今回は、居住用賃貸建物の課税賃貸割合と課税譲渡等割合を両方適用する場合を確認します。
両方適用する場合
1つの居住用賃貸建物について
部分譲渡した場合は、次の調整を両方適用します。
1、課税賃貸割合による調整(消費税法35条の2第1項)
2、課税譲渡等割合による調整(消費税法35条の2第2項)
例えば、居住用賃貸建物を取得し、
1階部分と2階部分を事務所として有償で貸し付けた後、
2階部分を譲渡した場合です。
この場合、譲渡しなかった1階部分については、
第三年度の課税期間の末日(4/1の直前)まで保有しているため、
1、課税賃貸割合による調整対象となります。
譲渡した2階部分については、
第三年度の課税期間の末日(4/1の直前)まで保有していないため、
2、課税譲渡等割合による調整対象となります。
第三年度の課税期間の末日に居住用賃貸建物を譲渡した場合、
調整期間と課税譲渡等調整期間は一致しますが、
課税賃貸割合(1階部分)と課税譲渡等割合(2階部分)が異なるため
1階部分と2階部分を分けて調整計算する必要があります。
収入内容に応じて分けると調整割合が異なるため注意しましょう。
例、課税賃貸割合(1階の賃貸収入+2階の賃貸収入)、
課税譲渡等割合(2階の譲渡収入)と分ける場合
両方適用する場合の計算例
前提
居住用賃貸建物の取得価額(税込み)、1億1000万円
居住用賃貸建物の控除できなかった消費税、1000万円
譲渡しなかった1階部分の課税賃貸割合、20%
譲渡した2階部分の課税譲渡等割合、70%
(消費税10%として計算しています。)
控除できなかった消費税の内訳がわからない場合は、
合理的な按分が必要です。
(譲渡時の価額の割合より、取得時の価額の割合の方が良いと思います。)
取得時の価額が1階部分を4000万円、2階部分を6000万円とした場合
居住用賃貸建物の消費税1000万円を取得時の価額の割合で按分します。
1階部分の消費税、1000万円×40%=400万円
2階部分の消費税、1000万円×60%=600万円
1、課税賃貸割合による調整(消費税法35条の2第1項)
1階部分の消費税400万円×課税賃貸割合20%=調整額80万円
2、課税譲渡等割合による調整(消費税法35条の2第2項)
2階部分の消費税600万円×課税譲渡等割合70%=調整額420万円
3、調整額の合計
80万円+420万円=500万円
付表に記入する金額
「付表2-3、課税売上割合・控除対象仕入税額等の計算表」の
23、居住用賃貸建物を課税賃貸用に供した(譲渡した)場合の加算額には、
7.8%部分(国税)を記入します。
参考規定
消費税法35条の2
居住用賃貸建物を課税賃貸用に供した場合等の仕入れに係る消費税額の調整