今回は、法人税の寄附金の損金不算入について確認します。
寄附金の損金不算入の考え方
法人税の計算では、会計上費用であっても
税金計算上費用(損金)にならないものがあります。寄附金はその1つです。
寄附金(対価性のない支出)について、
無制限に損金算入を認めると法人税が減少してしまうため、
損金算入に一定の制限(損金算入限度額)が設けられています。
例えば、寄附金支出前の利益1000万円から、寄附金1000万円を支払った場合、当期純利益が0円となり、法人税も0円となります。
そのため、寄附金の損金算入に制限を設けています。
仮に、支払った寄附金1000万円が全額損金不算入となる場合は、
寄附金支出前の利益が1000万円となり、
法人税300万円(税率30%と仮定)が発生します。
内容 | 会計上のP/L | 税金計算 |
---|---|---|
寄附金支出前の利益 | 1000万円 | 1000万円 |
寄附金 | △1000万円 | 0円 |
当期純利益 | 0円 | 1000万円 |
規定の全体像
寄附金の損金不算入に関する規定の全体像を確認します。
特殊な規定については省略します。
- 一般寄附金の損金不算入 ← 今回確認
- 法人による完全支配関係がある場合の寄附金
- 国等に対する寄附金
- 特定公益増進法人に対する寄附金
- みなし寄附金
- 特定公益信託
- 寄附金の定義
- 低額取引
- 確定申告等の手続き
- やむを得ない場合
- 告示
- その他政令
一般寄附金の損金不算入
法人にとって必要な寄附金もあるため、一律損金不算入ではなく、
損金算入に限度額が設けられています。
損金算入限度額までであれば、損金として計算できますが、
損金算入限度額を超えると、損金として計算できません。
例えば、法人が支払った寄附金30万円、損金算入限度額20万円の場合、
寄附金30万円のうち、損金算入限度額20万円までは
損金算入(経費処理)となり、
損金算入限度額を超えた10万円(=30万円-20万円)については、
損金不算入となります。
この限度額については、寄附金の性質に応じて異なります。
一般寄附金の損金算入限度額
一般寄附金の限度額は、次の算式で計算します。
イ、事業年度終了時の(資本金+資本準備金)÷12×事業年度月数×2.5/1000
ロ、その事業年度の所得の金額×2.5/100
ハ、(イ+ロ)÷4
(令和4年4月1日以後開始事業年度)
仮に資本金1000万円、所得の金額500万円(寄附金支出前所得金額)の場合
イ、1000万円×2.5/1000=25,000円
ロ、500万円×2.5/100=125,000円
ハ、(イ+ロ)÷4=37,500円が限度額となります。
支払った寄附金の金額が200,000円の場合、
200,000円(寄附金)-37,500円(損金算入限度額)
=162,500円が損金不算入となります。
損金算入限度額までの37,500円については、損金算入となります。
支払った寄附金の金額が2万円の場合、
2万円(寄附金)<37,500万円(限度額)のため、
2万円全額が損金算入となります。
限度額の計算は、改正されることがありますので注意しましょう。
参考規定など
参考
国税庁、法人税法、税大講本
https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/kohon/houjin/mokuji.htm
寄附金の損金不算入
第三十七条 内国法人が各事業年度において支出した寄附金の額(次項の規定の適用を受ける寄附金の額を除く。)の合計額のうち、その内国法人の当該事業年度終了の時の資本金の額及び資本準備金の額の合計額若しくは出資金の額又は当該事業年度の所得の金額を基礎として政令で定めるところにより計算した金額を超える部分の金額は、当該内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。
法人税法
一般寄附金の損金算入限度額
第七十三条 法第三十七条第一項(寄附金の損金不算入)に規定する政令で定めるところにより計算した金額は、次の各号に掲げる内国法人の区分に応じ当該各号に定める金額とする。
一 普通法人、協同組合等及び人格のない社団等(次号に掲げるものを除く。) 次に掲げる金額の合計額の四分の一に相当する金額
イ 当該事業年度終了の時における資本金の額及び資本準備金の額の合計額又は出資金の額を十二で除し、これに当該事業年度の月数を乗じて計算した金額の千分の二・五に相当する金額
ロ 当該事業年度の所得の金額の百分の二・五に相当する金額以下省略
法人税法施行令