今回は、小規模宅地等の特例と事業用資産の納税猶予などの関係を確認してみましょう。
小規模宅地等の特例が利用できない場合
小規模宅地等の特例は、細かい要件がたくさんあります。
1、小規模宅地等の特例の要件を満たせば、小規模宅地等の内容に応じて、土地の評価が20%(80%減額)か50%(50%減額)になります。
2、小規模宅地等の特例には、特例が受けられる面積に制限があります。
3、小規模宅地等の定義(種類)が規定されています。
・特定事業用宅地等(事業用の土地)
・特定居住用宅地等(住まいの土地)
・特定同族会社事業用宅地等(特定の法人の事業用の土地)
・貸付事業用宅地等(貸付事業用の土地)
4、原則として相続税の申告期限までに分割が必要です。
5、申告期限までに未分割であっても、小規模宅地等の特例が利用できる場合があります。
今回は、第6項の規定を確認してみましょう。
6 第一項の規定は、第七十条の六の八第一項の規定の適用を受けた同条第二項第二号に規定する特例事業受贈者に係る同条第一項に規定する贈与者から相続又は遺贈により取得(第七十条の六の九第一項(同条第二項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)の規定により相続又は遺贈により取得をしたものとみなされる場合における当該取得を含む。)をした特定事業用宅地等及び第七十条の六の十第一項の規定の適用を受ける同条第二項第二号に規定する特例事業相続人等に係る同条第一項に規定する被相続人から相続又は遺贈により取得をした特定事業用宅地等については、適用しない。
租税特別措置法第69条の4第6項、令和7年8月4日施行
第1項の規定は、小規模宅地等の特例を指します。
規定が「及び」で長くなっていますので、分けてみましょう。
A、第七十条の六の八第一項の規定の適用を受けた同条第二項第二号に規定する特例事業受贈者に係る同条第一項に規定する贈与者から相続又は遺贈により取得(第七十条の六の九第一項(同条第二項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)の規定により相続又は遺贈により取得をしたものとみなされる場合における当該取得を含む。)をした特定事業用宅地等
及び
B、第七十条の六の十第一項の規定の適用を受ける同条第二項第二号に規定する特例事業相続人等に係る同条第一項に規定する被相続人から相続又は遺贈により取得をした特定事業用宅地等
については、適用しない。
と規定されています。
小規模宅地等の特例は、
・Aの特定事業用宅地等
・Bの特定事業用宅地等
の2つについては、適用(利用)できない規定です。
贈与税の納税猶予を受けた場合
Aから確認してみましょう。
第70条の6の8の規定は、「個人の事業用資産についての贈与税の納税猶予及び免除」です。要件を満たす場合に、贈与税の支払いを遅らせること(納税猶予)が可能です。
個人事業の引き継ぎを円滑にするための規定です。
「同条第2項第2号に規定する特例事業受贈者」は、納税猶予の対象となる事業の資産を受け取った個人を指します。
「同条第1項に規定する贈与者」は、納税猶予の対象となる事業の資産を渡した個人を指します。
上記の個人(資産を渡した人)から
・相続や遺贈
により取得(注1)をした特定事業用宅地等(小規模宅地等の特例の土地)
については、小規模宅地等の特例が利用できないため注意しましょう。
相続税の納税猶予を受ける場合
Bを確認してみましょう。
第70条の6の10は、「個人の事業用資産についての相続税の納税猶予及び免除」です。要件を満たす場合に、相続税の支払いを遅らせること(納税猶予)が可能です。
こちらも個人事業の引き継ぎを円滑にするための規定です。
「同条第2項第2号に規定する特例事業相続人等」は、納税猶予の対象となる事業の資産を受け取った個人を指します。
「同条第1項に規定する被相続人」は、納税猶予の対象となる事業用資産を所有していた一定の要件をクリアする個人をいいます。
上記の個人(亡くなった方)から
・相続や遺贈
により取得をした特定事業用宅地等(小規模宅地等の特例の土地)
についても、小規模宅地等の特例が利用できないため注意しましょう。
参考情報
注1のカッコ書きを確認してみましょう。
贈与者から相続又は遺贈により取得(第七十条の六の九第一項(同条第二項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)の規定により相続又は遺贈により取得をしたものとみなされる場合における当該取得を含む。)
第70条の6の9は、「個人の事業用資産の贈与者が死亡した場合の相続税の課税の特例」といいます。
納税猶予した贈与税を相続税の計算に切り替える(スイッチ)する規定です。
生前の贈与により受け取った事業用の資産を相続や遺贈により受け取ったものとして相続税が計算されます。
相続や遺贈により受け取ったものとして取り扱われた事業用の資産についても、特定事業用宅地等(小規模宅地等の特例の土地)については、小規模宅地等の特例が適用できないため、注意しましょう。