小規模宅地等の特例と更正の請求の特則


今回は、小規模宅地等の特例と更正の請求の特則を確認してみましょう。

更正の請求の特則を準用する。

小規模宅地等の特例は、細かい要件がたくさんあります。

1、小規模宅地等の特例の要件を満たせば、小規模宅地等の内容に応じて、土地の評価が20%(80%減額)か50%(50%減額)になります。

2、小規模宅地等の特例には、特例が受けられる面積に制限があります。

3、小規模宅地等の定義(種類)が規定されています。
・特定事業用宅地等(4以外の事業用の土地)
・特定居住用宅地等(住まいの土地)
・特定同族会社事業用宅地等(特定の法人の事業用の土地)
・貸付事業用宅地等(貸付事業用の土地)

4、原則として相続税の申告期限までに分割が必要です。

今回は、第5項の規定を確認してみましょう。

5 相続税法第三十二条第一項の規定は、前項ただし書の場合その他既に分割された当該特例対象宅地等について第一項の規定の適用を受けていなかつた場合として政令で定める場合について準用する。この場合において、必要な技術的読替えは、政令で定める。

租税特別措置法第69条の4第5項、令和7年8月4日施行

相続税法第32条第1項は、更正の請求の特則です。

一度申告した税額が多すぎた場合に、正しい税額に直す手続きを更正(更正の請求)といいます。

・前項ただし書の場合
・既に分割された特例対象宅地等(土地など)について第1項の規定の適用を受けていなかつた場合として政令で定める場合

について準用する。

と規定されています。

前項は、第4項を指します。小規模宅地等の特例を利用するには、相続税の申告期限までに分割が必要となります。

ただし書きは、例外です。

3年以内に分割する見込みがある場合は書類を提出することにより、分割の期限を相続税の申告期限から3年以内に延長できます。

更正の請求の特則には、民法や相続税法に関する取扱いが規定されていますが、小規模宅地等の特例については規定されていません。法令が異なるからです。

そのため、小規模宅地等の特例についても、前項ただし書きの場合(3年以内に分割する場合など)について、準用できるように規定されています。

小規模宅地等の特例により相続税が減る場合は、相続税法に規定されている更正の請求の特則が準用できるため、更正の請求が可能です。

更正の請求の期限は、原則として法定申告期限から5年ですが、更正の請求の特則については、「更正の請求に関する事由を知った日の翌日から4月以内」に限定されるため注意しましょう。

政令で定める場合

前項ただし書の場合とは別に、「既に分割された特例対象宅地等(土地など)について第1項の規定の適用を受けていなかつた場合として政令で定める場合」を確認してみましょう。

租税特別措置法施行令に規定されています。

24 法第六十九条の四第五項に規定する政令で定める場合は、既に分割された特例対象宅地等について、同条第一項の相続又は遺贈に係る同条第四項に規定する申告期限までに特例対象山林の全部又は一部が分割されなかつたことにより同条第一項の選択がされず同項の規定の適用を受けなかつた場合において、当該申告期限から三年以内(当該期間が経過するまでに当該特例対象山林が分割されなかつたことにつき、やむを得ない事情がある場合において、納税地の所轄税務署長の承認を受けたときは、当該特例対象山林の分割ができることとなつた日の翌日から四月以内)に当該特例対象山林の全部又は一部が分割されたことにより当該選択ができることとなつたとき(当該相続若しくは遺贈又は贈与により財産を取得した個人が同項又は法第六十九条の五第一項の規定の適用を受けている場合を除く。)とする。

租税特別措置法施行令第40条の2第24項、令和7年8月1日施行

長いため、分けて確認してみましょう。

既に分割された特例対象宅地等について、同条第一項の相続又は遺贈に係る同条第四項に規定する申告期限までに特例対象山林の全部又は一部が分割されなかつたことにより同条第一項の選択がされず同項の規定の適用を受けなかつた場合において、

同条は、租税特別措置法第69条の4を指します。小規模宅地等の特例のことです。第4項に規定する申告期限は、相続税の申告期限です。

「特例対象山林」は、小規模宅地等の特例とは別の特例(特定計画山林についての相続税の課税価格の計算の特例)で規定されている立木や土地などです。

まとめますと

既に分割された特例対象宅地等(小規模宅地等の特例の土地)について、相続税の申告期限までに別の特例の対象となる特例対象山林(立木や土地など)が分割されなかったことにより、小規模宅地等の特例が選択されず、小規模宅地等の特例の適用を受けなかった場合において、

となります。

続きを見てみましょう。

当該申告期限から3年以内(注1)に当該特例対象山林の全部又は一部が分割されたことにより当該選択ができることとなつたとき(注2)とする。

相続税の申告期限から3年以内に特例対象山林(立木や土地など)が分割されたことにより小規模宅地等の特例の土地が選択できるときに、「更正の請求の特則」の要件を満たします。

・小規模宅地等の特例
・特定計画山林の特例
の2つは、選択制です。

一方の規定を受けると他方の規定が選択できなくなります。

タイミングを分けて、利用できる状況を箇条書きします。

亡くなった日から申告期限まで
1、特例対象宅地等の分割は、済んでいる。
2、特例対象山林の分割は、済んでいない。
3、特例対象山林の特例について、3年以内の分割見込書を提出する。
4、2つの規定は選択制のため、小規模宅地等の特例が選択できない。

申告期限から3年以内
1、特例対象山林の分割が済んだ。
2、特定計画山林の特例を選択しない。
3、小規模宅地等の特例が選択できる。
4、相続税が減るため、更正の請求ができる。

参考情報

1つ目のカッコ書きを確認してみましょう。

当該申告期限から三年以内(当該期間が経過するまでに当該特例対象山林が分割されなかつたことにつき、やむを得ない事情がある場合において、納税地の所轄税務署長の承認を受けたときは、当該特例対象山林の分割ができることとなつた日の翌日から四月以内)

小規模宅地等の特例の土地が、
・相続税の申告期限から3年以内
に分割されなかった場合の取扱いと同じです。

3年を超える場合は、一定の事情があるため、
・税務署長に承認の申請
が必要となります。

承認を受けた場合は、一定の事情が解消した日の翌日から4月以内まで、延長されます。
(この規定の対象は、特例対象山林の土地です。)

2つ目のカッコ書きを確認してみましょう。

当該選択ができることとなつたとき(当該相続若しくは遺贈又は贈与により財産を取得した個人が同項又は法第六十九条の五第一項の規定の適用を受けている場合を除く。)

相続や遺贈により財産を取得した個人が
・同項
・法第69条の5第1項
の規定の適用を受けている場合が除外されます。

法第69条の5第1項は、特定計画山林の特例を指します。同項は、小規模宅地等の特例のことです。

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