十五条の二第二項に規定する受贈益の額で同条第一項の規定の適用があるものを受け、又は子法人が他の内国法人に対して法第三十七条第七項(寄附金の損金不算入)に規定する寄附金の額で同条第二項の規定の適用があるものを支出したことをいう。以下この号において同じ。)が生ずる場合の当該受贈益の額に当該寄附修正事由に係る持分割合(当該子法人の寄附修正事由が生じた時の直前の発行済株式又は出資(当該子法人が有する自己の株式又は出資を除く。)の総数又は総額のうちに当該法人が当該直前に有する当該子法人の株式又は出資の数又は金額の占める割合をいう。以下この号において同じ。)を乗じて計算した金額から寄附修正事由が生ずる場合の当該寄附金の額に当該寄附修正事由に係る持分割合を乗じて計算した金額を減算した金額

法人税法施行令9条
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